反乱の終わり⑥
なぜこの一言なのだろうか。これはどこの誰が書いて、誰に向かっての警告なのだろうか。ロウマが知っている人物では、心当たりが無かった。心当たりがあるとすれば、この一言を常日頃言っていた人物だけだった。
「死で償え」という一言を日頃、口ぐせのように口にしていた人物はたった一人。
アルバート家三代目当主ウェルズ=アルバートだった。
***
ようやく目を覚ましたようだ。気絶してから丸一日。死んだように眠っていたが、起きてくれたのでほっとした。
「ちょうど、うさぎが焼けたところだ。早く食わないと、僕が全部食べるぞ」
たき火の中から串刺しのうさぎを取り出すと、ハシュクはかぶりついた。ぽたりと落ちた脂が、見る者の食欲をそそりそうである。
腹が鳴ってしまったので、ロビンズもたき火に手を伸ばした。
「あちち!」
「馬鹿だな。ゆっくり取ればいいだろう。うさぎは死んでいるんだから逃げないよ」
「はい、先生」
今度は上手にたき火から取り出すと、ロビンズは食いついた。ハシュクのと同じように脂が垂れてきた。美味すぎる。エレンがさらわれて以降、患者の世話ばかりしていたので、食べ物らしい食べ物を口にしていなかった。今のロビンズには最上級のご馳走だった。
内臓は処理してくれていたらしく、苦味はまったく無かった。
「美味いか?」
「最高に美味いです」
だが、美味さのおかげなのか、すぐにある事が蘇った。城に残してきた患者だった。思い出した瞬間ロビンズは、口に運んでいたうさぎを地面に落としてしまった。
「先生、こんな所で悠長に食事なんてしている場合じゃないです。早く城に戻らないとみんなが……」
「落ち着け。まずは飯だ」
「いいえ、落ち着いてなんか……」
「先生の言う事が聞けないのか?」
背筋に寒気がはしるような口調だった。今までしゃべっていた時とは、まるで大違いだった。ハシュクという人間が別世界の人間のように感じてならなかった。