現れし一軍⑦
セングンはバルザック達のもとに戻った。
「どうしますか?」
ガストーが尋ねた。これからエレンを助けるかどうかのことだろう。
「そうだ。それだぜ。早くエレン嬢を助けないと。セングン殿、いつになったら助けるんだ?俺は早い方がいいぜ」
レジストは息まいていた。彼だけではなく、エレンを崇拝する会のメンバーも一緒だろう。
「やめよう。エレンの奪還は今後行わない。これで決まりだ」
「そんな……セングン、そんなことってありかよ!」
「そうです。いくらなんでも無責任ですよ」
デュマもレジストもセングンに食ってかかろうとしたが、バルザックが制止した。
「二人とも落ち着け。もう決まった事だ。これ以上騒いでもどうしようもない」
「だがよ、バルザック。これじゃあエレンが……」
「今の俺達に、あの騎兵に勝てる術があるのか?さっき味わったばかりだろう」
それを言われると、デュマも黙ってしまった。ロウマの騎兵は、はっきり言って無敵に等しい。たった五百でさえ、あれほどの実力なのだ。これが千単位、万単位となると、どうなるか分からない。自分達は完全に壊滅させられてしまう可能性が高かった。
デュマはおとなしく、椅子に座った。軍議は終わりとなり、幹部は全員解散となった。
場にはセングンしかいなかった。また報告書に目を通した。エレンもセイウンと同じように記憶を失った。そんなことがあり得るのか。長考した結果、結論を出した。セイウンとエレンは長い間の生活で一心同体となっていた。つまり、二人で一人。
ところがグレイスによって引き裂かれてしまったために、二人は新たな人格を形成してしまったのである。
考え終わったセングンは馬鹿なと自分を嘲笑した。
「どこの三文小説の世界だ。あってたまるかそんなこと」
否定しているはずなのに、セングンの膝は震えていた。