飛翔する獅子②
「あんたはなぐさめても、緊張が解けるほど簡単じゃないからね。だから、こうして挑発して解いてあげたのよ」
「お前ってすごいな」
「十年以上付き合いがあるから当たり前でしょう。それに私はあんたの暗い顔より、明るい笑顔の方が好きよ」
エレンは最後の「好き」という箇所で顔を赤らめていた。
セイウンは、どきりと胸を打たれてしまった。彼女の言う通りである。暗いのは自分らしくない。明るいのが一番だ。急に勇気がわいてきた。負けるわけにはいかなかった。この一戦に必ず勝ってみせよう。
「行くぞ、エレン。みんなが待っている」
「はいはい。それじゃあ行きましょうか」
エレンはセイウンの後に続いた。
***
兵の配置はすでに完了していた。城壁を守るのはバルザックとガストー、サイスの三人だった。デュマとレジストは城門の守備にまわり、セイウンとエレン、セングンは城塔からの指揮だった。非戦闘員である女子供は、ガリウスが地下道まで連れて行った。
そこからならば、万一のことがあった場合、容易に逃げれるようにしてあった。十七年前の反乱の時も、生き残った者の大半は、その地下道から逃げたのである。
「旗を」
セイウンが命じると、セングンは旗を城塔に掲げた。この旗が今日から自分達反乱軍のシンボルだった。




