反乱の終わり⑧
「……というわけなんだよ。もう繰り返す気は無いからな。でも、これで分かってくれただろう。彼らがどうして死んだのか?」
「ふざけないでください」
「なんだって?」
「ふざけないでくださいと言ったんですよ。今の話を聞いた限りだと、先生は二人を殺すのに何も躊躇していなかった。つまり考えてなんかいなかったのですよ」
この男は、殺人を楽しんでいる。つまり正体は根っからの人殺しだったのだ。信じていたのに。師として尊敬していたはずなのに。姉を賊に殺されて孤独になった自分にとって、家族のような人だと思っていたのに。
よりによって、姉を殺した賊と変わりなかったなんて信じられなかった。気が付くと涙が流れていた。もう我慢ができなかった。ロビンズは地面に突っ伏してむせび泣いた。爪で地面を引っ掻いて、土をえぐりまくった。爪なんか剥がれてもいいし、血なんて大量に出てもよかった。
もう一層のこと大量に出血して死んでしまえばいいのだ。泣きじゃくっているロビンズをよそに、ハシュクは自分の耳に指を入れていた。
「泣いても何も始まらないだろう、ロビンズ。尋ねてもいいか?お前は僕のことを立派なお医者さんだと思っていたのか?」
「思っていましたよ……悪いですか?」
大笑いだった。ハシュクは、口を開けて高らかに笑っていたのである。様子からわざとではなく、本当におかしいのである。
さっきまで泣いていたロビンズだったが、常軌を逸したハシュクの行動に度肝を抜かれてしまった。この男はやはりどこかおかしい。すでに人としての一線を越えてしまったようだ。
いや、「ようだ」ではなく、「のだ」だ。
「悪い、悪い。君があまりにもおかしな事を言うものだから、つい笑ってしまったよ」
「俺はおかしな事なんて言ってません」
「自分で気付かないなんて愚かだね。まあいいや。僕が立派なお医者さん?そこが笑ってしまったのだよ」
「じゃあ、あなたは何ですか?」
「賞金稼ぎだよ」
軽く答えた。ハシュクは水筒に手を伸ばすと、最後の一滴まで飲み干した。中身が無くなったのを確認すると、水筒を近くの草むらに向けて放り投げた。