飛翔する獅子⑩
一人の敵兵が斬りかかって来た。セイウンは素早く反転すると、敵の胸にジャグリスの矛先を突き立てた。一瞬にして、敵兵は絶命した。
今度は二人でかかって来た。
「私が相手するわ」
急にエレンが割って入った。彼女は二つの剣を交差させながら戦った。敵は二本の剣というものに慣れていないのか、苦戦しているようだった。隙を見逃すほど、エレンは甘くなかった。剣を一振りすると、一人を切り捨てた。もう一人の敵はひるんだ。エレンを女だと思って甘く見ていたに違いない。
結局、もう一人もエレンに斬り捨てられた。
「セイウン、大丈夫?」
「俺は大丈夫だ。お前こそけがはしなかったか?」
「大丈夫よ。戦況はあんまりよくないわね」
「そうだな……」
どんどん城壁を登られている。こっちの守兵の損害もだいぶ激しくなっている。指揮官ではバルザックが負傷したという連絡が入った。バルザックの部隊は現在、ガストーが率いているが彼がやられたら終わりである。
長考はできないが、今は防戦あるのみだ。
「行くぞ、エレン。とにかく今は耐えるだけだ。勝機はどこかでめぐってくるはずだ」
「うん」
エレンはセイウンの後を追いかけた。突如、敵兵が数人、エレンの前に出て来て道をふさいだ。戦では一人に何人でかかろうとも卑怯とは言わない。エレンは理解しているが、やはり癇に障った。
「女に数人がかりなんて、いい度胸じゃない!相手になるわ!」
強がってみたが、今度はさっきのようにはいかなかった。敵は案外強かった。
剣が一本弾かれた。
斬られる。
エレンは目をつぶった。
突然のことだった。エレンを押していたレストリウス兵が倒れていた。背中を斬られているところから、後ろから襲われたようである。




