第十三章 三つの約束①
城はあっという間に包囲された。軽く一万は超えているようである。どうやら敵は本気で、この城を陥落させるつもりのようだ。遠くからでも連中の覇気を感じ取ることができるので、セングンは身震いした。
「すぐにみんなを集めろ」
自室に戻ったセングンはみんなが来るまで、待つことにした。現在の兵力は五千ほど。攻められても、一度なら勝てる自信はあるが二回、三回となるとその自信も薄れてくる。
セングンが悩んでいる最中、ドアをノックする音がした。どうやら来たようである。そう思ってドアを開けたが違っていた。
いたのはただの伝令の兵士だった。
「どうした?」
「たったいま敵陣から、使者が書簡を持って参りました」
「書簡だと?」
兵士から書簡を受け取ったセングンは一読した。
読み終えるとただ唸り声が出て来るだけだった。自分一人では決めきれない内容である。とりあえずみんなに相談しなければならない。
「書簡を持って来たレストリウス王国の使者はどうした?」
「『明朝に返事を聞きに来ます』と言って立ち去りました」
「そうか……お前は行っていいぞ」
兵士を立ち去らせると、またみんなを待つだけの時間になった。この書簡の内容に納得する者がいるだろうか。
いや、いないだろう。特に「残党の村」の連中は絶対にそうだ。議論どころか、野次や怒声が飛び交うかもしれない。バルザックとデュマ、ガストーはどうだろうか。微妙なところである。
そうなると彼しかいなかった。
ジュナイド。パリスが残していった男である。パリスはセイウンと一緒に城を去る前に、セングンを自室に呼び寄せてある事をこっそりと伝えていた。
三つの約束である。どんな事があっても、それだけは守ってほしいと言っていた。
一つ目は困った時にはジュナイドに必ず相談する事である。
早く来てほしかった。
がちゃり、とドアが開いた。どうやら願いは通じたようである。
しかし、入って来たのはジュナイドではなくデュマだったので、セングンはがっくりと肩を落とした。