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地方と中央⑦

 一瞬にして場は水を打ったように静まり返った。


「右宰相は確かに戦において数々の功績を挙げていました。ですが、ほとんどの戦が出る必要の無いものばかりでした。中には地方軍で十分だったものまであります」


 バルボアが落ち着きをはらった口調で、淡々と述べていた。場にいる他の団長達は、黙って彼の言うことに耳を傾けていた。


「結論から言ってしまうと、右宰相は我々を信用していなかったのです。信じていたのは常に自分だけであり、自分のやる事に、他者の介入を許しませんでした」


「つまり、ブランカ殿の言う通り、我々を無能……これは言いすぎかもしれませんが、足手まといと認識していたのでしょう!」


 バルボアの横にいるユースチスも声を荒げていた。


 ユースチスが言うのと同時に、他の団長一同も首を縦に振っていた。彼らもまったく同じ事を考えていたのだとキールはこの時になり認識した。


 地方と中央がここまで統制がとれていなかったとは夢にも思わなかった。キールの口から溜息がもれた。こんなはずではなかった。望んでいたのは、こんな状態ではなかった。一体どこで地方と中央の統制の歯車が狂ったのだろうか。ロウマを右宰相に任命したからだろうか。彼の右宰相就任反対派を粛清したからだろうか。それとも、自分がナナーを奪って、彼を狂わせたからだろうか。


「もういい」


 ラジム二世が声を発した。今まで黙していたため、突然の発声に場にいる者はみんな驚いた。


「ここでロウマの批判なんかしたところで仕方がない。オルバス騎士団団長ユースチスに、反乱軍討伐を命じる。反乱軍のことを余に告げなかった責任だ」


「喜んで責任をとりましょう、陛下」


 ユースチスは拝命した。


 しばらくすると、軍議は終わり解散となった。



     ***



 軍議が終わると十五人いた団長達はそれぞれの領地に戻ることになったが、キールとブランカはユースチスを呼び止めた。


 二人はユースチスを食事に誘うことにした。

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