反乱の終わり③
変わった感触である。鉄に触れているというより、人肌に触れているように優しい感触である。このような製法は北方には無い。きっと別の土地のものである。
「西方かもしれません」
シャニスだった。
「西方には変わった技術が多いと聞いたことがありますので……」
「そうかもしれないな」
とりあえずメスは、後でグレイスに渡すことにした。ロバートにしっかりと休むように伝えたロウマは、医療班の野営地をあとにすることにした。
「元帥」
幕舎を出ようとしたところで、シャニスが呼び止めた。
「どうした?」
「実は先ほど回収された反乱軍の幹部のセングンとレジストの遺体を検死したら、妙なことが分かったのです」
「妙なこと?」
「検死の結果、彼らの死亡推定時刻は昨晩。つまり、総攻撃前に彼らは殺されていたのです」
「何だと?」
驚愕だった。総攻撃により討死にしたと判明した反乱軍の幹部は、こちらで預かっているエレンを除いて、軍師のセングン、歩兵隊将校のサイスと騎馬隊将校のレジスト、兵糧担当のガリウスの四人だった。残りの幹部は行方不明だった。もちろん頭領のセイウンもである。
サイスとガリウスはゴルドーに討たれた後、首を斬られロウマに献上された。
セングンとレジストは城内で死んでいるところを発見された。おそらく乱戦で討ち死にしたのだと考えていたが、彼らがそれより前に死んでいたとはどういうことだろうか。
もしかしたら。
ロウマの脳裏に、ある考えがよぎった。
というより、これしか浮かばなかった。
「仲間内にやられたか?」
「なんとも言えませんね。両名とも首への鋭利な刃物の一撃が致命傷となっていますが、それ以前に腹や胸に刺し傷があります。かなり深いですから、相手に殺意があったのは間違いないでしょう」
おそらく自分が送った降伏勧告のことで議論となって、殺し合いに発展したのかもしれない。レジストもセングンと同じ意見で巻き込まれたのだろう。哀れな連中である。最初は同じ志で組んでいたのに、ちょっとでも意見が違うと糸がほつれるように結束が乱れる。