新団長ライナ=ハルバートン⑦
騎士は見ず知らずの奴から命令されているのが気に食わないのか、そっぽを向いてしまった。
シャリーはすかさず、騎士に蹴りをくらわした。さらに足蹴にした。
「さっさとあの人に、持って来なさい。ついでに私の分もよ!」
シャリーの剣幕に圧倒されたのか騎士は頷くと、どこかに姿を消して、しばらくするとまた現れた。手には二人分の飲み物を持っていた。
「ご苦労。やっぱり飲み物は緑茶に限るわね。ついでにあんた、お茶菓子も持って来なさい。団子はある?」
「いや、そんなものはありませんけど。クッキーならありますけど」
シャリーに蹴られたのが効いたのか、騎士はおどおどしていた。
「私にあんなパサパサしたものを食えっての!あんた、馬鹿にしてんの?」
「滅相もありません」
ごんっ。
騎士が頭を下げたのと同時に、シャリーの脳天にロウマの拳がさく裂していた。
「痛いじゃないですか、師匠」
「少しは黙ることを知らないのか、お前は。どこかに行くたびに騒動を起こすな」
「失礼しました。今後は気をつけます」
「もう口で謝るのは何回も聞いた。耳にたこができる。いや、体中にたこができそうだ。そこの君、ありがとう。いただくよ」
ロウマは騎士から緑茶のカップをもらうと、口を付けた。ライナの緑茶は騎士達の間にも支給されていたのである。ロウマは、周囲の騎士達が自分やシャリーを奇異な目で見ていることに気付いた。
「行くぞ、シャリー。少し目立ちすぎたようだ」
「はい、師匠」
シャリーの手を引っ張ると、ロウマは陣内をかけた。微かに吹く風がロウマの胸に、痛みを覚えさせた。