ロウマの帰還④
「先に出したのは私なのだから、ロウマは私のから食べるのよ」
ナナーが怒りを露呈した表情で、シャリーにくってかかった。
「うるさいわね。私の方が年上なのだから、年功序列として譲りなさいよ!」
シャリーも負けてなかった。このままではいつものように、争いが起きそうなので、ロウマは手で制した。
「食事の時までけんかはやめろ。飯がまずくなる。いい加減にしないと食べないぞ」
二人ともそれを聞くと、さすがに黙ることにした。しかし、お互いにらみ合ったままだった。
まずはナナーからだった。ロウマはさっきの続きということで、箸に手を伸ばすと、まず米から食してみた。
硬い。少し芯があるような感じがする。気のせいかと思い、もう一回食べてみたが、やはり芯があった。みそ汁と煮物は味が薄かった。なんだか世俗のものを食っている感じがしなかった。
次にシャリーだった。こっちは反対に味が濃くて、あまり食べたくなかった。米もやわらかすぎて、べちゃべちゃしていた。ロウマは味が濃いのは好きではないが、かと言って薄すぎるのも好きではなかった。
「どうかしら、ロウマ?」
「どうですか、師匠?」
二人が同時に尋ねて来た。どう答えていいのか迷った。正直に言ってしまうと、二人を悲しませてしまうことになりかねない。だけど、真実を告げないのは、ある意味よくない。
ロウマが悩んでいると、横から何かを差し出された。みそ汁が入った椀だった。ロウマは反射的に受け取ってしまい、みそ汁をすすった。
「うまい」
思わず口に出してしまうほどのうまさだった。味が濃すぎもしないし、薄すぎもしない。
一番よい出来だった。
「これだよ、これ。この味が一番ちょうどいい」
そこまで言ってロウマは、はっとした。
目の前に座っているナナーとシャリーは、すっかり意気消沈していた。今のロウマの一言で、自分達の作ったものが、あまりお気にめしていないことに気付かされたからである。




