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ロウマの帰還②

 もしもユースチスに会った時、ロウマはどうするべきか考えてみたが、うまい案は頭に浮かばなかった。


「ロウマ様、顔色が良くないですよ。本当に大丈夫ですか?」


「少し疲れただけだ」


「そうですか。あともう少しで到着しますので、頑張りましょう」


「そうだな」


「ところで、さっきまでこのオルゴールを眺めてましたけど、どうかしたのですか?」


「これか?アリス、このオルゴールは好きか?」


「はい。なかなかいい音色ですね。いつも聞き入っています。ロウマ様、このオルゴールはハイドンという人から買ったのですか?」


 アリスは襲撃者の名前を口にした。悪意があって言ったわけではなかった。彼女はロウマを襲撃して来たのがハイドンであるのを知らないのである。


「アリス、お前はこの間、私を襲撃して来た者の顔を見たか?」


 アリスは首を横に振った。やはり知らないようだった。


「そうか……襲撃者の名前はハイドン=ラクシャータ。私にこのオルゴールを売った男だ」


「……そうだったのですか。でも、なぜロウマ様の命を狙ったのでしょうか?」


「誰かの命令で来たのだろう」


 もちろん自分の意思も入っているはずだ。ハイドンは自分を殺そうとするのが楽しそうだった。根っからの殺人狂なのかもしれない。


 ロウマの額から、冷や汗が流れた。ふと、額に触れた手があった。


 アリスだった。彼女はロウマの額の汗を、ぬぐってくれたのである。他人の汗なんて、気持のいいものではないのに、アリスは嫌悪感すら見せなかった。


「今はあまり考えすぎない方がいいですよ。今必要なことは、体も心も休めることです」


「ありがとう」


 ロウマは微かにほほ笑むと、礼を述べた。アリスとは四年間の付き合いがあるが、何か悩んだりすると常に彼女の一言が救っていた。本当に不思議な子だった。包み込むような優しさは、ナナーとは違った優しさである。

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