総攻撃⑤
楽しむのも戦だ。ゴルドーは自分に、そう言い聞かせた。
「ゴルドー」
誰かが駆け寄って来た。これから面白い話が始まるかもしれないのに、打ち切るなんて非常識である。文句の一つでも言ってやらないと気がすまなかった。
「ロバートじゃない」
イメールが間の抜けた声を上げた。文句を言おうとしたゴルドーも、相手がロバートだと聞いてその気が失せてしまった。なぜ彼がこの場にいるのだろうか。ロウマと一緒に中軍にいたはずである。
「どうしたの、ロバート?」
「イメール姉ちゃん、俺は第二軍として送られたんだ」
「シャニスはどうした?」
本来の第二軍の役割はシャニスだったはず。その彼を差し置いて、ロバートが行くとは異例である。
「交代した。あの人は医療班の隊長でもある。ここで欠けてはまずい。その点、俺はただの客将だ。どうなろうが、構わないはずだ。だから、志願したんだ」
「だからといって……」
「ゴルドー、命令してくれ。『行け』、と」
さすがに弱った。ここでロバート投入したところで、味方の被害が増えるだけに違いない。もう少し軽減する方法は無いのだろうか。唇を噛みしめながら、ゴルドーが唸っている間も、味方は矢や岩の前に斃れていった。
「ゴルドー、言い忘れていたが、ロウマからの言伝を預かっている」
「なんだ?」
「『禁を解け』だ」
「本当か?」
途端にゴルドーは嬉々とした表情に変わった。一体全体どうしたのだろうか、とイメールも言ったロバートも首をかしげた。
「間違いないか?」
「ああ、本当だよ。そんな事より、早く俺に突撃の命令を……」
「いや、まずは俺から行く。俺が城門を破ってから、お前は突撃しろ」
どういう事なのだろうか、とロバートは疑問に思った。せっかく第二軍でやって来たのに、これでは無意味である。しかもゴルドーが城門を破るとはどういう意味だろうか。
ロバートが疑問をぶつけようとした瞬間ゴルドーは、ぽつりと呟いた。
「解除」