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ロウマの帰還⑧

 ゴルドーはどうしようか迷っているようだったが、グレイスににらまれたので、ようやくひざまずいた。


 ロウマはゴルドーとグレイスの関係の変化に気付いた。以前は水と油だった二人だが、自分がいない間に、すっかり打ち解けていた。まるで実の兄弟いや、親子のようだった。


 背後から足音が聞こえて来た。誰の足音かロウマには分かっていた。


「キール」


 ロウマは、ぽつりと呟いた。


「ロウマ」


 キールもロウマに呼応するかのように口を開いた。けれども、仮面を付けているため、口を開けているかどうかは、確認できるはずがなかった。


 ロウマは、キールと対峙した。しばらく無言の状態が流れた。


 やがてその無言を破り、先に手を差し伸べたのはキールだった。


「すまなかった。こんな一言で済まされることでないのは分かっている。私は君に酷なことばかりしてきた。許してくれ」


「許す事なんて何もない。私は悪い夢を見ていただけだ。それも全て目が覚めて消えた。あるべき姿に戻ったんだ」


「『あるべき姿』か……お前らしい」


 二人は互いに握手をした。気が付くと拍手が聞こえた。グレイスとシャニスがしていたのである。続いてゴルドー、さらに周囲の兵士達も拍手喝采をした。


 なんだか照れくさくなったロウマとキールだった。


「そこまでだ。再会に水を差させてもらうよ。キヒヒヒヒヒ」


 聞き覚えのある気色の悪い笑い声だった。中央にいるころから、好きではなかった下品な声である。


「ブランカ=カストリオだな。やはり戻って来てたのか?」


「久し振りだな、ロウマ=アルバート。私を地方に追いやってくれたことは、昨日のように覚えているよ」


「こっちもだ。お前が中央にいたころ、何かと私に口出ししてきたことを、記憶している」


「そうかい。これでも自重していたつもりだけどね。だけど、お前が地方に左遷してくれたおかげで、色々な勉強ができた。そこは感謝しているよ。キヒヒヒヒヒ」


 いつ聞いても不快感を覚える嫌な笑いだった。今すぐこの場で、その口ごと叩き斬りたくなってしまうほどだ。

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