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総攻撃⑦

 ドゴン、ドゴン、ドゴン、ドゴン、ドゴン。


「なんの音だ?」


 近くの兵士に尋ねたが、兵士はおびえて首を横に振るばかりだった。


 ドゴン、ドゴン、ドゴン、ドゴン、ドゴン。


「どうやら、ここまでのようだな、ガリウス」


「そのようですね、サイス殿」


 二人が頷き合ったのと同時だった。


 城門が勢いよく破られ、「音」の根源が姿を現した。


 最初に死んだのはガリウスだった。根源を見届けた時点で、そいつが飛びかかって来て、頭部を喰いちぎったのである。やはり彼は敵を一人も突くことはできなかった。


 サイスはガリウスを殺した根源を目で確認した。


 狼なのだろうか。


 いや、違う。体躯から牛ほどはあるうえに、体中至る箇所にしまの模様があった。こんな狼は見たことないし、それに顔付きが狼と似ても似つかない。一体これはなんなのだろうか。


 考えているひまは無かった。とにかく危険な生き物は処分するだけである。


「殺せ!」


 周囲の兵士達に命じたが、動く者はいなかった。みな槍を持って獣を威嚇いかくしているだけだった。


「お前達、早くしろ。殺せ、殺せ!」


 サイスは口から唾を飛ばしながら叫んで回った。取り乱しているようにしか見えないが、とにかく今はこのわけの分からない生き物を始末するのが先決だった。


 向かっていく者は一人もいなかった。みんな震えながら武器を持っていた。すでに武器を取り落としている兵士もいた。


 サイスは絶望した。今までしてきた事は何だったのだろうか。何のために、みんなをここまで鍛えてきたのだろうか。自分の十七年は、無駄だったというのか。


 城外から壮大な音が耳に入って来た。城門が破られたので、勢いづいた敵が迫って来たのだ。それが引き金になったのだろう。兵士達が次々と武器を捨てて、逃走を始めた。打ち捨てられていく武器を見つめながら、サイスは口から溜息をもらした。


 白い息だった。自分の魂魄こんぱくが出てきたようである。けれどもまだ死んでいない。

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