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父と娘⑥

 グレイスも酒瓶さかびんを持つと、ゴルドーのグラスに同じ量の酒を注いだ。


 二人とも酒は強い方だった。一気に飲みほした二人は、すぐに二杯目にかかった。


「娘は死んだ……と思っていた」


「思い込みだったのか?」


「娘は私が行った手ひどい暴力に耐えかねて、家を飛び出した。なにしろ、まだ六歳だった。一人で到底生きれるはずがないと考えていた」


「追いかける気は無かったのか?」


「無かった。私はその時、明日飲む酒のことを思案していたんだ。ひどい親だろう」


「確かにな。親としては失格だ」


 料理に手をつけながら、ゴルドーは言い放った。口に運んだ料理は、よい味付けをしていた。


 グレイスも同じように料理に手を伸ばした。彼からしてみれば、ここの料理は味付けが濃すぎだった。


「娘がいなくなってからも、私はただ酒を飲むだけだった。そんなある日、一人の男が私の前に現れた」


 男の顔について、グレイスはおぼろげにしか記憶していなかった。しかし声は、どすが利いていたいたのではっきりと覚えていた。


「その男がどうかしたのか?」


「男はいきなり私を叩きのめすと、『お前の娘は私が育てる』、と言って去った」


「やっぱり追わなかったのか?」


「正直言うと、私も頭がぼうっとしていたので、夢かうつつかも判別できなかったのだ。酔いが醒めて傷ができているのに気付いたが、どこかにぶつけたのだろうと自分で納得していた。それから私は酒に飽きたので、旅に出て賞金稼ぎをしながらレストリウス王国に来てロウマ右宰相と出会い、今に至った」


 グレイスもゴルドーも黙ってしまった。おそらく、グレイスの前に現れた男こそ、反乱軍の頭領のセイウンを育てた孤児院の院長であり、十七年前の反乱の際に、行方をくらましたクリスト=フォスターの副官のゴートだろう。

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