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異世界への招待状  作者: よ~こ
第一章 招待状
1/8

やっぱりトラックだよね?



 きょろきょろきょろ




 きょろきょろきょろ




 ???




 何処だここ!?






 目を覚ますとそこは知らない天井どころか、天井が無かった!!


 何を言っているのかわからないと思うが……


 俺は昨日、一人暮らしのサビレ荘の一室で布団をかぶって寝たはずなのだ!!


 寝ぼけているとか、夢遊病とかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ!!


 無論、台風で天井が屋根ごと飛んでいったとか……ありそうだな。あのボロアパートなら……いや、そもそも、布団自体が無い。壁が無い。寝てた場所は直で地面だ……


 つまり何が言いたいのかと言うとだ。



「私は何処、ここは誰ってやつだな」


 ………………ツッコミがほしい。


「う~む、いったい何があったのだろうか?」


 とりあえず、昨日の事を詳細に思い出してみようと思う。


 もしかしたら記憶違いかもしれないし……




 そう、アレは一か月前……前過ぎるな


 昨日だ昨日、えっと昨日は……




 もやもやもや~~~ん(回想シーン移行の効果音です!! 妄想とかじゃないんだから!!)



 ちゅん、ちゅん


 ちゅん、ちゅん


 鳥の鳴き声とともにまどろむ意識が覚醒していく。


「ん、朝か……」


 さわやかな朝の目覚めとでも言うえば良いのだろうか……珍しく、目覚まし時計よりも目を覚ました俺は……そのまま二度寝した。


 だって、眠かったし……朝日が昇ってすぐというか、まだ薄暗かったんだもん


 だが、なぜかその日は二度寝が出来なかったのだ。


 ちゅん、ちゅん、ちゅん


 ちゅん、ちゅん、ちゅちゅ


 ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ



「うるせぇ~~~~!!!!」


 サビレ荘の庭にある木にまるで葉っぱと同じくらい数の鳥たちが泣きわめいていたのだ!!


 しかも部屋の目の前に存在した。


 だが、俺の朝飯代わりに焼き鳥にするぞ、と言う意思が伝わったのか、鳥たちは慌てて飛んでいった


「まったく。おかげで眠気がどっかに飛んでいってしまったじゃないか」


 ちなみに現在の服装は肌着とトランクスとまあ、一般的な寝起きの格好だ。


 とりあえず、朝飯でも食おうと思って台所に向かった。


 冷凍パックにしたご飯を電子レンジで温めつつ、フライパンを火をかけて温め、油を引いて目玉焼き…………面倒だからこれでいいや。


 千切り状態で冷蔵庫に入っていたキャベツをご飯の上に乗せて、その上に目玉焼き、更に醤油をぶっかけてガッつく


 さて、腹ごしらえも完了してどうしようかと考えていると、新聞が配達されてきた。


 その新聞を持ってトイレへと向かう。


 無論、読むためだ。


 ついでに踏ん張る為でもある。


 どうやら今日はすこし離れたところのパチンコ屋が新装開店の日らしい。


 これは行くしかないな!?


 バイトも休み!! 妙にすがすがしかった目覚め!! そして新装開店のパチンコ屋!! これで行かないってのは無いな!!


 そう思った俺はケツを吹いて共同トイレか脱出した!!


「ぱちんこ、ぱちんこ~~♪」


 小声で歌いながら階段を上って(共同トイレは外にあるのだ!!)新聞を机の上に放り、勝負服に着替える。まあ、なんちゅうか、あれだ。ジンクスって奴だな。


 まあ、つっても。選ぶほど着がえなんぞ無いけどな~♪


 濃い緑のカーゴパンツをはいて、肌着の上からカーキ色のミリタリージャケットを着こんで、タバコ、ライター、スマフォをポケットにつっこむ。ブーツ(つま先と踵に鉄板の入っている軍用ブーツ)を履いて……


「…………さあ、いくか」


 気合いを入れて、扉を開き、俺は理想郷を目指して歩み出したのだ





 じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら




 笑いが止まらんかった



「一箱二箱三箱四箱~~♪ 五箱六箱七箱九箱十箱♪ どんどんどんどん積んで♪」


 どっかで聞いた様な歌を口ずさみながら帰路につく俺、手には景品の入った紙袋を抱えている。


 大勝ちしたのだ!!


 ちなみに時間は夜である。食事も忘れるほどに勝ったのはいつ以来だろうか……いや、パチンコ打ち始めてからと言う物、そんな事なかったな。うん


 いやはや、今日は良い日である。


 気分がハイな状態だった為、半ば踊りながら帰っていると途中でラーメン屋の屋台があった。


 その香しい匂いに昼飯を食べて居ない事を思い出し、寄ってみることにした。


「おっちゃん!! ラーメン一丁!!」


「あいよ!! ほれ、食いねぇ!!」


「ちょ、早ぇ!?」


 座って瞬間に目の前に出されたラーメン


「うちは早い、安い、美味いがモットーだからな!! かっかっかっか!!」


 かっかっかっかって笑う人初めて見たよ


 ずるずるずるずるずるずぞぞぞぞ


 んぐんぐんぐ


「ぷは~~~~!! 美味い!! もう一杯!!」


 美味いと言う間も無く、完食してしまったことに驚きつつも、そう言ってどんぶりをおっちゃんに突き出す。


「良い食べっぷりだな!! 気にいった!! チャーシュー大盛りにしちゃる!!」


「おお!! ナイスだおっちゃん!!」


 改めてラーメンを見る。最初の一杯は空腹とその美味さから味わいきらずに食べきってしまった。


「良く見るんだ。この美味いラーメンを!! 今度こそその目に焼き付けるんだ!!」


 良くわからない事を叫びつつ、その神々しいラーメンを見る。


 琥珀色のスープの海の中に存在する黄金の秘境(麺)!! その秘境を覆い隠さんとばかりに埋め尽くされた肉のチャーシュー!! そして緑鮮やかなネギメンマその世界に昼と夜を醸し出すかのようなゆで玉子と焼海苔!!


 スープ掬ってみれば、屋台の提灯の優しげな光に反射しその存在を優しく光り輝く。スープを啜ってみればわかる……さっぱりとした醤油ベースの中にしっかりとその存在を見せる豚骨の深み、様々な食材の力を吸い上げたハーモニーが口の中を突き抜け、飽きがこない!! そしてさらに呑んだ瞬間ののど越し、食堂を優しく通りぎ胃の中をぽかぽかにしてくれる。


「う~~ま~~~~い~~~~~~ぞ~~~~~~~~!!!」


 麺を箸でつまみ上げれば、その姿はまさに黄金の滝!! ストレートの細麺でありながら、その身をスープに絡ませ、見るものすべてを魅了するその姿!! 啜ってみればいい!! 唇を滑らかに滑って行くその麺はまるでシルク!! そして噛んだ瞬間にパンッと弾けるように踊る。爆発し口の中を蹂躙して行くのだ!!


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 


 一枚食べれば病みつきになるチャーシューは、噛んだ瞬間に舌でほぐれてしまうほどに脆く淡い。それでいて、その存在はしっかりと主張する。しゃきしゃきと歯ごたえの良いネギはどんぶりと言う世界を調和させ、こりこりと歯ごたえの良いメンマが飽きさせず、海苔の香りが全体を引き締め、卵がすべての存在を引き上げる……


「ふぅ……美味かった。ごちそうさまでした」


 汁一滴も残さずに完食し、手を合わせて感謝する。


 そう感謝だ。


 こんな感覚は初めてである。


 心の底から感謝の念が浮かんでくるのだ。


 まるで何かを悟ったかのような感覚、無意識に浮かぶは微笑。


 仏像が浮かべるかの様なアルカイックスマイル。


 人は本当においしい物を食すとその食材に出会えた事、その食事を作ってくれた人に、そしてその食材全てに……感謝するのだ。


 感謝をこめてごちそうさまと言った事など、これまであっただろうか……


 そんな思いとともに涙がこぼれた。


「うぅ、おっちゃん。こんな美味いラーメン、作ってくれてありがとうなぁ」


 涙を流し、鼻水ずるずるの俺の言葉におっちゃんは男前な笑顔で返してくる。


「かっかっかっか、喜んでくれたようで嬉しいぜ!!」


 そう言ってサムズアップし、おっちゃんは屋台を引いて去っていった。


「おっちゃん、本当にありがとう」


 手にハンカチを持って、それを振りながら見送る俺





 しかし、そんな時だった。




 俺はなぜか、トラックに轢かれたのは…………





 走馬灯が頭に流れ、それとともに思う……




 あ、おっちゃんにお金払ってねぇ……







 ☆~回想終了~☆





 布団に入って寝てねぇじゃん!! (ビシィッ!!※ツッコミ音)


 ああ、なるほど、だから服着てんのか……布団で寝てたらトランクスと肌着だけだもんなぁ、うんうん。良かった良かった。


 首を縦に振りながら良かった良かったと繰り返す。


「何故こうなったのか、まったくわからんな!!」


 そもそもここはいったいどこなのやら……


 周りを見渡すとそこは木


 木


 木


 つまり、木が3つで森だな


「森だ森……森としか言いようがないね。素晴らしいくらいに森だよ。ここまで森らしい森を見た事がない!!」


 空気も澄んでいておいしいし、木漏れ日が緑を明るく照らしていて、ふつくしいくらいだ。


 そんな時だ。スマートフォンが震えた。


「おお、すげぇな。αμ(あるふぁみゅー、断じてえーゆーではない)電波バリ三じゃねぇか」


 メールが来ているので、それを開いてみる。


「えっと、なになに……」



 世界№NdfH1970A 魂№ZLaOe29810M 肉体№eloaAEF13209345M 様


 この度はご当選おめでとうございます。


 貴方は栄えある異世界来訪者に選ばれました。


 その世界で何をするのも貴方の自由です。


 新たな世界をお楽しみください





「なんじゃ~~こりゃぁぁぁ!!?」




 思わず、叫んでしまった。


 あ、またメールだ……




 追伸、なにもない状態では不便だと思いますので、お客様の持ち物をすべて改良、レジェンド化させていただきました。


 詳しくはお持ちの小型端末のアプリにてご確認ください





「レジェンド化ってなんやねん……あれか、伝説の武器か?」


 まあ、そんなことよりもアプリだアプリ……えっと……とりあえず、この人の形のアプリを、起動させてみよう


ユキト・アイサカ

伝説の浮浪者

旅人Lv1


HP1255/1255

MP322/322

ATK591

INT202

HIT382

DEF391

RES246

SPD327


伝説の布の服

伝説のカーゴパンツ(ダークグリーン)

伝説のミリタリーブーツ(鉄板入り)

伝説のミリタリージャケット(カーキ)

伝説のトランクス





 ……………………………………





「なんじゃ~~~こりゃぁぁぁ!!? はっ!? 二度ネタはあかんわ」


 と言うよりも、ステータス高すぎだよ。いや、まあ、嬉しいけどね!! よくわからない異世界とやらで生きてかなきゃいけないんだから!!


 あれだな、チートだチート!! チート乙!!


「…………伝説の浮浪者」


 浮浪者って……しかも伝説……あ、目から汗が……


「でも泣かない!! だって男の子だもん!!」


 ひゅ~っと冷たい風が吹いた。


「しくしくしく、さむいよぅ……ああ、ホント心が寒い」


 あ、本当に涙が……


「まあ、いいや。次だ次……」


 スマフォの画面には今まで使っていたアプリは消えており、すべて知らないアプリに変わっていた。


 その人の形をしたマークはステータス、本のマークは図鑑、カメラで撮るとその図鑑に詳細も記載されるらしい……便利だ。あとカバンのマークは持ち物ってことらしい……取り出すを選択するとトラックに轢かれる前の持ち物が確認できた。すべて「伝説の~」になってるが……なんだよ、伝説のチョコレートって……あとしまう時は、カメラが起動してピントを合わせて写真を取るとしまえるらしい。


「……すごいなスマフォ」


 他にもフラスコのマークやら剣のマークなんかがあったが、なんも載ってなかった。


「まあ、なんにしてもだ……これからどうすっかなぁ」


 地図の書かれたアプリを起動させて地図を開く。


 そこには灰色の大地と一部緑色の大地、そして青い海が描かれていた。一一歩踏み出すとその緑色の大地が灰色の大地へと侵食して行くことから通った場所だけが地図として表示されるらしい。


 画面を縮小させて全体画面を見ようとしたが、今いる一部の地域しか表示してくれない様だ。


「とりあえずは森を抜けよう。問題は海を目指すか、それとも反対側を目指すか……だが」


 海だな。海岸沿いを歩いて行けば少なくとも漁村があるはずだ。


 そう考え、俺は歩み始めた……




 ……………………




 マップを開いたまま歩いてかれこれ3時間近く……というか今、三時間経った。


 手に持っているのはスマフォである。おそらく伝説化された際に時間もこの世界基準になったはずである。


 現在時刻は12時と昼飯の時間……小動物などの気配はあるが穏やかな時の流れを感じるこの場所でのんびりと飯にするのも悪くないだろう……


 カバンのアプリから伝説のポテトチップスを取り出す。


「…………すこし、怖いぞ」


 チップ☆と書かれた紙の入れ物の蓋をあけ、中身を取り出してポテトチップスを一枚手に取る。


 そして恐る恐る口にすると……


 パリッっと香ばしいスナック菓子特有の歯ごたえにうっすらと感じる塩味がジャガイモの味を引き立てる。


「うん、普通のポテチだ」


 良かった良かったと頷きながら食べ進めて行くうちに不思議な感覚に襲われる。


 なんと言うか……そう、力強くなったような、そんな感じ


「……なるほど、流石は伝説……」


 ステータス画面を開くと……そこには


 ATK606


 の文字……前に見たときよりも15UPしているのだ。


 ついでに図鑑を開いて伝説のポテトチップスとNEWと点滅している文字に触れて説明文を開いてみる……カバンのアプリに入れてある物も勝手に記載されるのだ。


「まったく、なんてチートアイテムだよ」


 そんなことを呟き上がらもポテチを食べるのはやめない。


 暇つぶしに説明文を読んでいると……


 ポテトチップス一枚に付きATK1上昇


「ぶほぁ!!?」


 もう一度ステータスを確認してみたら……本当に上がってた。


「もう一度言う!! なんだこのチートアイテム!!?」


 大事なことなのです。はい



 驚きで胸いっぱいになったので歩く事を再開するのだが……そこでとある事が気になった。


 SPDを上げるアイテムもあるんじゃないかと……


 つまりは移動時間の短縮だ。


 町に行けばそれこそ普通の食事を食べることが出来るだろう。


 伝説級の食材を食べるのは、なんというか心臓に悪いのである。


 と言うことで図鑑を開いて説明文からSPDの上がるアイテムを探してみる。


 キーワード検索から調べたところ……


「ふっ……伝説のチョコレートか」


 ちなみにパッケージはギョロちゃん(断じてキョではない)だ!!


 そのチョコのボールを一個食べればSPD2上昇である。


 そのチョコを食べる前に今現在でどのくらいの速さで走れるのか確認してみようと思う。


 これでもし今までと同じくらいの速さだったりしたら、あの数値はなんだったんだろうなぁ


 などと考えつつも気軽に走った瞬間


 ドンッと地面が爆発したかのような衝撃とともに視界が加速した。


 ビュンビュンっと風切り音をたてながら木々が通り過ぎて行く。


 少なく見積もっても前の世界の時の倍のスピードが出ている。それでいて未だ全開じゃないって言うね……


「マジでホント……ありえんわ……」


 ギョロちゃん食べる必要ね~


「俺はぁ!! 風になるぅぅ!!」



 

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