反乱の終わり④
奴らの結束は所詮、糸以下だったのかもしれない。
「もう死で償ったから十分だ。これからは安らかに眠れ」
ロウマは、ぽつりと呟いた。
幕舎から出たロウマは、城へと向かった。城内では騎士達が未だに遺体や血の後始末に追われていた。死臭の勢いが増してきたようである。このままでは病気が蔓延してもおかしくない。
ロウマは監督している騎士に作業を急ぐように命令した。もちろん給金は弾むというのも忘れなかった。
「元帥」
ディナだった。彼女も兵士達に混じって作業をしていたようである。北方で一緒に過ごしていた時は、こんな姿を目にしたことは一度も無かった。いつも妖艶な口調で自分を困らせてばかりという印象が強かった。
「お前もこんな仕事をするのか?」
「失礼ですね。これでも力仕事は慣れている方ですよ。なんといっても、ロバート達と一緒に北方で過ごしていましたからね」
「それもそうだったな。ところで、どれくらいで終わりそうだ?」
「そうですね……急がせても、二日はかかるでしょうね」
「やはりか。分かった。頑張ってくれ」
「待ってください。元帥に見せておかねばならない物があります」
横に控えている兵士に指図したディナは、何かを持ってこさせた。スケッチブックだった。古ぼけているが、なんの変哲も無い。
「私は絵を描かないぞ」
「そうですか。私も絵の趣味はありません。問題は中身です。ご覧になってください」
スケッチブックを受け取ったロウマは中身を開いて確認した。最初は子供が描いたような絵が、二枚連続していた。山頂で剣を掲げている人物の絵に、次の鳥と人間の合体したような怪物の絵。まさか今時はこんなのが芸術だというのだろうか。
だとしたら、芸術は分からない。というより、理解したくない。
「やれやれ、画家として生まれなくてよかったよ」
「そうですね。といより、元帥は画家には向いてないですよ」
「何に向いていると思う?」
「職業軍人ですね」
「ちっとも嬉しくないな」
できれば軍人以外がよかった。がっかりしながらもロウマは、次のページをめくったが、しばらくは破れて見れなかったので、無事な箇所を見ることにした。