飛翔する獅子⑤
「だけどみんなのおかげで、獅子は再び蘇った。ただし今度の獅子は、ただ地を暴れるだけでは駄目だ。新しいものを求めて、飛翔しなければならない。そのために、俺は獅子に翼をつけた」
もともとやりたくなかった反乱だったが、今では自分がそれを扇動している。人生とは分からないものだった。
「俺は父さん……クリスト=フォスターほどの器じゃないが、付いて来てくれ。付いて来る際は、この獅子に誓え」
横から出て来たセングンが、セイウンに愛槍のジャグリスを渡した。
白銀の槍を手にしたセイウンは、それを天高く掲げてみせた。
無言の時が流れた。兵士達もすでに、セイウンと同じように各々の武器を高く掲げていた。
「これもパフォーマンスか?」
剣を掲げながら、サイスがバルザックに尋ねた。
「いいえ。あれは彼の素です」
にやりと笑いながら、バルザックは答えた。
***
一時間ほどで城外は敵に埋め尽くされた。前方に歩兵を配置させ、その後方に騎馬隊が配置。さらに後方には、敵の本陣。雨は一滴も降っておらず、からりと晴れていた。戦には絶好の機会だった。
「バルザックとガストー、サイスは城壁を守備させているが、そのうち耐えきれなくなる。なんといっても、兵力が違う」
「セングン、その時は俺達も加勢するんだな?」
「もちろんだ。この一戦でお前の名を轟かせるのが、この戦の最重要課題だ」
「よし。蹴散らすぞ、エレン」
「あんたは私が守るわ」
セイウン達は城塔から城外の様子をうかがった。少しずつだが、進み始めている。どうやら、もう始まっているみたいだ。
「城壁の守備隊に弓を構えさせろ。敵が近付いているのを知らせろ」
セイウンは近くにいた兵士に命じた。敵はオルバス騎士団団長ユースチス。かつて父の軍と戦ったことがある騎士だった。どんな男なのだろうか。会ってみたいという感覚がセイウンを襲った。




