第二章 父と娘①
軍議の間には、主だった幹部がそろっていた。全員椅子に座っており、微動だにしていなかった。腰掛けている者は、バルザック=ドミムジー、セングン、デュマ、ガストー、ハシュク、サイス、ガリウス、レジストの八名だった。
全員、セイウンが来るのを待っていたが、当の本人はなかなか姿を現さなかった。
「何かあったのだろうか、セイウン殿は?」
黙していたが、我慢できなくなったバルザックが口を開いた。
「そうだな。さすがに心配になってきたな」
サイスも不安気な表情だった。
「いや、大丈夫だろう。もう少しでやって来るはずだよ」
「だろうな」
そう言ったのはセングンとハシュクだった。彼らだけは悠長な表情で椅子に座っていた。他の面々はどうして二人だけが、こんなにも余裕を待っていられるのか意味が分からないらしく、互いに目を合わせては首をかしげていた。
「セングン殿、どうしてそんなにもゆったりとしていられるのですか?できれば、理由を教えてください?」
「大したことではない。ちょっと考えれば分かることだよ、レジスト」
「はあ……」
「分からないのなら、ヒントをやるよ。セイウンといつも一緒にいるのは誰かな?」
「あっ、そういうことか」
「君が予想している通りだよ」
その瞬間、レジストは椅子から立ち上がって、どこかに行こうとした。
サイスが気になったので、声をかけた。
「どこに行く、レジスト?」
「ちょっとセイウンの部屋に行って、あいつを叩き斬って来ます」
「いきなり物騒だな。どうしたというのだ?」
「サイスさん、止めないでください。セイウンが来ない理由は、たった一つしかありません」
「それは?」
「それは……あいつはこの城の男子諸君が崇拝してやまないエレン嬢に対して……言えません。俺の口からはエレン嬢を汚すようなことを言わせないでください。それだけは勘弁してください!」
だが、すでにサイスはレジストを完全に無視していた。あほくさいので付き合ってられなかった。