表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
方城時雨の奇妙でイカれた学園生活  作者: 水面出
序章 -始まるは、日常-
40/46

ep37 暴走と狂騒

〈水無月〉「第37話よ♪」


〈薊〉「楽しんでいくのじゃ!」


〈暦〉「では始まります」

「ds■a◎klgb×●fo☆※▽uuV◯ZwwH◆□*Jr△gaAe★ssSsッッッ!?!?!?」

「ミナ先輩が地球外言語を喋った!?」


 ゴミだらけの理事長室に響くは最早悲鳴とも言えない水無月先輩の奇声と、それにつっこむ出雲の声だけだった。

 だがそれも束の間。

 次の瞬間にはもう理事長室は音という音が響き、渦巻き、ひしめき、ぶつかり合い、押し寄せるというとてつもない程に喧騒なものと化していた。

 水無月先輩が持っていた大きめのチェストが倒れてズドン! という音と共に床に沈む。

 そこら辺にあった掃除用の箒、モップ、雑巾、小物類、花瓶、その他様々な物が水無月先輩の手によって投げつけられガタンビタンパリンなどというこれまた様々な音を放つ。

 そして、


「おのれこのクソボケゴミカス畜生の黒い悪魔人類の敵がなにワタシの前に現れてやがるワタシがテメエを大大大大大嫌いだということを知っての狼藉かゴラふざけんなよこのヤロウよし分かったテメエがその気ならコッチも相応のコトをやってやろうじゃねえか覚悟しろやクズテメエなんざグッチャグチャのメッキャメキャのギッタギタのボッコボコに砕いて潰して叩いて折って畳んで捻って壊してブチ殺してヤルヨこのゴキブリ風情があああアアアアアアアアアアアアア!!」


 理事長室どころか学園中に響き渡る程に大音量な叫びを放つ水無月先輩の形相は最早人間のそれとは思えない。

 それは狂気とすらも言えないもの。

 まるで世にある負の感情を全て引っくるめてぐちゃぐちゃに混ぜ込んだような『何か』。今の水無月先輩はそんなことを思わせるくらいの状態にあった。

 その様子を見ていた者たちの反応はそれぞれだ。

 「はわわわわわわわわわ」とどうしようもないくらいにどうしたらいいか分からない声を上げて立ち竦んでいる出雲。

 水無月先輩の行動に驚きながらも咄嗟に部屋の中央付近にあった四角い木製テーブルを立てて、自分と隣にいた癒乃の身を時折飛んでくる流れ弾から防いでいる杏奈。

 杏奈と一緒にテーブルの陰に隠れガタガタと震えながら体を縮こまらせ、それでも怖いものを必死に我慢しようと唇をギュッと真一文字に結んでいる癒乃。

 部屋に響く轟音により気絶から目を覚まし、何が起きているのか全く理解できないながらも、度々飛んでくる灰皿やちり取りなどを反射的に当たるすれすれで何とか避けている千里。

 寝転がっていたソファーの上から飛び上がり、理事長室の遥か隅っこの方でうずくまりながら「あうあうあう怖いのじゃ~……」と弱々しい声を漏らす理事長。

 そして片手を額に当て、疲れたようにため息をつく水無月先輩の幼馴染み、暦先輩。

 今にも「あちゃ~……」という呆れ声が聞こえてきそうな様子だ。


「あー……、掃除をするのならこの可能性を考えておくべきでした」


 依然そこら辺にあるものをゴキブリがいたであろう場所に無差別に投げまくる幼馴染みを見て、眉根を寄せて難儀そうにぼやく。

 流石に暦先輩はこの現象を知っているようだが、さて一体どうなっているのやら。


「暦先輩……一体これはどうなってんですか……」

「いえ、まあ、簡単に言いますがね」


 水無月先輩が起こす騒音を背景に、暦先輩はポツリと言葉を放つ。


「嫌いなんですよ、ゴキブリが」

「…………」


 やっぱりそうなのかと、その答えを内心でどこか受け入れてしまう。それでも、口からはそう簡単に言葉は出てこない。

 黙りこくる俺の反応に注目する訳でもなく、暦先輩は続ける。


「どれほど嫌いかと言うと、あのように発狂して破壊衝動に襲われるくらいです」


 どんだけだよ、とツッコミを入れたくなったが、実際にその現場を見てしまっているので何も言えなかった。


「ちなみに、止める方法は?」


 一応聞いてみたが、暦先輩は小さく首を横に振るだけだ。

 これは非常にまずい。理事長室の掃除の手伝いを頼まれたというのに、このままでは理事長室を丸ごと学園からキレイさっぱり『掃除』してしまうかもしれない。そんなことになったら、間違いなく空巻先生の手によって全員漏れなく血祭りにあげられてしまうだろう。というか最悪、それどころでは済まないということもある。


「どうにかして止められないんですか……?」

「無理ですね。ああなってしまっては私たちで止めることはまず不可能です。下手をすると巻き添えを喰らうことになります。自然に治まるまで待つしかありません」

「マジすか……」


 リアルにどうしようもない状況に、俺は心の底から辟易する。

 このまま理事長室が破壊されるのを待って、そのまま空巻先生に処刑されろというのか。逃げ場のない罰ゲームじゃないか。


「おいおい相棒、こりゃ一体どうなってんだよっ! 起きたと思ったらいきなり掃除道具と小物類の雨嵐だ! 避けるのも楽じゃないぜ!?」

「ちょっと、このままだとテーブルが持たないんだけど! どうにかしなさいよ!」

「…………怖い怖い怖い怖いっ……!」

「危なっ! 頭の上すれすれにランプが通ったよっ!? もうこれは時間の問題だよ!」

「怖い怖い怖い誰か誰か誰か助けて助けて助けてなのじゃーっ!」


 騒音渦巻く理事長室にさらに複数の叫声が飛び交う。水無月先輩が出す音と合わせると、すごい五月蝿さだ。流石に耳が痛くなってくる。

 が、そこで俺は水無月先輩が物をぶん投げまくって出している音に違和感を感じた。

 投げている物がある程度軽いものだったから音もうるさいだけで頭の芯に響くような感覚は無かった。だが今はそれがある。

 擬音で表すなら、ドガアン! とかゴグシャァ! とかドゴシャアァァ! とかみたいな、全体的に大分重みが込められている感じだ。そう、まるで重いものでも投げ飛ばしてるような音なのだ。


 それもその筈。視線を向けて俺が見たのは、実際に人一人の力では到底投げられそうにない重さのものを片手で軽々とブンブンと投げまくっている水無月先輩だったのだから。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ! グッチャグッチャに潰れろやゴミ虫がァ! 足一本残さず粉々にしてやるよォ! アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 最早狂っているとしか思えない叫び声をあげる水無月先輩の手から放たれるのはニメートルを越える大きさの観葉植物の鉢であったり、一人用の黒革ソファーであったり、本棚であったりと、とにかくヤバかった。

 もうヤバいとしか言えない。

 当然、投げられた物たちが無事である訳がなく、所々ひしゃげていたり砕けていたりバラバラになっていたりしていて、原形を留めている物など一つも無かった。

 理事長室の方も、床が軋んでいたり壁にひびが入っていたりと散々な状態だ。

 たかがゴキブリ一匹を処理するにはあまりにも大仰、というかオーバーキル過ぎる。

 ここまで来るとゴキブリの生死なんてどうでも良くなってくる。というかどうでもいい。

 そして、理事長室にあった物をほぼ全て投げきると、水無月先輩は『残っていた物』にニュッと手を伸ばす。


「……、……っ!?」

「ええっ!? 嘘でしょっ!?」


 杏奈と癒乃が盾として使っていた大きい木製テーブルをひょいと持ち上げる。驚愕を露にする二人のことなど全く歯牙にもかけず、投げる。

 ドゴワァッッ! という一際大きい音が響いた。

 盾として使われていたため、既に大分傷んでいたテーブルはその音を最後にただの木片と化す。

 だが、それでもまだ終わらなかった。

 水無月先輩が目を向けたのは最後に一つ残った、さっきまで理事長が寝転んでいた特大サイズのソファー。おそらく、この部屋にあるものの中で最も大きく重量のあるもの。

 つかつかと妙に安定した歩調で歩み寄り、ガシリと両手でそれを掴む。

 持ち上げる。

 大きく振りかぶる。

 そして、


「死にさらせや害虫があああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ありったけの力を込めたその叫びも、すぐに掻き消された。


 音が、爆ぜた。


 一瞬、鼓膜が破れたのではないかと思った。

 それほどの『音』。爆音、と言っても過言ではないだろう。それに音だけじゃない。襲ってきた衝撃の余波もかなりのものだった。すさまじい突風を真正面から体で受けたらあれぐらいのものを感じるのではないだろうか。立ってなどいられない。

 だがそれは、衝撃の余波に煽られてと言うよりは、ただ単に腰が抜けただけだと思う。

 その状態で、ソファーが爆散した衝撃によって勢いよく飛んできた本棚やチェストの瓦礫が誰にも当たらなかったのはもう奇跡と言っても良い。

 そんな中、ようやく水無月先輩の動きが止まった。

 こちらに背を向けているので表情を窺えないが、肩を上下させ荒い息遣いをしているところを見るに、少なくとも穏やかな気分ではないだろう。そこに、


「落ち着きましたか?」

「…………ぁ」


 暦先輩の呼び掛けで我を取り戻したのか、水無月先輩は小さく息を漏らし、もうもうと埃や煙が立ち込める中、そのまま力が抜けたようにぺタンと床に座り込む。 がくりと項垂れるその様子を見て、長いとも短いとも言えない、微妙な空気の沈黙が場を支配する。

 正直に言えば、かなりいたたまれない気分だ。周りの奴らも同じことを感じているようで、どうしたらいいか分からない様な困った顔をしている。……理事長は依然うずくまってガタガタと震えたままだが。

 そうやって俺たちが固唾を呑んで見守っている中、ポツリと水無月先輩が口を開いた。


「あーあ、またやっちゃったんだ……。ダメダメね、私」


 その声色にはどこか呆れの念が込められている気がする。おそらく、自分に対しての。


「たかがゴキブリくらいでこんな風になっちゃうなんて、情けないったらありゃしないわよ」

「仕方ありませんよ。あんな事があったのですから、嫌いにもなります。ところで、どこか怪我はありませんか、ミナ? まあ無いと思いますが」

「ご明察、丈夫な怪力女で悪かったわね。ったく、マメくらいできても良いのに……」

「ふふ、丈夫なのは良いことじゃないですか」

「……そうかもね」


 水無月先輩の顔から陰が消え去る。おそらく暦先輩の言葉のおかげだろう。

 それから、お互いを見合って小さく、それでいて朗らかに笑い合う二人。

 こういうところを見ると、二人は本当に仲の良い幼馴染みだということが分かる。互いを信頼しきっていないとこういう会話は成り立たない。こちらが見ていても非常に微笑ましく、温かい気持ちに――


 ――なる訳がない。


「「「ちょっと待てやそこの二人ぃぃぃイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」」」


 俺、出雲、杏奈、千里の四人の声が重なり、先ほどの水無月先輩の奇声にも負けないくらい大音量で理事長室に響き渡る。

 癒乃と理事長はそれに驚いたようにビクッと体を震わせ、水無月先輩と暦先輩は今にも「何事か?」と言ってきそうな、キョトンとした表情をこちらに向けている。

 その顔は、俺ら四人をさらに憤慨させる材料にするには十分なものだった。


「何二人で仲むつまじい感じで笑い合ってんだあんたら!? アホか? アホなのか!? それとも何ですか、俺らがおかしいのか!? この状況で仲良さそうにしてるあんたらより俺らの方がおかしいんですかね!?」

「仲良くするのは一向に構わないんですけどね、時と場所を考えてくれませんか!? インブロークン理事長室ナウですよ!? それともてめぇらにはそんな常識はねえってか! ぁあ!?」

「そんな微笑ましい光景誰も望んじゃいないのよっ! 今あたしたちに必要なのはこの場をどうにかする方法と、空巻先生から逃げ切る方法だけ! それをあんたら、バカでしょ! バカよね!? そうに決まってるわこのアホンダラ! 権力使って叩き潰すわよ!?」

「はっきり言うと事情はあまり、っていうかほとんど分かんないけどよ、これだけは分かるぜ! あんたらイカれてるってえの! この惨状をバックに微笑ましい茶番劇をご披露なさってんだ! こちとら死ぬかと思ったんだぜ!? 少しくらい気ぃ遣ってくれよ!」


 激昂。

 それ以外の言葉は似合わない。それほどの状態だった。

 何せ、出雲がいつもの口調からキレた時の口調になってるからな。これはかなり本気でキレてる。かくいう俺もそうとう頭にキちゃっているが。

 杏奈は今に火を吹くのではないかというくらいの形相だし、千里も「これは初めて会ったその日にマジギレしてんの見ちゃったんじゃね?」と思うくらい怒っている。

 まあ今更だがぶっちゃけて言ってしまえば、アホな先輩二人のアホな行動についキレちゃいました☆ って感じだ。

 だって仕方ないだろう。今の状況でキレるなって言う方が酷だ。

 まあもっと酷なのは怒ることも出来ず、俺らのキレっぷりに怯えながら理事長室の隅っこで互いに抱き合い涙目でガタガタと震えている幼女二人(うち一人は実年齢十五歳)なのだが。


「え……いや、その……」

「なんと言いますか……、あのー……えぇと……」


 俺らの怒りに驚愕半分恐怖半分といった顔で珍しく歯切れを悪くするアホ二人。

 対し俺らはギロリという擬音がつきそうなくらいにどすの利いた眼光を放ち睨み付ける。


「「「何か言うことはァ!?」」」


 「ひっ」とアホ二人の息を呑む音が聞こえ、また少し沈黙が流れ、そして――


「「……ごめんなさい」」


 畏縮しきった謝罪の声。

 俺はこの時、今ならマフィアのボスにも張り合えると思った。




「ホンッットごめんなさい! 迷惑かけちゃって!」


 背景に瓦礫の山を背負いながら、水無月先輩が心から反省しているといった様子で深々と頭を下げてくる。声色からも察するに、これは本気で謝っている。

 若干許しがたい出来事だったのだが、誠心誠意謝られて許さないとこちらが鬼みたいなので、かなり不本意なことではあるが、まあ許す。


「ったく、こっちはマジでビビったんですよ……」

「ごめんなさい! 私、ゴキブリ見ると頭ぐるぐるになって見境無くなっちゃう体質で……」

「そうは言っても、いくらなんでもいき過ぎでしょアレは……」


 呆れたように杏奈が言うが、途中でその「アレ」を思い出したのか、少し顔を青くする。多分これはトラウマになってるんじゃなかろうか。無理もない話だが。


「まあでもよ、今更何か言ったってしょうがねえし、水に流そうじゃねえか! 先輩も悪気があってやった訳じゃねえんでしょう?」

「ええ……まあ、そうね」


 湿っぽい雰囲気を晴らすような朗らかな笑いを浮かべる千里の問いに水無月先輩はおずおずと頷く。ちなみに杏奈が「これで悪気があったんならマジで権力使うわよ……」とか何とか言ってたが、気にしない。


「いやまぁ、私たちはまだ良いんですけど、あの二人が……」


 そう言って出雲が気の毒そうな視線を向ける先は、理事長室の片隅。そこに、小さくなっている影が二つ。


「う、うううぅぅぅぅぅぅっ……! ウチの、ウチの部屋がぁ……」

「……部屋、なんて……どうでもいいっ。助かっただけで……幸運……ぐすっ……」


 ……なんかもう、本当に可哀想としか言い様がなかった。

 水無月先輩は哀れすぎるこの二人を見て、どんな言葉をかけていいか分からず一瞬思案顔になるが、やがて思いついたのか癒乃と理事長のそばに歩み寄る。


「えーと……その、ごめんね? 怖がらせちゃったみたいで……」

「アホー! ごめんで済むかー! ウチはめっちゃ怖かったし、ウチの部屋もボロボロなのじゃ! ウチは今日からどこで寝泊りすればいいのじゃ!」


 謝罪の言葉をかける水無月先輩に、理事長室の床をバンバンと叩きながら噛み付くように言う理事長。

 癇癪とも言える理事長の怒りはとりあえず置いといて、確かに今の理事長室の状態はひどいもので、とても看過できるものではない。

 水無月先輩が無差別に投げたせいで部屋にあったものは一つ残らず砕けてただの瓦礫や木片になってしまっているし、壁や床にも大きなひびが何本も入っている。さっきからミシミシと嫌な音も聞こえているし、正直、いつ部屋ごと崩れてつぶれるか分からない状況だ。

 空巻先生がいつ襲来してくるかも分からないし、できればさっさとここから立ち去りたい心境なのだが、どうもそういう訳にはいかないらしい。


「ねえ、時雨……」


 ある場所を見ていた出雲が顔を青くして俺の方を向く。


「ドアが……塞がってるんだけど……」

「「「あ」」」

 

 その事実に気づかされた俺たちは思わず声をあげる。

 そう、水無月先輩が投げたモノの残骸は、理事長室のドアすらも塞いでしまった。これじゃあ脱出どころではない。

 一応、積み上がっている瓦礫の山を一つ一つ取り除いていくという手もあるのだが、そんなことをしていたらその間に部屋が崩れるかもしれない。そんなことが起きたら脱出不可どころか最悪全員デッドエンドだ。

 助けを呼んでみるという手は最初からアウト。最初に間違いなく空巻先生が来て、これも全員デッドエンド確定。

 ちなみにここは六階なので、窓から逃げるのも無理だ。

 つまりはこの状況、完全に八方塞がりな訳である。


「ちょっと、これヤバイんじゃないの?」

「そうですなー、俺的観点から見させてもらっても今の状況はかーなーりまずい感じだと思うぜ?」

「えぇぇ!? 杏奈ちゃんも千里君もなんでそんなに落ち着いていられるの!?」


 どこか余裕を感じさせる物言いをする二人に、出雲は顔を青くしたまま驚愕の声をあげる。


「「なぜって、そんなの……」」


 そんな出雲の言葉に当の二人はどこか自嘲気味な笑みを浮かべると、


「「落ち着いたフリでもしてなきゃこんな状況やってられないんだっつーの!」」


 やっぱり二人とも焦っていた。


「どうするんですかミナ。これはちょっと本気で洒落になりませんよ」


 流石に暦先輩も焦りを感じ始めてきたのか、若干顔色を悪くしながらこの危機的状況を作り出した元凶である水無月先輩にやや糾弾するように言う。

 対し水無月先輩は困った顔になり、


「私に言われても……、いやあの、私が悪いんだけど……」

「無責任なこと言うななのじゃアホー!」


 リアルに無責任なことを言う水無月先輩に今回一番の被害者である理事長がキレて涙目混じりに喚き散らす。そしてそのまま、水無月先輩に掴みかかろうとした時、不意にびくっと体を震わせ動きを止めた。

 それを見て疑問に思った時には、もう『来て』いた。


 瞬間、俺たちは全身に強烈な悪寒が走るのを感じた。


「あ……やば、くね?」


 来た。


「ちょっと……どうすんのよ……!」


 来てしまった。


「あわ、あわわ……」


 何よりも恐ろしいものが。


「……絶体、絶命」


 恐怖そのものが。


「ミナの……ミナのせい、ですからね……」


 すぐ、そこに。


「そ、そんなこと言っても、もう……」


 気づけば、俺は無意識に叫んでいた。


「全員ドアから離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 直後、理事長室のドアが瓦礫ごと吹き飛んだ。


 

はいどーも、水面です。


〈出雲〉「天崎出雲です!」


〈杏奈〉「自己紹介いらなくない?」


〈暦〉「何事も礼に始まり礼に終わる、ですよ」


〈癒乃〉「……難しい言葉。すごい」


〈水無月〉「大して難しくないわよ」


時間短縮のため、今回は初めからゲストをおよびしています。

それでは無駄話は無しにして、早速最初のテーマへと行きましょうか。


〈暦〉「一つ目は……三月語さんの作品『少年少女の青春模様』の華奈多さんからです。『私ができる範囲に限らせてもらうけど、私に作ってほしいもんあったら言って?』だそうです。ちなみに、実際に作るかどうかは彼女の食指が動いたら、みたいですが……」


〈出雲〉「効率よくダイエットできる機械を是非!」


〈水無月〉「成績アップにつながるような機械をお願いするわ!」


〈杏奈〉「豊胸作用的な何かがある機械は!?」


〈癒乃〉「……成長ホルモンを増やす薬が欲しい。けど……無理は言わない」


〈暦〉「皆さん凄まじい食いつきようですね、作ってもらえるかどうか分からないというのに。ちなみに私は特にありません」


一部切実な願いも混ざっていましたが、そこは気にしない方向で。

では次のテーマへ。


〈水無月〉「二つ目は同じく華奈多さんからで「今一番の悩み」ね。そうね……時雨君が鈍すぎることかしら……」


〈杏奈〉「右に同じね」


〈出雲〉「私もかな」


〈癒乃〉「……わたしも」


〈暦〉「なんとまさかの四人同じですか。まあ、確かに時雨君の唐変木っぷりは最早笑えるものがありますが。ちなみに私は……」


〈水無月〉「体重じゃないの?」


〈暦〉「……………………ええそうですがいけませんかなにか問題でもありますか女子として当然の悩みだと思うんですけど文句でもあるんですかミナ?」


〈水無月〉「ないです……」


〈出雲〉「ついに開きなおったね、こよみん先輩」


〈杏奈〉「言っちゃだめよ」


〈癒乃〉「……良いことある。きっと」


〈暦〉「後輩に慰められる私って……何なんでしょうか……」


まあ元気だしてくださいな。

そんじゃ次のテーマへ。このままやっちゃいたいと思います。


〈出雲〉「えーと……ATKさんの作品『四神伝奇 ~現代封魔戦記~』の、秋西麗ちゃんから杏奈ちゃんとミナ先輩へ。「鈍感な時雨を殴り倒したいと思ったことがあるか?」だって」


〈杏奈/水無月〉「大いにあるわ」


〈出雲〉「うわ、ハモった」


〈水無月〉「だって、ねえ?」


〈杏奈〉「というか、実際殴り倒そうとしたことならあったわよ。出雲に止められたけど」


〈暦〉「笑えるというか、それすら通り越して呆れてきますね、時雨君には」


〈癒乃〉「……時雨、すごい。色んな意味で」


はっはっは、それでこそ我等が主人公、方城時雨。

そんじゃ、次のテーマは時雨宛なので、とっとと呼んじまいましょう。


〈時雨〉「よぉ、呼ばれたから来たぞ」


〈出雲/杏奈/水無月/暦/癒乃〉「出たなMr.鈍感」


〈時雨〉「なんで来て早々そんなこと言われなきゃなんねえんだ!?」


そこは気にしちゃだめです。

そんじゃ、トークテーマを。


〈杏奈〉「同じく『四神伝奇 ~現代封魔戦記~』の東郷龍清から時雨へよ。「将来の事を考えたことはありますか?」だって」


〈時雨〉「ねえ」


〈出雲〉「はやっ!」


〈水無月〉「これ以上ないくらいに簡潔でつまらない答えね」


〈癒乃〉「……流石」


〈暦〉「癒乃ちゃん、それは遠回しに時雨君のことをバカにしてますからね」


〈杏奈〉「もっとマシな答えは無かったの?」


〈時雨〉「だってマジでねえんだもん」


もうつまらないを通り越して情けないんですけど。


〈時雨〉「ほっとけ」


まあいいでしょう……それじゃ、次のテーマへいきますか。

次は時雨と水無月さんが好きそうなテーマですよ。


〈時雨〉「なんだって? えっと……杉 御零さんからで、「もし中2な能力を持っていたらどんな名前の能力?その効果は?」……。マジか!」


〈水無月〉「面白そうなテーマじゃない!」


〈杏奈〉「中2な能力、ね……」


〈出雲〉「楽しそうでいいんじゃないかな」


〈暦〉「私もう高二なんですけど」


〈癒乃〉「……楽しそう……!」


癒乃さんの目がいつになくキラキラしてますね。

ってかお楽しみのところ悪いんですけど、既にこちらで考えちゃったんですよね。


〈時雨/水無月〉「何ですと!?」


〈暦〉「見事なハモリです」


〈杏奈〉「助かるわ。考えんの面倒だったから」


〈癒乃〉「……残念……」


〈出雲〉「癒乃ちゃんがものすごく残念そうにしてるんだけど……」


そんじゃまあ、ちゃっちゃとやっちゃいましょうか。


時雨の能力

全知全能ザ・ゴッド


知らないことは無く、出来ないことも無い能力。

もうぶっ飛びすぎて出てきたら確実に場がしらけるであろうチートのレベルを超えたチート能力。


天崎出雲の能力

空間歪曲マテリアルワインド


その名の通り、空間を歪曲させる能力。

捻じ曲げた空間を弾き飛ばしたり、捻じ曲げた空間を壁状にすることも可能。

空間そのものを歪ませるため、ガード不可の攻撃、貫通不可の防御を併せ持つというチート能力。


標部杏奈の能力

順番決定マニュアルルーレット


あらゆる事象の『順番』を自在に操ることができる能力。

応用性が非常に高いチート能力。


稲波瀬水無月の能力

完全破壊主義デストラクション


どんなものでも問答無用で『壊す』能力。

この世に壊せないものはありませんというチート能力。


沙良暦の能力

絶対解答アンサー


どんな問題に対しても、絶対に正しい答えを導き出せる能力。

これがあったらテスト楽勝だぜ! なチート能力。


魅鳴癒乃の能力

捕食限定オールイーター


何もかもを全て『喰らい尽くす』能力。

謎の多いチート能力。



以上で――


〈時雨〉「ってちょっと待てやああああああ!」


はい?


〈時雨〉「なんなんだこのチート能力軍は!? チートのバーゲンセールか!」


〈水無月〉「どれもこれもラスボス級に強いのばかりじゃない!」


〈出雲〉「うわ~、私たち強いね~」


〈杏奈〉「順番を決められる、ね。中々便利そうな能力じゃない」


〈暦〉「時雨君のなんか、登場したら確実に萎える能力ですね」


〈癒乃〉「……すごく、すごい」


まあいいじゃないですか。実際に出す訳じゃ無いんですし。


〈時雨〉「そういう問題かボケェ! チート過ぎる能力は二次元ではアウトなんだよ!」


はいはい分かりました以後気をつけます。


〈出雲/杏奈/水無月/暦/癒乃〉(絶対反省してない)


それでは、今回はここまでです。

トークテーマをくださった三月語様、ATK様、杉 御零様、ありがとうございました。

トークテーマと感想、いつでも受け付けておりますので、よろしくお願いします。


では……今回は次回予告はタイトルだけで。


次回 異常と日常




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ