ロウマの帰還⑥
「どうしました、師匠?なんで泣いているのですか?」
「夕日がまぶしいんだ」
「まだお昼ですよ」
「汗が目に入ったんだ」
「汗なんてちっともかいてないわよ、ロウマ」
「心の汗だ」
「涙ですね、ロウマ様!」
「…………」
顔の筋肉が、ひきつってきた。どうやったら、張り手以外でこの三人を打ちのめすことができるのだろうか。誰でもいいから教えてほしかった。鼻をすすったロウマはシャリ―の作った味噌汁に手を伸ばした。
***
どうにかレストリウス王国に入った。途中でオルバス騎士団の領内でみんなを休ませようとロバートが提案したが、ロウマは断って先を急がせた。
兵を休ませるとなると団長のユースチスと顔を会わせることになる。残念だが、彼とは会いたくなかった。自分のわがままであるが、もうちょっとだけみんなには頑張ってもらった。首都のダラストに向かうよりも、かつて自分が使っていた軍の野営地が近かったので、そこを目指した。
「ロウマ、お前の仲間はどんな連中だ?」
ロバートが尋ねた。
「会ってみれば分かる。それでは駄目かな?」
「いや、十分だ。お前の仲間だから、変わり者であるのは事実かな」
「好きに想像してくれ」
ロウマは苦笑した。一緒に騎乗しているナナーも、笑いをこらえていた。
しばらく行くと野営地が見えてきた。見た目は変わってないようだった。
「お前達はここにいてくれ」
「一人で行くのか?」
「そうだ。ここから先は私一人で十分だ。ナナーとアリスを頼むぞ」
ロバートは、こくりと頷いた。
ロウマはナナーとアリス、シャリーの三人に顔を向けた。
「私の身に何が起こっても騒いでは駄目だ。約束はできるか?」
三人とも素直に頷いた。




