反乱の終わり⑬
ロウマはシャニスに合図を送ると、その場で診察させた。
彼から返って来たのは、
「駄目ですね。これは廃人です。裁判にかける事自体無理でしょう」
しかし、裁くのは自分達ではなかった。
国王のラジム二世である。
あの恐ろしく誰よりも気高き国王は、自分の邪魔をする者は絶対に潰す。
それがどんな人物であろうとも。
「連れて行け」
ロウマが命じると、ヴィドーは連行された。
姿が見えなくなるまで、わけの分からない事を口走っていた。あわれだったが、誰も口にする者はいなかった。
「さてと……我々も帰還するか。グレイス、これをお前に返す」
そう言ってロウマが投げて寄越したのは、先ほどロバートが見せたメスだった。受け取ったグレイスは旋律した。このメスは間違いなかった。あの男のものである。あの男は、この国にいる。そして、まだあれを忘れていないはずである。
グレイスは覚悟していた。必ず自分を狙いに来る、と。ならば選ぶ道は一つしかなかった。
「元帥」
「どうした?」
「今月限りで副官の職を辞めさせてください」
時が止まったかのようだった。周囲の人物達は、グレイスが何を言っているのか、さっぱり分からないようだった。ただし、ロウマだけは分かっているらしく、ゆっくりと頷いていた。
「時が来たのか」
「ええ。あなたやここにいるみんなを巻き添えにするわけにはいけません。今までありがとうございました」
「仕事を片付けてから出て行け。それに辞めても縁が切れるわけじゃない」
「ですが……」
「どんなに時が流れても、お前は私の優秀な副官だ」
「はい……」
グレイスは叩頭した。
二人は幕舎をあとにした。
置いてけぼりをくらったシャリ―とゴルドーは、慌てて後を追いかけた。