地方と中央②
ロウマはどう答えていいのか分からずとまどった。今までナナーと接していて、こんなことは無かった。いつも軽くあしらわれるか、無視されるだけだった。
まさかこんなに距離が縮まるとは思わなかった。自分が望んでいたはずの光景なのに慣れてないのか緊張してしまう。気持を楽にしないといけなかった。
「ちょっと、抜け駆けはやめなさいよ。大体、その役目は私よ!」
「ナナー、ずるいわよ」
後ろから突如やって来た二人のために、ロウマは一気に興ざめした。先ほどまでの嬉しさが嘘のように吹き飛んでしまった。振り向くと、シャリーが騎馬で向かって来た。彼女の後ろには、アリスがくっつくようにして騎乗していた。
彼女もナナーと同じく、乗馬の訓練をしたことがなかったので、シャリーに頼んで乗せてもらっていた。ただし、二時間ごとにナナーと交代でロウマの馬に乗ることになっている。
「何か文句でもあるのかしら?」
ナナーが二人をにらみすえていた。
しかし、シャリーもアリスも負けていなかった。
「あれほど抜け駆けはしないって言ったわよね。昨日といい今日といい、本当に腹立だしいわ。師匠、だまされてはいけません。この性欲を塊にしたような女は、何を考えているか分かりませんから」
「シャリーの言う通りね。ナナー、あなたって人は油断も隙もないわ。その役目は、このアルバート家の使用人の私がするにふさわしい役目よ。ほら、さっさと馬から降りて。私がお手本を見せるから」
「嫌よ。さっき騎乗したばかりなのよ。なんでまたあなたに、交代しないといけないのよ?」
三人の言い合いは、延々と続き、いつ終わるか予測がつかなかった。数日間、同じような言い争いと光景がずっと繰り返されており、ロウマはうんざりしていた。
ナナーとアリス、シャリーの三人は何かあるたびに、ロウマと一緒にいた。移動や食事程度ならともかく、就寝するまでこの調子だった。就寝時は、離れた場所で寝かせておいたはずの三人が、朝になると必ずロウマの横にいるのである。
ロウマの体をまくら替わりにしているため、されるロウマにとっては迷惑だった。二日前から体の節々が痛くて仕方がない。
三人が言い争っている間にロバートが姿を現した。彼は何か異変が起きた時に対処できるように甲冑を身に付けていた。




