新団長ライナ=ハルバートン⑤
ロウマの言う通り、シャリーは出発する前に屋敷の書庫から小説を何冊か引っ張ってエレンに読んでもらっていた。内容は美しき鎧に身をまとった姫騎士が、王子と一緒に国を守るものだった。
登場人物を自分とロウマに重ね合わせるという作業は、しっかりと怠っていないシャリーだった。
「本当に妹が迷惑をかけてすみません」
「いやいや、私も結構楽しんでいますので、お気づかいなく」
「でも心配です。シャリーは、まだ粗雑なところがありますから……」
ライナが自身の頬に手を当てた。しばらく見ないうちに、頬の肉がそげたように見える。来て早々、騎士団長に任命されてライナも忙しいのだから、無理もない。補佐役の者がもう一人必要かもしれなかった。
「ライナ姉さん、心配しすぎですよ。私は師匠に何も迷惑をかけていません。ねえ、師匠」
シャリ―が話しかけてきたので、ロウマは今まで考えていたことを切り替えることにした。
「実はライナ、先日も少々……」
「師匠?」
ライナに負担をかけたくなかったが、真実は伝えておいた方がいいだろうと思い、ロウマは先日のエレンとの一件をライナに伝えることにした。
ロウマから全てを聞いたライナは、あきれ果ててシャリーを見据えた。
シャリーはすっかり委縮してしまった。さすがライナは、ハルバートン家一番の年長者だった。威厳というものがある。
「シャリー。あなた今年でいくつ?」
「二十です」
「二十にもなる人が、いつまでも子供のように、けんかばかりしていては、笑われてしまいますよ。ましてや、あなたはそこにいる元帥に嫁ぎたいのでしょう?違いますか?」
「そうです」
話が変な方向に行っているらしいので、待ったをかけようとしたが、それよりも早くライナが話を先に進めてしまった。