反乱の終わり⑪
明日からこの国でやるべき事をやっていく。バルザック達と合流する考えは無かった。自分は自分のやりたい事をやるのである。
自分が殺した強盗の娘。
再会した時には正直、驚きを隠せなかった。まさかロウマ=アルバートの屋敷で養われていたとは思わなかった。
それに自分と組んでいた男。
人の下で働くタイプではないと思っていたのに、それがロウマ=アルバートの下で働くなんて思いもよらなかった。奴にはそれだけ魅力があるのか。
「さてと……どうやって料理しようかな」
けれども、考えるのが面倒になったので、寝る事にしたハシュクだった。
***
グレイスは岩の上に座って、ずっと考え込んでいた。
なぜあの男がこの国に、しかも反乱軍にいたのだ。あの男は、けんか別れをした後、この国を出たはずである。
悪い夢である。
「おっさん、軍議が始まるぞ」
背後からゴルドーの呼ぶ声がして我に返ったグレイスだった。うっかり背後を許してしまった。自分らしくなかった。
「おいおい、何をやってんだよ。俺は味方だからいいけど、もし敵だったらおっさんは死んでいたぞ」
「すまない……私もおしまいだな。お前に説教をされてしまっては」
「まったくだ。しっかりしてくれよ」
二人はロウマ達が集合している幕舎まで歩いた。以前もこんな事があった気がするが、いつだったかグレイスは忘れてしまった。
しかし、男二人で並んでも別に嬉しくなかった。
「一番の功績はお前らしいな、ゴルドー」
「おうよ。帰還したら、陛下から勲章がもらえるぜ。うらやましいか、おっさん?」
「いや、別に」
「正直に言えよ。おっさんだって欲しいはずだろう。地位とか勲章とか……」
「私は元帥を支えるだけで手いっぱいなんだ。出世なんてしている暇は無い」
「ああ、なるほど……」
グレイスを知らない奴が聞いたらつまらないと思うかもしれないが、ゴルドーは納得してしまった。ロウマのような気難しいタイプを支えるとなると、気苦労も多くなって、欲も失せてしまうのである。