地方と中央④
確かにロバート達なら、無事に寒さを越せそうだ。ぶっきらぼうな口調の男だが、嫌な感情を一つも抱かないのは不思議だった。
「さてと、そろそろ行くか。行軍が遅れると、姉さん達からなんて言われるか、分からないからな」
「そうだな」
だがその前に、言い争いをずっと続けているナナーとアリス、シャリーの三人を呼ばないといけなかった。止めに入りたいが、絶対に争いに巻き込まれそうな予感がした。
ロバートが、「行け」という合図を目で送った。
渋々であるが、ロウマは三人のもとに向かった。
結果は予想通りだった。
***
軍議の間に集まっている人物が普段より多かった。
それもそのはず、左宰相キール=スウェンが地方にいる騎士団の各団長を招集したからだった。集められた団長の数は十五。全員ロウマの父のジュリアスによって、任命された人物だった。
「跪け」
レストリウス国王のラジム二世が姿を現して、一同に声をかけた。全員、一瞬にして床に跪いた。
何度聞いても思わずひれ伏してしまう声だった。仮面で素顔を隠しているキールだが、その中では汗が滝のように流れていた。ロウマという男の声にも相手を従わせる威厳がある。
だが、ラジム二世はまったく違う。どう表現すればいいのだろうか。駄目だった。頭の中が混乱しており、キールには考える余裕も無かった。
「キール左宰相、内容を告げよ」
ラジム二世がキールの方を向いた。
「……かしこまりました。各団長はすでに知っていると思うが、最近反乱の芽が我が国に出始めた。連中はよりによって、十七年前に討伐されたクリスト=フォスターの残党だ」
場が騒然となった。反乱軍の噂は聞いていても、連中がクリスト=フォスターの残党とまでは知らなかったみたいである。




