ロウマの帰還③
まるで昔話に登場する聖女のようだ。
「師匠、ご飯ができましたよ。こっちに来てください!」
シャリーの鬱陶しいくらい元気な声がロウマの耳に入って来た。どうやら食事はできたようである。
立ち上がったロウマは、尻に付いている土や砂ぼこりを払った。
「行くぞ、アリス。飯が冷めてしまう」
「はい!」
アリスは元気よく返事をすると、ロウマの後ろに従った。
***
並べられた食事を見たロウマは、思わず絶句した。なんという事だろうか。まともな料理ばかりである。アリスが作る食事ならともかく、ナナーやシャリーがここまで上手に料理を作ることができるなんて、夢にも思わなかった。
白い米という粒は椀に盛られ、茶色のみそ汁というスープもうまそうに湯気を立てており、さらに何か分からないが、色々な野菜や肉を煮つけたものもあった。どれもこれも見た目は上出来だった。
「すごいな。これをお前達が作ったのか?」
「これでも一応、料理はできるのよ。今まであなたの前で披露しなかっただけよ」
ナナーは、にこりと笑った。
「でも、苦労したわ。使ったこともないような食材ばかりだったから」
「そうだろうな。私も初めて見た時は、びっくりしたからな」
「とりえず食べてみて」
頷いたロウマは、箸という食べ物をつまむための二本の小さな棒を使って、食事を始めようとしたが、それより先ににシャリーが前に出た。
「師匠、ナナーが作ったものなんて、見た目だけでおいしくないはずですから、食べなくても結構ですよ。そんなことより、私のを食べてくださいよ。私も料理は初めてですけど、自信作ばかりです」
そう言ったシャリーが盆に載せて食事を出して来た。こっちも見た目はよかった。ただ煮物の材料の形が、ばらばらであるのが気になるだけだった。おそらく、手が不器用なのだろう。ロウマは彼女の性格を知っているため、その事については、あえて言及しなかった。




