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方城時雨の奇妙でイカれた学園生活  作者: 水面出
間章-Collaboration-
42/46

Collaboration EpisodeⅠ 呼び起こされるは、メイドの記憶

今回から間章としてデルジャイル様の作品、『神様√に入りました。』とのコラボが始まります。


第二章の方は、もうしばらくお待ちください。


先に『神様√に入りました。』をお読みになられると、この話がもっと楽しめますので、読むことをお薦めします。

以下がそのURLです

http://ncode.syosetu.com/n3030z/


では、コラボ回、楽しんでいただけたら幸いです。



 七月中頃、多少苛立ちを感じさせるくらいのむし暑さの中、とある学園の一室。異様な光を灯した二人の少女の視線が交錯していた。

 張り詰めた空気を漂わせ、互いに互いを鋭い眼光で牽制し合う。そんな膠着状態がもう十分も続いている。

「ぐぐ……!」

「…………」

 焦燥に満ちた表情で呻く一人と、感情が読めない無機質な瞳でそれをじっと見据えるもう一人。その周りにいる者たちにも、どこか緊張感にも似たものが流れている。

 その者たちの表情もまた様々だ。

 何かを楽しみにしているように見入っている者もいれば、割とどうでもよさそうな者もいる。さらには先刻から絶えずニコニコとした微笑を浮かべている者なども。

「うぅ……一体、どっちにすれば……!」

 額に冷や汗を浮かべながら、究極の選択を迫られている少女はは今にも泣きそうな表情で呟く。その視線の先にあるのは、

「……出雲いずも、早く引いて」

「そんなこと言ったって――」

 大分ウンザリとした気色が見受けられる無表情少女――癒乃ゆのが持っている二枚のトランプを前に、出雲は何回目か分からない喚き声をあげる。


「どっちがババなのか分からないんだもん~!」

 

 楽園部の今日のゲームは、トランプゲームで知らない者はいないババ抜きである。

 楽園部員全員が参戦していたのだが、まず初めにいつもの如く水無月みなづき先輩が驚異的スピードで一抜け。その次に抜けたのが俺。次がこよみ先輩、杏奈あんなという順。そして今残っているのは毎回ちゃっかり上位に入っていたりと、中々油断できない癒乃と、現在部活のゲームで五九回連続ビリを取るというある意味すごいことをしている出雲の二人。

 普通ならばどちらが勝つかワクワクしながら見物もできるというものなのだが、いかんせんメンバーがメンバーだ。今回も勝負は見えているだろう。そう思っているのは多分俺だけではないと思う。

 だが、出雲の方はそんな風に思われるのは心外極まりないらしい。「今日こそはビリから抜け出してみせるんだから!」とかなんとか、部活前に言っていた。

 そして今、物凄く追い込まれている状況な訳だ。出雲は元来ポーカーフェイスというものが下手、というよりできない。故にコロコロ移り変わる表情から簡単に行動を読まれる。その点、癒乃はポーカーフェイスの達人と言っても差し支えないレベルだ。どっちの勝つ確立が高いかなんて目に見えて分かるのだが、出雲の名誉のためにここはあえて気にしないでおく。

 そんな二人の長きに渡る戦いも、終わりを迎えようとしていた。出雲はまだしばらく迷っていたが、やがて意を決したらしい。

「むむむ……、こっちだーっ!」

 大仰な掛け声と同時に目がカッと見開かれ、癒乃が持っている二枚の内左の方へと手を伸ばす。

「――と見せかけてこっちーっ!」

 と、寸前で向きを変え、シュバッ、と効果音をつけたくなる様な大振りな動きで右のトランプを取る。

 瞬間、癒乃の口が微かに緩んだような気がした。

「………………………………………………………………………………………………………」

 振りぬかれた右手が持っていたトランプに描かれていたのは、よくありそうなデフォルメされた悪魔の絵。

 つまりはジョーカー。

 部室中に響き渡る悲鳴をバックに、六〇回連続ビリ達成おめでとう、と心の中で出雲を讃えておいた。


「結局、今回も出雲ちゃんがビリだったわね」

「そうですね、いつも通り」

「先輩方、やめてやってください。出雲が部室の隅で重苦しい空気纏ってますから」

 苦笑交じりでコメントし合う二人の先輩に俺は割りと真面目に釘を刺しておく。そうでもしないと、現在進行形で失意のどん底に落下中の出雲がさらに急直下で落ちていってしまう。そんなことになっては流石に可哀想な気がする。

 一方、杏奈の方はしょぼくれている出雲になど最早目もくれず、部室にあった大量の知恵の輪(おそらく水無月先輩が持ってきたもの)と苦い顔で格闘している。最近これにはまっているらしいが、どうも得意ではないらしく途中で挫折しては再挑戦の繰り返しだ。

 一度俺が目の前でひょいひょいと解くのを見せたら、何故だか涙目で睨まれたことがあるので、手伝いはしないつもりだ。

 そして癒乃はというと、部屋の隅っこに体育座りで意気消沈している出雲の頭を撫でながら、いつも無感動な瞳に少しだけ気の毒そうな色を見せて励ましていた。

 ゲームで負かした本人が励ますというのは一体どういう了見だとツッコミたいところだが、厚意でやっているようなので放っておくことにする。

「……元気出して」

「うぅ……癒乃ちゃんに言われるとなんだかすごく惨めな気持ちになってくるよ……。なんでかな……?」

「……さあ?」

 うん、こいつらやっぱりバカだ。

 と、そこでふと時計を見た水無月先輩が何かに気づいたように声を漏らす。

「あら、もうこんな時間じゃない。そろそろお昼にしない?」

「そうですね、確かにお腹が減ってきました。……最近は減量中なので特に」

「え? 何か言った、暦?」

「いえ、何でもありませんよ」

 怪訝そうに首を傾げる水無月先輩に、暦先輩はいつも通りの柔和な笑みを浮かべながら何かをはぐらかすように言葉を返す。

 ものすごく小さな声で何かを言っていたような気がしてたんだが、やっぱ気のせいか?

「ぐぐぐぐぐぐぐ……! あーもうっ、無理! 何が知恵の輪よ、こんなのやっても知恵なんかつく訳ないじゃない!」

 知恵の輪が解けないイライラがついに頂点に達したのか、杏奈は癇癪を起こしながら知恵の輪をテーブルに乱暴に叩きつける。そういうのはテーブルが傷むからやめて欲しいのだが、触らぬ神に祟りなし。今の杏奈はそっとしておいた方がいいだろう。

「あーやだやだ、頭使ったらお腹空いた! ランチにするわよランチに!」

「焦るなっての、一言でメシって言ってもどうするか決めなきゃいけねえだろ」

「食堂でいいじゃない」

「……今日は、食堂休み」

 不機嫌そうに漏らされた杏奈の言葉に、いつの間にやらこちらに来ていた癒乃がそう答える。それに対し杏奈はおよそお嬢様らしくない苦い顔を見せる。

「今日は休日ですし、食堂の方々が偶然全員休暇をとっているんですよ」

 癒乃の発言に付け加えるようにして暦先輩が続ける。杏奈はさらに顔をしかめ「コックが全員休みとかなに考えてんのよしっかりそこんとこ調整しなさいよバカじゃないの光天寺学園……」という風にグチグチと文句垂れ流し状態になった。

「うーん……光天寺学園がバカかどうかは後にして、確かに食堂が使えないのは由々しき事態ね。そうなるとどこかへ買いに行くか、それとも食べに行くかの二つになるけど……」

「私は買いに行くのは嫌ですよ?」

「あたしも拒否」

「……私も」

「俺も無理」

 次々と浴びせられる自分勝手な発言集に流石に水無月先輩は呆れの色を強くしたが、すぐに元の困った表情に戻る。

「皆いやなのね……まあ私も嫌なんだけど。流石に今の出雲ちゃんに頼むのは気が引けるし……、どうしようかしらね」

 むむむと考え込む水無月先輩。そこに、少々予想外の人物が口を挟んだ。

「あの……私、美味しい料理屋さん知ってますよ……!」

「へ? あ、出雲ちゃん。復活したのね」

 隅っこでいじけていると思ってた出雲が、いつの間にやら元気を取り戻して俺たちの輪の中に加わっている。前から思ってたけど、こいつってめちゃくちゃタフなんじゃないかと思う。主に精神的に。

「なに、あんた復活したの。てっきり地獄の最下層くらいまで沈んでると思ってたのに」

「ひどいっ!? いくらなんでもそこまではないよ!? ……落ち込んでたのは確かだけど」

「まあまあ、今はもうその話はいいじゃない。それで出雲ちゃん、美味しい料理屋さんがあるって本当?」

 杏奈の手厳しい言葉に反応していつものようにコントを繰り広げる出雲に、水無月先輩が尋ねる。

「はい! 前に家族で行ったんですけど、そこで食べたから揚げがすごく美味しくて! もし良かったら私、案内しますよ!」

「……から揚げ、食べたい」

 出雲の言葉を聞いた途端に、癒乃の無感動な目がキラキラと輝き始める。何とも単純なヤツだ。

「から揚げね、うん! 良いんじゃない!」

「まあ、特に食べたいものがあった訳じゃないしね」

 水無月先輩と杏奈も特に文句は無い様子だ。暦先輩はなにやら「カロリーが……」とか何とか呟いていたが、とりあえず問題は無いようだった。

「せっかくだし、千里せんり君も誘ってあげましょうか」

 水無月先輩のその提案にも、反対する者はいなかった。


 ***


「「「で?」」」

 人通りが少ない道の一角で、非難を込めた声と共に複数の視線がただ一人へと向けられる。

 視線を向けられている者――出雲はそれに対しびくりと肩を震わせ体を縮こまらせている。

「ねえ出雲、その美味しいから揚げ屋さんとやらにはいつになったら着くのかしら?」

「え、えーと……」

 鋭い睨みが利いた杏奈の目に射抜かれ、出雲はさらに声をを小さくしていく。

 この大バカ野郎、どうも道に迷いやがったらしい。学園を出て、電車を乗り継ぎ近くまで来たところまでは良かったのだが、その後はボロボロ。何度も首を傾げながら携帯の地図とにらめっこの連続だ。

 そのまま三〇分ほどの時間が経って、今に至る。

 もちろん、そんな状態になれば俺たちの不満も募っていく訳で、さっきから俺たちの空気は真夏の気候とも相俟ってじめじめしたものになっていた。

 特に杏奈と暦先輩は度々不平を口に出したりするので、出雲は最早半泣き状態だ。

「あぅ~、おっかしいな~……確かにこの道で合ってた筈なんだけど……」

「合っていないのだから迷っているのでしょう?」

「あぐ……っ」

 今度は暦先輩のキツイお言葉が出雲に突き刺さる。流石に可哀想になってきたな。

 そう思いフォローしてやろうと思ったが、そこで千里のヤツが口を開いてきた。

「まーまー、そこんとこで勘弁してやっちゃってくださいな先輩。出雲だってわざとやったワケじゃないんすから」

「もしわざとだったのなら今頃ただの肉片にしてます」

「おおふ……恐ろしいことを言うなー……」

 真顔でとんでもないことを言う暦先輩に、千里は若干表情を強張らせながら冷や汗を流す。

 「暦先輩がこんななのはいつものことなんだから、いちいち気にしてたら身が持たないぞ」と言いたいが、そんなこと言ったら暦先輩にホントに肉片にされそうなので黙っておく。

 そこで、今まで困った顔で唸っていた水無月先輩が口を開く

「それにしても、流石にこのまま迷ったままじゃまずいわよね……。私と暦はこのあたりの地理には詳しくないし……時雨君、どうにかならない?」

「なんで俺に振るんですか」

「だってなんとかしてくれそうじゃない?」

 どんだけ身勝手な理由だ。そして何故疑問系なんだ。

 だがそうは言っても、確かに水無月先輩の言うことも一理ある。このまま昼食おあずけなんてことになるのはゴメンだ。

 なので、

「よし、癒乃」

「……?」

「この辺りで『美味しそうなから揚げ』の匂いを発している店を捜して、それを追ってくれ」

「ち、ちょっと時雨君……そんな犬みたいなこと癒乃ちゃんに……」

「……分かった」

「ってできるの!?」

 流石俺、ナイスアイディアだ。


 そんなこんなで、目的地到着。

 俺たちの眼前にそびえるは特に大きくもなく色合いも普通な店構え。壁も少し薄汚れていたり、『揚げ物屋きらら』と書いてある看板もところどころ煤けていたりと、結構年期が入っている。

 うん、こういう感じの方が逆に隠れた名店って感じがしていいよな。

「本当に着いちゃったの……」

「驚きです」

「というか、私としては癒乃がそんなスキルを持ってたことに驚いたわ」

「恐るべき食欲、というべきかねーこれは?」

「……簡単なこと」

 皆癒乃に対して感心と驚愕の念を持っているようだ。

 うん、というか命じた俺自身も驚きだよ。まさか本当に料理の匂いを捜してそれを追えるとは……なんかもう形容する言葉すら見つからない。

 癒乃のやつは一体どれ程の面白スキルを持っているのやら。今度全部見せてもらうか。

 とりあえず、ここでいつまでも立ち話してる訳にもいかないので、中に入ってみることにした。

 これまた今にも壊れそうなほどにボロい引き戸をガラガラと開けると、店の外装通り少し寂れた雰囲気の店内が目に入る。だがそれと同時に、食欲を掻き立てるような香ばしい匂いも感じた。

 また、揚げ物をするときに出る油の跳ねる音が店内に響いてそれもまたどこと無く心地良さを感じさせる。

 うん、これはマジでいい感じの雰囲気だ。これなら出雲が言っていたから揚げも期待できるだろう。

 と、そこで奥の方のカウンター席から何やら騒がしい話し声が聞こえてきた。どうやら先客がいたらしい。

なごみ先輩、ここのから揚げホントに美味しいですね!」

「うむ、そうだろう! 何せ私が見つけ出した隠れた名店なのだからな!」

「確かに、この辺りにこんな店があるなんて全然知らなかったわ」

「一体どういう風に揚げれば、こんなに香ばしさが出るんでしょうか……?」

「なんかコツとかあるんじゃねーのか?」

「たとえあっても教えてくれなさそうだけどな」

 声の数から察するに六人の男女の会話のようである。また、その声色からもなんとなく互いを信用している雰囲気が感じられるから、おそらく仲は大分良いのだろう。

 だが、俺が引っかかったのはそこじゃない。

 最後の方に聞こえた二つの声、どこかで聞いた覚えがあるような気がしてならない。というか確実に聞いたことがある。これでも記憶力は良い方だからな。

 と、そんな疑問を感じたのは俺だけではないらしく、出雲と杏奈もどこか不思議そうに首を傾げていた。

「なんか……聞いたことある声がする」

「そうね、主にメイド関連についての記憶が呼び起こされる声だわ」

 出雲は未だピンと来ない顔をしていたが、杏奈は既に見当がついているらしく、少し嫌そうに顔をしかめる。うん、まあその気持ちは結構分かる。傍目から見ればアレ・・はただの変態だったからな。

「……? 何のこと……?」

「ふんふん、何やら面白そうな予感がするなーオイ。こりゃ見逃せないな~」

「私たちが話の蚊帳の外というのは感心しませんよ?」

「そうよ、一体何のことなのか教えてちょうだい」

 あの時・・・あの場・・・にいなかった四人(というか癒乃と千里に至ってはそもそも出会ってすらいない)は、俺たちの会話の意味が分からないらしい。癒乃はいつもの如く無感動な表情で首を傾げ、千里は楽しそうな含み笑い。暦先輩と水無月先輩はやや不機嫌そうに眉根を寄せている。

 やれやれ、自分勝手なヤツ等だ。

「いやまあ、説明しなくても、どうせすぐに謎は解けるとおもいますよ」

「「「?」」」

 依然怪訝そうにする癒乃、水無月先輩、暦先輩はもうめんどくさいから放っておく。

 なぜなら、そろそろあちら・・・の方も気づくはずだからな。

「ん? ……なあ響、なんか聞き覚えのある声がしないか?」

 無地の白シャツに赤のフード付きパーカー、濃い青のジーンズという割と普通の格好をした、六人の中で唯一の男が何かに気づいたかのように声をあげる。

「そーか? 気のせいじゃねーの?」

 対し、その左隣に座っている金髪ストレートロングの少女はその鮮やかな碧眼にやや怪訝そうな光を浮かべて少年に言葉を返す。

 それに続き、右隣に座っている明るい茶髪のツインテールの少女もから揚げを掴んでいた箸の動きを止めて、その少年の方へ目を向ける。

「なによ冬夢、何かあったの?」

「いや、ちょっと知り合いの声が聞こえたような気がしたんだけど……うん、響の言うとおり、気のせいかもしれないな」

「気のせいじゃねえよ、このメイド狂いが」

「あれ、なんか俺いきなり罵倒された!? いや確かにメイドは好きだけども! ……って……方城?」

 若干、というかかなりの衝撃を受けたかのような顔で勢いよく振り返ったその男は、俺の顔を見るや否や心底不思議そうな表情で固まる。なに人の顔見て固まってんだこの野郎。

 そんな失礼極まりないこの男の名は一ノ瀬いちのせ冬夢とうむ

 もう周りがガチ引きするくらいメイド好きなヤロウだ。

 以前、一ノ瀬と先ほどの金髪ストレートロングの少女――善家ぜんけひびきが出雲と杏奈の元へメイド服を届けに来た時に起きた騒動で知り合った。あの時のことは忘れもしない。なにせこのアホンダラを助けるために空巻先生をわざと怒らせたからな。いやホント、あの時はヒドイ目にあった。

 何だっけ、第一次メイド大戦? だったよな確か。うん、今思い出してもくだらなすぎるわ、あれは。

「あーっ! そうだそうだ、そうだよ! 一ノ瀬君だ、一ノ瀬君! 久しぶりー!」

「へ? ……えーと、確か、天崎あまさきさん? それに標部しるすべさん、もいるな。……っていうかなんでここに?」

「それはこっちのセリフって言いたいところだけど、まずはそっちとこっちの話のついていけない人たちに事情説明するのが先決じゃない?」

 そう言って、やや呆れたように杏奈が目で差した先には、様々な感情が混ざり合う複雑な表情のヤツ等。

「お、おい冬夢! どういうことか説明しろ!」

「そうですよ冬夢先輩! この女の人たちとは一体どういう関係なんですか……!」

「まさか……他校の人も……!? そんなことって……!」

「よく分かりませんが、何だか盛大な勘違いをされてる気がしますね」

「っていうか説明して欲しいのはこっちもなんだけど?」

「……?」

 なんかもう、色々とカオスな展開になってきたので、杏奈の提案通り説明から始めたほうがよさそうだ。

 そう思った俺は、内心非常にめんどくさいと思いながらも、事情が分からない者たちに説明を始めた。


はい、どうも、水面です。


今回から数回、間章として、デルジャイル様の作品『神様√に入りました。』とのコラボ回になります。

本編第二章の方は申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。


〈出雲〉「最初だから、あんまりコラボ色は濃くなかったね」


〈杏奈〉「そうね。まあ仕方ないんじゃない?」


〈癒乃〉「……そう思う」


〈水無月〉「さてと、これからどんな展開になるのかしらね?」


〈暦〉「正直、あまり興味はありませんね」


それじゃ、早速トークへと参りましょうか。


〈出雲〉「えーと、最初のテーマは……毎度おなじみATKさんから私達五人へ、『魔法使いになったら?』だって。なんか楽しそうだね! 私は、うん、やっぱり雑用とかがかなり楽になるよね!」


〈癒乃〉「……美味しいものを沢山出す」


〈暦〉「癒乃ちゃんは今日も平常運転ですね。私は……そうですね、魔法があればミナにもっとバリエーション豊富ないたずらができますね」


〈水無月〉「なんでそんな下らないことに使ってるのよ! ……私は……惚れ薬、とか……?」


〈杏奈〉「外道」


〈水無月〉「あっ、もももちろん冗談よ!? ちょっと言ってみただけで……!」


〈杏奈〉「ふん、まあいいわ。で、えっと、あたしは……その……」


〈出雲〉「どしたの杏奈ちゃん?」


〈杏奈〉「えっと……魔法使いになったら……空を、飛ぶ、とか……」


〈暦〉「まあ、スタンダードな答えですね。ミナのよりは何十倍もマシです」


〈水無月〉「私をいじめてそんなに楽しい!?」


〈暦〉「はい」


〈水無月〉「即答なの!?」


〈出雲〉「でも、空を飛ぶっていいと思うな!」


〈癒乃〉「……夢がある」


〈杏奈〉「そ、そうね……。(ホントは魔法少女に憧れてるなんて絶対に言えないわ……)」


では次のテーマに行きたいので、全員一度控え室に行ってください。



退室中



はい、退室完了。代わりに来たのは、むさい野郎どもです。


〈時雨〉「誰がむさいだコラ」


〈千里〉「心外だなー。これでもクラスでは爽やか系男子で通ってるんだぜ?」


はっはっは、まあ気にするな。


〈千里〉「んじゃ、トークテーマだな。同じくATKさんから俺たちへ、『自分に一つ特殊能力がつくとしたらどんなのが良い?』だってよ」


〈時雨〉「そうだな……かなり迷うが……。シンプルに身体能力強化でいいんじゃね?」


つまんね。


〈時雨〉「うっせぇ」


〈千里〉「俺はアレだなー、概念をひっくり返す力がいいな!」


〈時雨〉「なんだそのチート能力」


〈千里〉「強そうだろ!」


〈時雨〉「いや、強えだろうけど……」


では、次のテーマに行きたいと思います。千里は一度控え室へ。代わりに暦さんを呼んできてください。


〈千里〉「りょうかーい」



退室and入室中



〈暦〉「私たち二人だけ、というのも珍しいですね」


〈時雨〉「そうですね」


では、早速テーマを。

同じくATK様からで、『出雲の闇病みモードと、水無月先輩のGD(ゴキブリデストロイ)モードのどっちが怖いと思いますか?』です。


〈時雨/暦〉「One more please?」


うぉっ! 二人同時で、しかも英語でとは!

ですからね上記のどちらが怖いかを――


〈暦〉「口を開かないでください。聞きたくありません」


〈時雨〉「二度と思い出させるなって言ったよな、オイ?」


おぉ、ふ……よっぽどトラウマになってるようで……。

これは私から代わりにお答えしましょう。


どっちも比べられないくらいに怖い、です。はい。


〈時雨〉「さあ、さっさと次に行っちまいましょう」


〈暦〉「そうですね」


はいはい。では控え室にいる方々、入ってきてください。



入室中



〈水無月〉「ねえ、どんなテーマだったの?」


〈暦〉「ミナは気にしなくて良いことです」


〈出雲〉「時雨、なんで私から目を逸らしてるの?」


〈時雨〉「気にするな」


〈癒乃〉「……それじゃ、次のテーマ。黒鉄侑次さんからで……『別世界の自分に出逢ったらどうする?』だって……。わたしは……一緒に美味しいものを食べる」


〈杏奈〉「それ答えになってんの? あたしは特にないわね。ていうか自分に会うとかなんか嫌なんだけど」


〈出雲〉「私はね、あのブラコン野郎をどうやったらこの世から抹消できるか相談するよ」


〈時雨〉「怖えよ。俺は、そうだな。ラノベについて語り合う」


〈千里〉「オタクかよ相棒。俺はな、可愛い女の子について深ーく話し合うぜ!」


〈暦〉「あなたの方がよっぽどオタクっぽいですよ。私は……特にありませんね」


〈水無月〉「私は体力勝負をしてみたいわね。どっちの私が強いか、試してみたいわ」


〈暦〉「バトルマニアですかあなたは」



はいはい、皆さん中々にくだらない意見ばかりですね。特に男二人。


〈時雨/千里〉「なんだとこの野郎」


まあまあ。

では、次のテーマにいっちゃいましょう。


〈時雨〉「えーと……三月語さんからで、『楽園部で麻雀をやった場合、真っ先にトばされる(持ち点がーになる)と思うのは誰か?』だってよ。実に俺たちらしいテーマだな」


〈千里〉「チョイ待ち。俺楽園部じゃねえんだけど」


〈時雨〉「知るか」


〈千里〉「そりゃねえよ相棒!」


で、誰だと思いますか?


〈時雨〉「出雲だな」


〈杏奈〉「出雲ね」


〈癒乃〉「……出雲」


〈水無月〉「これは出雲ちゃんに決定ね♪」


〈暦〉「言うまでもありません」


〈出雲〉「ええええぇぇぇぇぇぇぇっ!? 皆してひどすぎるよ!」


〈千里〉「どれだけ弱いか、目に浮かぶなー」


〈出雲〉「千里君まで!?」


とりあえずまあ、分かりきった答えでした。


では、最後のテーマです。


〈水無月〉「えっと、同じく三月語さんからね。『次のうち、絶対食べたくないのは?』だって」


「炊き込みいちごケーキご飯」

「フリスクピザ」

「冷製スイカパスタ」


〈出雲〉「うわぁ……」


〈暦〉「誰ですかこんな奇怪な料理を考えたのは」


〈杏奈〉「癒乃とか?」


〈時雨〉「有り得るな」


〈千里〉「だな」


〈癒乃〉「……わたし、こんなの考えてない」


まあ皆さん、とりあえず、一番食べたくないのを選んでください。


〈杏奈〉「果てしなく嫌な予感がするけど……あたしは、炊き込みいちごケーキご飯ね。他二つはともかく、これだけはホントに有り得ないわ」


〈水無月〉「私はフリスクピザかしら。味が全く想像できないもの」


〈千里〉「俺は炊き込みイチゴケーキご飯が嫌だな。危険な匂いがプンプンするぜ」


〈暦〉「私は冷静スイカパスタでしょうか。スイカ×パスタの意味が分かりません」


〈時雨〉「俺もスイカパスタだな。これは断固拒否だ」


〈出雲〉「私はフリスクピザがイヤかな。なんか口の中がスースーしそうだし」


〈癒乃〉「……わたしは、全部イヤ。こんなもの食べる人の……気が知れない」


〈癒乃以外全員〉(いや、お前が言うな)


はい、集計完了ですね。では、これから一番得票数が多かったのを「それを選んだ人」に食べてもらいます。


〈全員〉「は?」


集計結果は、炊き込みご飯が二票、ピザが二票、パスタが二票、全部をそれぞれ一票ずつと数えて……三つとも三票ずつですね。

ということで、三つとも一番多いので、それぞれを選んだ人全員に、食べてもらいまーす!


〈全員〉「………………………………は?」



その後一悶着あって、実食中。



〈時雨〉「かっ……、これは、スイカとパスタが絶妙にミスマッチして……まずい!」


〈暦〉「元々私はスイカはあまり好きではないのですから、こんなの拷問に等し――うぷっ……!」


〈出雲〉「なんだろう、ピザはすごく暑いのに口の中はスースーして涼しいや! とっても矛盾を感じる味だね!」


〈水無月〉「それ以前に普通にまずいわよ、これ! ……おえっ、吐きそ……」


〈杏奈〉「何なのよ……何なのよこれぇっ! どうして炊き込みご飯がこんなに甘いのよ!」


〈千里〉「いちごケーキが入ってるからだろーなー……やべっ、こりゃちょっと胃薬が必要になるかもなー……」


はっはっは、皆さん文句言いながらちゃんと食べてるじゃないですか。流石です。

……で、こちらのお嬢さんは。


〈癒乃〉「……三つとも、けっこう美味しい」


〈癒乃以外全員〉「やっぱりその味覚は理解できないっ!」



とまあ、こんな感じですね。

では、今回はここまでです。

トークテーマをくださった方々、ありがとうございました。


次回も、コラボ回の続きですので、お楽しみに。


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