父と娘⑦
「おっさん、娘には会いたいか?」
「会いたくないというのは嘘になるな。だが、複雑だ。なんといっても十年以上も顔を会わせてないから、会っても分からないだろう。たとえ分かったとしても、こんな父親には会いたくないはずだ」
「そんなことないぜ。子供はやっぱり親に会いたいものだよ」
「なぜそんな事が言える?」
「俺の親父は十七年前の反乱鎮圧の際に、命を落としてしまった。おふくろや使用人から聞いた話だと、自慢できるような父親ではないらしい。はっきり言って、軽蔑している。でもな、死なずにどこかで生きていたとしたら、俺は会いたいよ。どんなに悪くてもやっぱり自分の親父だからな。そうは言っても俺の親父はもう墓の中だ。遺体はしっかりと帰って来た」
「そうか……子供は会いたいものか」
「そうだぜ。だから、勇気を振り絞って会いに行こうぜ。けど、その前に反乱鎮圧が先だったな」
そう言うと、ゴルドーは頭をぼりぼりとかきむしった。
思わずグレイスは苦笑してしまった。不思議な男だった。この男といるとなぜだろうか、素直になってしまう。なんだか勇気が湧いて来た。くよくよしても、仕方がない。自分はやるだけのことを、やってみよう。グレイスは自分に言い聞かせるように頷いた。
「話は変わるけど、ロウマはどうしているだろうな?」
「ナナーやアリスに任している。私は彼女達の力を信じてみようと思っている」
「あの女達に何かできるのか?」
「女を甘く見ない方がいいぞ、ゴルドー。女というものは、好意を寄せている男の前になると、とんでもない力を発揮するものだ」
「よく分かるな、おっさん?」
「これでも妻帯者だったからな」
グレイスは再び苦笑した。
***
軍議が始まった。これから戦っていくための重大なことだった。
最初に口を開いたのはセングンだった。
「僕達の軍もだいぶ力が増してきた。これからはもっと大きくなるはずだろう。そのために各部署の役割分担を僕なりに行った。それを早速諸君に伝えておきたい」
一同は神妙な面持ちで頷いた。