新団長ライナ=ハルバートン⑥
「だったら、あなたもエレンという女の子を見習うのです」
「どこを見習うのですか?」
「それはあなたが考えなさい」
「私が考えるのですか?」
「あなたの人生なのですから、私が考えても仕方がないでしょう。いいですね」
「分かりました。とにかく頑張って答えを出します」
「素直でよろしい。そういう素直なところがあなたのいいところですよ。だから、元帥もあなたを好んで弟子にしてくれたのでしょう」
「そうかもしれませんね、ライナ姉さん!いや、きっとそうですよ!」
成り行き上だ、と言いたいロウマだったが、手を小さく振ることで精一杯の抵抗を見せていた。
しかし、シャリーにはそれが視界に入ってなかった。
「ところで元帥はここに何をしにいらっしゃったのですか?」
「冷やかしだったら、どうする?」
「お茶だけ飲んでお帰り願います。私達も暇ではありません。ですが、元帥は冷やかしで来るような人でないのは私が知っていますので、別の理由ですね」
「反乱軍の城を見ておきたくてな。かつて父が陥落させた城がどんなものなのか、この目に焼き付けておく必要がある」
「お体の事もありますので、無理はしないでください」
「分かっている。確認したらすぐに戻る」
「そうしてください。元帥は、この国の要ですから、私達も失うわけにはいきません」
「私も買いかぶられたな」
「事実ですよ」
ライナは、くすりと笑った。
「ならば私も要として、しっかりと期待に応えないといけないな。行くぞ、シャリ―」
「はい、師匠」
ライナとの会話もそこそこにして、ロウマはシャリ―を伴って幕舎を出た。外では騎士達が調練に励む声が聞こえる。騎士達や馬の荒い息づかいを聞くのが懐かしく感じる。最近は忙しくて調練をしている暇がなかった。
ロウマは、早く自分の日常に戻りたかった。突然、胸に痛みがはしった。
「師匠、どうしました?」
「…………」
「もしかして胸が痛いのですか?」
「少しな……」
「あまり風に当たらないようにしましょう」
「大丈夫だ。レイラからの薬は持っている。これさえあれば……」
「アホですか、師匠。そんなものだけでいいわけないでしょう。そうですね温かい飲み物でも飲んで一休みしましょう」
しばらく歩くとシャリーは立っている騎士を見つけて、何か言いつけていた。どうやら飲み物でも持って来いとでも言っているようだ。