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記憶⑪

 ロウマは、にこりと笑った。


「合っている」


「本当ですか、元帥?」


「本当だ。エレンを育ててくれた人物は、よほど頭がよい人物だったのだろう。感謝しなといけないな」


「はあ……」


 自分の娘をこの歳まで育てたのは、クリスト=フォスターの副官をしていたゴートという男である。複雑な気持ちであるが、グレイスは心中でゴートに感謝した。


「エレン、お前はすごいな。その歳でここまで出来るなんて感心するよ」


「ありがとうございます。ですが私、何も覚えてないんですけど……」


「おっと、そうだったな」


 思わずロウマは笑ってしまった。エレンもグレイスも釣られて笑ってしまったがナナーとアリス、シャリーの三人は面白くない顔をしていた。アリスは家事を、ナナーは学問を奪われてしまったのである。面白いはずがなかった。


「ロウマ、清純派を装っているのよ」


「だまされないでください、ロウマ様。そいつは偽清純にせせいじゅんです」


「私、別にだましているつもりは無いのだけど……」


 突然、狂ったように叫びだした二人に対して、エレンは困惑してしまった。


 さすがのロウマも見苦しいとあきれた。というより、二人ともロバート達の土地から帰って来てから、変わりすぎである。


 今度はシャリーが前に出た。


「いい気になるんじゃないわよ!そんなに笑いたければ、この私を倒しなさい。このシャリー=ハルバートンをね」


「べ、別に私、笑いたくてこんなことしているわけじゃないんだけど……」


「黙りなさい!いいから外に出なさい!私が鍛えてやるから!」


 もはや一触即発だった。これはロウマが言っても聞きそうになかったので、成り行きに任せるしかなかった。


 全員外に出た。


 シャリーは棒を持って来ると、エレンに投げて寄こした。


 渋々ながらも、エレンは棒を受け取った。


「一回勝負でいいわ。さっさと決めるわよ。師匠の一番弟子の私の棒術を見せてやるわ」


「私は別に棒術の専門家ではないぞ」


 ロウマは反論したが、シャリーはまったく聞いてなかった。


 シャリーは棒を構えた。さすがロウマに鍛えられただけあって、しっかりとした型だった。体からみなぎる闘志というものが普通とは違っている。果たしてエレンは対応できるだろうかとグレイスは心配になったが、それも束の間だった。

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