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総攻撃⑥

 何か駆けて来る。馬だろうか。かといって、他の家畜にも該当しない。自分が人生四十年の間で見た事も聞いた事もない生き物だった。城壁から様子をうかがっていたサイスは、すぐに異変を察知した。城門に回った方がいいかもしれなかった。


「バルザック、私は城門に向かうぞ」


 横に目を向けると、彼の姿はすでに無かった。さっきまで一緒に戦局を見ていたはずだったのに、煙のように姿を消していたのである。思った通りの展開になっていた。


 舌打ちしたサイスは、とりあえず城壁の守備は別の兵士に任せて離れた。さいわいにも女や子供は戦が始まる前に、地下道から逃がしておいてよかった。うまくいけば、彼らはヴィドーがいるパクトさんに逃げ込むはずである。


 思い返せば、自分には先見の明が無かった。十七年前の反乱で生き延びたのなら、そのまま平凡にただの村長として暮らしていけばよかったのに、何を思ったのか再び反乱なんかに加担してしまった。


 破れた夢よ、もう一度ではあるまいし。


 すまなかった。自分のことは許さなくていいし、一生恨み続けてもいい。とにかく生き延びてくれ。走りながら心中で何度も村のみんなに謝り、そして願った。


 城門に向かう途中、ガリウスと合流した。彼も残ったようである。ろくに戦えもしないのに、槍を持っていた。


「残ったのか?」


「一人でもいいから、突き殺そうと思いまして」


「よせよせ。お前のような奴はすぐに真っ二つにされるのがオチだ」


「ひどい言われようですね。やってみないと分かりませんよ」


 お互い笑い合いながら、城門へと向かった。城門はひどい状態だった。


 尋常ではないへこみ方をしていたのである。城門は丸太で打ち付けても、へこみは付かない。それに先ほどから響いている奇怪な轟音ごうおん。まるで殴りつけているような音である。

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