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第十四章 猛毒ウェルズ=アルバート①

 自身の部屋に入ったバルザックは、にやにやしながらセングンを見つめていた。おかしい事なんて一つも無いのに、なぜ笑っているのだろうか。


 セングンは、分からなかった。彼の頭の中は、混乱の坩堝るつぼに飲まれていた。椅子から立ち上がろうにも足が震えており駄目だった。動け、動けと何度も念じたが同じだった。


 スケッチブックに目を落としたバルザックは、一歩また一歩向かって来た。笑みはさらに増してきた。


「感想はどうかな?」


「感想?」


「そこに描いている芸術だよ」


「前半は、とっても素晴らしい抽象画だったよ。後半は、なかなか上手な人物画だ。お前に画才があるとは思わなかったよ」


「ちょっと違うな。生憎だが、今の俺に画才は無いよ。それを描いたのは、前の俺だよ」


 理解できなかった。前とはどういう意味なのだろうか。バルザックは何か冗談でも言って自分をまどわそうとしているのだろうか。


 少しだけだが、足の震えも解けてきたので、力を振り絞って立ち上がることにした。


「とにかく変な冗談はよして、そこをどけ。僕は自室に戻って寝るよ」


「寝るのなら、どこだって出来るさ。ここでもね」


 そのセリフが出た途端、セングンの背中に悪寒がはしった。一瞬が勝負である。立って机を蹴り飛ばすと、脱兎の如く駆けた。蹴った机がうまく膝に命中してくれたらしく、バルザックはうめいた。


 ドアも一気に蹴り破った。後はとにかく走って逃げるのみだ。


 脇腹に違和感が生じたのは、そんな時だった。瞬時に熱も生まれた。胸にもいきなり痛みがはしった。なんだろうかと思い目を移すと剣だった。二本も突き立てられている。


「デュマ……ガストー……」


 横から自分に剣を突き立てた張本人達に対して叫び声を上げようとしたが、もう無駄だった。


 力が抜ける。だが、ただでは死ぬつもりはない。絶対に、こいつらと一緒に刺し違えてやる。いている剣に手をかえようとした時、足音が耳に入って来た。


 ハシュクだった。いけない。このままでは彼が巻き込まれる。

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