現れし一軍②
一気に戦場を駆け抜けた。オルバス騎士団はその姿を見ただけで、逃げ出していった。それでも逃げずに残って戦おうとする者もいた。デュマからしてみれば逃げようが、残ろうがどっちだってよかった。
ただ蹴散らすだけである。デュマとレジスト、ジュナイドは合流する事にした。この三軍ならば残りを殲滅することぐらい容易だった。
「今は勝利する事だけに集中しろ。とにかくライナ=ハルバートンを討つのは今しかないんだ」
ジュナイドが言った。
「やれやれ。新参者のお前に言われたくないよ」
「レジスト、そんな事よりも今は目の前の敵に集中しろ」
「おいおい、デュマ。お前らしくないぞ。どういう風の吹き回しだ。いつものお前だったら、俺みたいに言うはずだろう」
「そうかもしれない。だが俺はそれよりも、この戦の方が大事なんだ」
自分が騎士として少し成長したのかもしれないとデュマは心中で思った。セングンが聞いたら鼻で笑うかもしれないから黙っていよう。隊列は整ったので、どうにか進発できそうだった。デュマ達は駆けた。所詮はただの追撃。大したことはないはずである。
その時だった。
前方の存在に気付かされた。
一軍だった。全て騎兵である。見たところ五百といったところである。おそらく援軍だろう。
デュマは舌打ちした。
「止まるぞ」
様子を見るために全軍に旗で合図を送った。
だが、この判断が間違っていた。ほんの一瞬のことだった。
気が付くと衝突していた。
停止の合図を送ったのと同時に、前方の軍は動いていたのである。次々と兵士達が槍で突き伏せられ、剣で斬り伏せられた。
「退け!」
今度は自分が言わなければならなかった。さっきまでの圧倒的な勝利が嘘のようだった。周囲ではジュナイドやレジストが態勢を立て直すことに必死だった。この二人でも苦戦するなんて、敵はどれくらいの腕なのだろうか。これがライナ=ハルバートンの実力なのだろうか。