現れし一軍③
違う。
デュマは確証していた。これはライナではない。直感だが分かる。そうなると、一体誰なんだ。
背筋に凍てつく感覚を味わった。同時にデュマは剣を構えて、振り向きざまに斬った。鈍い音が戦場に響いた。受け止められたのであった。黒い甲冑を着た男。デュマは男の顔に見覚えがあった。
ロウマ=アルバートだった。
なぜここにいるのか分からないが、もう一度剣を振った。しかし、再び受け止められた。力では負けるはずがないと思っているデュマだったが、思っている以上に甘くなかった。
とうとうロウマの攻撃が右肩を斬った。
デュマはそのまま、馬上から転落した。とどめを刺されるのだろうかと思ったが意外にもロウマは見据えたまま何もしなかった。ただ見つめているだけだった。
馬鹿にされているようだった。このまま何もしないで、いいのだろうか。
いいはずがなかった。
地面に落ちている槍に手を伸ばすと、ロウマに目がけて突いた。
槍は見事にロウマの脇腹に入った。
それでもロウマは負けていなかった。持っているリオン=ルワでデュマが持っている槍を断ち斬った。
デュマは思わず尻餅をついた。
わずかの隙だった。デュマが立ち上がると、ロウマの軍はすでに後方に撤退していた。
***
デュマ達はとりあえず、報告のために城に戻った。
兵士達は勝った、と騒いでいるが果たして本当に勝ったのだろうか。釈然としなかった。兵士達の歓喜の声が響く中、デュマはセングンの部屋に向かった。
部屋に入ると、幹部はすでに集まっていた。
「デュマ、治療ぐらいしてから来たらどうだ。まだ、肩から血が出ているじゃないか」
苦笑しながらセングンが指さしていた。