ep26 金髪と碧眼
新キャラ登場です!
〈時雨〉「どんな奴か楽しみだな」
第26話、始まります。
「ロン!」
「いやあああああ!!」
稲波瀬先輩のその言葉に出雲は悲鳴をあげた。
今は部活の時間だ。
正直、入った当初はこの「楽園部」をすぐにやめたくなったが、続けてみると意外と面白い。
部活内容が毎日「ゲーム」だからだ。
カードゲーム、テレビゲーム、ボードゲーム。
とにかく色んなゲームをしている。
やるゲームは部長である稲波瀬先輩が好き勝手決めている。
正確に言うと、楽園部はゲームだけをする部ではなくて稲波瀬先輩のやりたいことをやる部らしいが(つまり稲波瀬先輩にとって楽園なためこういう部名)。
まあ、とにかく。ゲーム好きな俺にとっては、稲波瀬先輩の気まぐれだろうがなんだろうが、学校でゲーム三昧なのは万々歳だけどな。
で、今やっていたのは麻雀。
参加者は俺、出雲、稲波瀬先輩、沙良先輩だ。
杏奈はルールを知らないらしく、今回は見学だ。
まあ、世界に名を聞かせている財閥の令嬢が麻雀なんてものルールを知ってたら逆に驚くがな。
それで、リーチをかけていた稲波瀬先輩だが、出雲が出した牌が待ちだったらしく、見事あがった訳だ。
出雲はさっきから負けまくりだったから、ここにきてさらなる追い討ちっていうことだな。
哀れな奴め。
ちなみに俺は二位。
一位はいつも通り・・・というのも癪だが、稲波瀬先輩だ。
最初の部活でもそうだったが、稲波瀬先輩はゲーム全般に強く、運も良い。
それに罠をはったり相手を利用したりと、頭もよく使って毎回一位をとっている。
これだけ頭が回るなら、テストでも使えばいいのに。
そんな風に思っていると、稲波瀬先輩が自分の牌を見せて、高らかに言う。
「三色イーペーコードラ1!残念だったわね出雲ちゃん!」
「ふぎゃ―――!またやられた――――!何で―――――!?」
出雲は嘆く。
「お前・・・稲波瀬先輩の手くらい読めよ・・・。さっきからお前が稲波瀬先輩のあがりに協力してるようなもんだぞ・・・」
「知らないよぉ!私麻雀のプロじゃないもん!ルール知ってるだけなの!初心者なの!」
出雲が喚くように言う。
「それにしても弱いですよね。あんな単純な手にかかるなんて・・・」
「沙良先輩!?なんで私を可哀想な子を見るような目で見るんですか!?」
「え?それはあなたを可哀想な子だと思ってるからですよ?」
「言っちゃった!あっさり言っちゃった!欠片も迷わなかったよ!」
「・・・?迷う必要があったんですか?」
「そんな本気で不思議そうな顔しないでください!心が折れそうになります!」
「良いんじゃないですか?折れて」
「ひどい!この人ひどいよ!」
・・・なんだこのやり取りは・・・。
漫才か?
そんな二人を見兼ねたのか、稲波瀬先輩が二人の間に割って入る。
「はいはい出雲ちゃん。もうその辺にして、負けは負けなんだから潔く認めなさい」
「私を負かした張本人に言われたくないんですけど!?」
それは全くもってその通りだな。
このままだと稲波瀬先輩も加わりそうだな。
漫才に。
「別に負かしてなんかないわよ。あなたが勝手に負けたんでしょ?」
「うわっ!ひどい言い種!血も涙もない!」
「むっ・・・!失礼ね!私にだって―――」
「はいはいはいはい、ストップ」
言い争いがこれ以上激化する前に止めとく。
というかいつものことなんだが。
大体ゲームのあとに出雲か杏奈がギャーギャー言って、先輩たちと漫ざ・・・言い争いになる。
で、それを俺が止める。
苦労するぜ・・・。
「時雨っ・・・でも!」
「アホ。この先輩たちの言うこといちいち真に受けてたら心労でぶっ倒れんぞ」
「う・・・」
実際、この人たちと話してると調子が狂う。
「時雨君。別に私は冗談で言ってる訳じゃありませんが」
「あんたは黙ってろや」
こんな風に。
ともかく、止めなければこの漫才は永遠に続く訳だから、止める。
そして俺は、「はあ・・・」とため息をつく。
「つうか、なんで毎回毎回漫ざ・・・言い争いになるんだあんたらは・・・」
「時雨。あんた今漫才って言いかけなかった?」
「いや、言ってねえ」
杏奈の奴・・・さっきから黙っていると思ってたら・・・。
意外と鋭いな・・・!
「まあとにかくだ。そっちにギャーギャーやられるとうるさいんで、止めろ」
「う~・・・」
出雲は不満そうに唸りながらも小さく頷いた。
そんな時―――
ガラリ
と音と共に、部室の扉が開いた。
それに反応し、俺たちは五人ともその方を向く。
そこに立っていたのは一人の女子生徒。
まず一番最初に目につくものはその鮮やかな金髪。
長さは肩にかかる程度で、見た感じとてもさらさらしてるような髪をストレートにおろしている。
ただ一本だけ、それに逆らうが如くはねている。
いわゆるあほ毛だ。
顔立ちは整っている。
つまりかなりかわいいということだ。
だが金髪に似合うその碧い目は、信じられないくらいに無機質で、その表情からも感情を読み取れない。
何となくミステリアスな雰囲気を漂わせている。
背は大分小柄で、杏奈よりも小さいと思う。
ある部分もそれに比例するが如く、小さい。
つまり、世間一般で言うとこれはロリの部類に入るだろう。
正直、高校生に見えない。
そんなことを思っていると、沈黙を破るように沙良先輩が口を開いた。
「あの、どちら様で?」
その言葉を聞くと、女子生徒はポケットをごそごそとまさぐって、折り畳まれた一枚の紙を取り出す。
そしてそれを開いて、俺たちに向けて見せる。
―――入部届
そして、こう言った。
「入部・・・したい」
『・・・え?』
・・・・・・・・・・・
「えぇと、まずはお名前を教えてくれるかしら?」
稲波瀬先輩が椅子に座っている金髪碧眼の女子生徒に向けてそう言う。
女子生徒はそれに小さな声で答える。
「魅鳴 癒乃・・・」
「癒乃ちゃんね。あなた、我が楽園部に入部したいって言ったわよね?」
女子生徒、もとい魅鳴は稲波瀬先輩の問いにこくんと頷く。
ってか「我が」ってなんだよ。
確かにあんたが部長だけどさ。
「じゃあ、一応その動機を教えてくれる?」
「・・・・・・なんとなく」
魅鳴は一瞬迷ったような素振りを見せるが、そう答えた。
「そう。まあ、動機なんてなんでもいいんだけどね。入ってくれるのなら」
「なら何で聞いたのよ・・・」
「それこそ、“なんとなく”よ♪」
杏奈の問いに稲波瀬先輩は悪戯っぽく笑いながら返す。
「・・・」
魅鳴はそれを興味なさそうな目で見ていた。
そんな魅鳴に出雲が話しかける。
「ねえねえ!」
「なに・・・?」
「癒乃ちゃん、って名前で呼んでもいい?」
魅鳴はこくりと頷く。
出雲はそれを見て嬉しそうに微笑んだ。
「癒乃ちゃんって同じクラスだよね!」
「ん・・・」
魅鳴は再びこくりと頷く。
無口な奴だ。
それはそうと、今のは初めて知った。
魅鳴って同じクラスだったのか。
・・・そういや、いた気もするな。
言っちゃ悪いが、普段から全く喋らないから全然存在に気づかなかった。
「そうか・・・同じクラスだったのか・・・」
俺がそうツブヤクと出雲は呆れた顔になった。
「時雨、知らなかったの?」
「いや、知らなかったというか・・・気づかなかった」
そこに、今度は杏奈が口を挟んでくる。
「自己紹介の時にちゃんといたはずよ?」
「あー・・・、うん。そんな気がしてきた」
嘘である。
自己紹介なんか真面目に聞いてなかったし。
そんな俺の心の中の本音を汲み取ったのか、出雲と杏奈が呆れた目を向けてくる。
別にクラスメイトを全員覚えるなんて決まりはないじゃないか。
それこそ、じっくり一年かけて絆を深めていけばいいと思うんだが。
俺が下らないことを思っている横で、出雲が魅鳴に謝っていた。
「ごめんね癒乃ちゃん。時雨はこんなだけど、悪い人じゃないから」
「慣れてるから、平気・・・」
言葉通り魅鳴は全く気にしてない風に言う。
寛大なお方だ。
存在を忘れていた(というか知らなかった)というのに。
てか、出雲たちよく覚えていたと思う。
だけど、それでもやはり魅鳴について詳しいことは知らないようで、出雲は魅鳴に質問を浴びせかける。
「癒乃ちゃんの部屋ってどこ?」
「816号室・・・」
「遊びに行ってもいい?」
「別に、いい・・・」
「ありがとっ。あと、その髪って地毛なの?」
出雲が魅鳴の鮮やかな金髪を指差しながら訊く。
魅鳴はそれに小さく頷いて答える。
「名前は日本人だよね。もしかしてハーフ?」
魅鳴が今度は首を横に振る。
「お祖母ちゃんが・・・イギリス人だから・・・」
「なるほど、クォーターって訳ね」
杏奈が納得したように言う。
「いいなー!私もそんな綺麗な金髪や鮮やかな碧眼に生まれて来たかった~」
「やめて。出雲には似合わないから」
杏奈のその言葉に出雲は「え~」と不満そうな声をあげる。
「あ、そうだ癒乃ちゃん。聞きたいことが―――」
「はいはい。質問は一旦終わりにして!」
出雲が次の質問をする前に稲波瀬先輩が中断させる。
出雲は「えー」と残念そうな声を漏らす。
そんな出雲に、稲波瀬先輩は言い聞かせるように言う。
「そんな一方的に質問ばっかりしないの。あなたたち、自己紹介もしてないじゃない。まずは自己紹介するのが礼儀でしょ?」
稲波瀬先輩が珍しく最もなことを言う。
出雲はそれもそうだとばかりに頷いた。
「じゃ、まずは私からね。部長の稲波瀬水無月よ。所属は二年二組。一応学級代表もやっているわ」
稲波瀬先輩がそう言って自己紹介をする。魅鳴はただそれを無表情のまま黙って聞いている。
「同じく二年二組の沙良暦です。副部長を務めさせていただいてます。よろしくお願いしますね」
「私は天崎出雲!よろしくね!」
「標部杏奈。よろしく頼むわね」
続いて沙良先輩、出雲、杏奈と自己紹介をしていく。
そして最後の俺の番だ。
「方城時雨だ。俺が学級代表やってるのは、知ってるよな?」
魅鳴はこくりと頷く。
「ま、よろしく頼むわ」
「・・・よろしく・・・」
魅鳴は感情が窺えない声で言った。
自己紹介が終わったところで、稲波瀬先輩が口を開く。
「じゃあ、新入部員の癒乃ちゃんのために我が楽園部の活動内容を教えてあげるわ!」
だから我がはやめろって。
俺は内心でそうツッコんだ。
稲波瀬先輩の活動内容説明(内容は以前俺たちが受けたものと同じ)も終わり、魅鳴を入れて早速ゲームをやってみようということになった。
種目は、百人一首。カルタが難しくなったようなものだ。
参加者は俺、稲波瀬先輩、杏奈、そして魅鳴。
出雲は百人一首を覚えられる訳がないから、沙良先輩は見てるだけで面白いからという理由で不参加だ。
稲波瀬先輩は百首全て覚えているしとるのが凄まじく速い。
前やった時は百枚全部とられた。
あの時ほど悔しかったことはない。
今回は必ずリベンジをしたい。
杏奈はそこそこ覚えていて、とるのもそこそこ速い。
油断できない相手だ。
魅鳴に関しては、実力は全くの未知数。
油断できないのは変わらないって訳だ。
ちなみに、俺は九割ほど覚えている。
「それでは、始めますね」
百枚の取り札が並べられたテーブルの周りに座っている俺ら四人に対し、読み札を持った沙良先輩がそう言った。
「あー・・・こほんこほん」
軽く咳払いをして、沙良先輩は読み始める。
「いにしへ―――」
瞬間、パァン!と、何かが弾けるような音と共に、一枚の札が宙を待った。
そして落ちてきた札を、稲波瀬先輩がそれをキャッチした。
「まずは一枚目ね♪」
稲波瀬先輩はにやりと笑うと札を俺たちに見せる。
間違いなく読まれた句の札であった。
「相変わらず速いわね・・・」
杏奈が憎々しげに稲波瀬を見る。
いくら何でもこの速さはないと思う。
最早チートじゃないか。
で、魅鳴はと言うと、先ほどと全く変わらない無表情のままだった。
「それじゃあ、どんどんいくわよー!」
その後も、悔しいが稲波瀬先輩の一人無双だった。
ただただ、パァン!という乾いた音が部室に響くのを聞くだけで、俺たちはなにもできなかった。
魅鳴の実力がどんなものか見ることすらできない。
新入部員がいるんだから少しは手加減をするということを知れよ。まったく。
「それじゃ、時雨君片付けお願いね」
稲波瀬先輩はそう言うと、とっとと部室から出ていってしまう。
忘れている人も多いだろうが、この楽園部には勝者が好きな人に好きなことを命令できる。
だから、俺は稲波瀬先輩に今日使ったゲームの片付けを命令された。
いつも通りのことだ。
毎回必ず稲波瀬先輩が一位を勝ち取り、毎回必ず俺が命令を受ける。
これじゃあ俺はただの稲波瀬先輩の召し使いだ。まあ、命令されることがそれほど大したことものじゃないのが救いだな。
「じゃ、時雨頑張ってね!」
「毎回大変ねあんたは」
「私も失礼させていただきますね」
出雲、杏奈、沙良先輩の三人も、そう言って部室を出ていってしまう。
なんて薄情な奴等だ。
少しは手伝ってくれてもいいと思うぞ。
そう思いながらも、俺は片付けを始める。
その時、部室にまだ人が残っているのに気がついた。
「どうした?もう帰ってもいいんだぞ?」
俺がそう言うと、魅鳴は首を横に振る。
「手伝う・・・」
その言葉に俺は一瞬呆気にとられて、片付けをしている手を止めて魅鳴の方をまじまじと見る。
そんな俺の様子に、魅鳴は小さく首を傾げながらも、自分も一緒に片付け始めた。
珍しい奴もいるものだ。まあ、助かるからいいけど。
「ありがとな」
「・・・」
感謝の意を込めて言った言葉に、魅鳴は何かを返す様子もなく、俺に背中を向けたんたんと片付けをしている。
だが、なんとなく俺はその小さな背中が「気にするな」と言っているように見えた。
無意識に顔が綻んでしまう。
「・・・何で笑ってるの・・・?」
魅鳴はそんな俺の表情に気づいたようで、小首を傾げながら訊いてくる。
「何でもねえよ。気にするな」「・・・」
俺の答えに納得していないのか、訝しげな目で俺を見ていたが、それ以上追究しては来ず、また背中を向け今日使ったゲーム類を片付け始める。
「そういえばよ。俺もお前に聞きたいことがあるんだよ」
「・・・なに?」
魅鳴は振り向きもせずにそう言う。
「お前がこの部に入った理由って結局何なんだ?」
「・・・・・・だから、なんとなくだって言った・・・」
「いや、嘘だろ」
「っ・・・」
向けられた魅鳴の背中が一瞬だけぴくりと動く。
「なにか他に理由があって入ったんじゃないのか?」
「・・・何で、そう思うの・・・?」
魅鳴の問いに俺はこう答えた。
「なんとなくだ」
「・・・そんな、理由で・・・」
魅鳴がぼやくようにそう言う。
「で、実際どうなんだ?」
「・・・」
俺が聞いても、魅鳴は押し黙る。
「まあ、話したくないなら別にいいけどな」
「・・・だったから・・・」
「へ?何だって?」
俺は魅鳴の言葉が聞き取れず、聞き返す。
「だから・・・楽しそうだった・・・から・・・」
魅鳴は背中を向けたまま、ぶっきらぼうにそう言った。
「何が楽しそうだったんだ?」
「・・・この間、この部室の前を通った時・・・騒がしい声が聞こえて・・・覗いてみたら、すごく楽しそうにゲームしてて・・・」
否定はしない。
罰ゲームだのなんだのやらされているが、先輩たちや出雲、杏奈と部活をやっている時は本気で楽しい。
だからいつも気づいたら熱中してしまう。
そんな俺たちを見て、魅鳴は楽しそうだと思ってくれたのか。
少し嬉しいな。
「だから・・・わたしも・・・混ざりたいと・・・思って・・・」
最後の方は声が小さく聞き取りづらかったが、ちゃんと聞こえた。
「そうか。で、実際部活やってみてどうだった?」
「・・・負けたのは悔しい。でも・・・」
魅鳴は俺の方を向き、
「楽しかった」
そう言った。
相変わらずの無表情だったが、なんとなく、その声は嬉しそうに聞こえた。
「そりゃよかった」
そう言って笑いかけると、魅鳴は気恥ずかしくでもなったのか、ぱっとまた後ろを向く。
「・・・片付け終わったから・・・帰る・・・」
見ると、テーブルに散乱していたゲーム類は全て片付けられていた。
話している間にも手を動かしていたらしい。
まあ、俺もだが。
「おう、また明日な」
「ん・・・またね・・・」
魅鳴はそう言って、部室を出ていった。
「・・・さて、俺も帰るか・・・」
部室の電気を消し、俺は寮へと向かった。
SIDE 癒乃
「・・・」
わたしは廊下を一人歩いていた。
「・・・楽しかったな・・・」
わたしはそう呟く。
同じくらいの歳の人たちとあんな風にゲームをするのは、初めてで、あんなにも楽しいものだなんて思ってなかった。
昔から人と喋るのが苦手で、ろくに友達もできず、周りが皆でわいわいしてる時はいつも一人で本を読んでいたから。
それに・・・お祖母ちゃんから受け継いだこの髪と眼を、綺麗だと言われたのも初めて。
幼稚園からずっとからかわれてたから、自分の髪と眼の色が嫌いだった。
だけど、今日・・・少し好きになれたかもしれない。
それと・・・
「方城・・・時雨・・・」
文武両道、眉目秀麗の完璧超人って聞いてたから、それを鼻にかけてる人だと思ってたけど・・・全然違ったみたいだ。何故そう思えるか分からないけど・・・わたしの勘がそう言ってる。
そう。なんとなく。
それに噂で聞いた話では、一緒にいた天崎出雲と標部杏奈に好意を寄せられているらしい。
もし嫌な奴だったら、二人からも好かれる筈がないだろう。
不思議な人だ。
会って間もないはずなのに、一緒にいると妙に落ち着く。
それに、あんな優しい笑みを見せられたのも初めてだ。
何故だか気恥ずかしくなって、つい目を逸らしてしまった。
・・・もしかしたら、わたしも彼のことを好きになってしまうのだろうか。
・・・いや、そもそも人を好きになるとはどういうことなのだろうか。
人を好きになったらなにがどうなるのだろうか。
・・・確か、そういうのは“恋”というものらしい。
昔、お祖母ちゃんに聞いたことがある。
恋とはなんなのかを。
『恋はね、人生を素敵にするとっても大切のことなんだよ』
お祖母ちゃんはそれだけしか答えてくれなかった。
その意味が未だに理解できない。
人を好きになることで、何故人生が素敵になるのか。どんな風に素敵なのか。
お祖母ちゃんは『癒乃もいつか分かる日がくる』と言っていたが、いつになったら分かるのだろうか。
そんなこと、考えるだけ無駄だろう。
・・・でも、本当に素敵なことなら・・・してみたいな。
恋・・・
「・・・」
わたしは、しばらくその場に佇んでいた。
「・・・帰ろう」
やがて、誰もいない廊下でそう呟き、再び寮に向かって歩き始めた。
はいどうも。
水面です。
〈時雨〉「毎度お馴染み、時雨だ」
今回も楽しく、トークタイムいってみましょう。
では、ゲストをお呼びしたいと思います。
どうぞ。
〈水無月〉「呼んでくれてありがと。よろしくね♪」
〈時雨〉「稲波瀬先輩か」
良かったですね稲波瀬先輩。時雨と二人きりですよ。
〈水無月〉「作者さん?なに言ってるの?」
さあ、なんですかね。
〈水無月〉「・・・」
では、一つ目のテーマです。
エドワード・ニューゲート様からで、「好きなライトノベル」です。
〈時雨〉「おお!面白そうなテーマじゃねえか!」
〈水無月〉「ラノベならドンと来なさい!」
それでは、好きなラノベを。
〈時雨〉「そうだな・・・。どこからいくか・・・」
〈水無月〉「私はそうね・・・シャナかしら・・・。いやでも、ゼロの使い魔もいいし・・・ああでもでも!とある魔術の禁書目録も・・・!」
落ち着いてください。それと、なるべく一つにしてください。
〈時雨〉「最近のならはがないとかパパ聞きとか好きだな。あ、あとはバカテスとか。挙げていくときりがない。まあとにかく、何でも好きだな」
そうですか。
〈水無月〉「ああっ!!」
どうしました稲波瀬先輩?
〈水無月〉「私としたことが、ハルヒを忘れていたわ・・・!」
いや、もういいですよ。充分です。
まあ、かくいうわたしもラノベ好きなんですが。
まあとりあえず、時雨たちは何でも好きということで。
〈時雨/水無月〉「そういうことで」
はい。では次のテーマにいきたいと思います。
まずゲストからです。時雨も稲波瀬先輩もこのままいてください。
〈水無月〉「分かったわ」
〈時雨〉「まあくる奴は大体予想できるけどな」
そう言わずに。ではカモン!
〈出雲〉「どうも!」
〈杏奈〉「なんか毎回呼ばれてる気がするわ・・・」
〈暦〉「いつもありがとうございます」
〈翠〉「風水翠、推参しましたよォ!」
以上の方々です。
〈時雨〉「予想通り過ぎるな」
〈水無月〉「ええ」
まあまあ。ではトークいきます。テーマは同じくエドワード・ニューゲート様からで、「自分が使い魔や式神の類を使役できるとしたら、どんなのが良い?」です。
〈杏奈〉「なんか質問になってない?」
質問形式でも構いませんので、問題なしです。
〈杏奈〉「あ、そう」
では、時雨から順番にどうぞ。
〈時雨〉「俺はそうだな、人間と同じような姿の使い魔がいいな。もちろん言葉も通じる奴」
何故?
〈時雨〉「そっちの方が色々コミュニケーションがとりやすいだろ」
はあ、なるほど。
つまり時雨は人間の女の子みたいな使い魔とイチャイチャしたい訳ですね。
〈時雨〉「何で!?何でそうなる!?」
〈出雲〉「時雨のバカ・・・」
〈杏奈〉「変態」
〈時雨〉「何でだよ!?作者が勝手に言っただけだろ!?」
ここは小説世界。作者のわたしが言ったことは全てが正しいことになるんです。
〈時雨〉「ふざけんな!認めねえ!絶対認めねえ!」
〈暦〉「まあまあ時雨君。落ち着いてください。使い魔に人間の女の子が欲しいならミナをあげますから」
〈水無月〉「なっ!?///」
〈時雨〉「あんたはあんたでなに言ってんだ!!」
〈翠〉「いいですね・・・。普通の女の子が使い魔・・・。主と寝食を共にし、やがて芽生える恋心・・・。これは中々萌えポイント高いですよォ・・・!」
〈時雨〉「頼むからあんたは口を開かないでくれ!!」
騒がしくなってますね。とりあえず皆さん、落ち着いてください。
〈時雨〉「てめえが発端だろうがあああああああ!!!」
はいはいすいませんでした反省してます許してください(棒読み)。
〈時雨〉「かけらも反省してないよな」
いえ、してますよ。
〈時雨〉「・・・」
じゃあ次、出雲。
使役してみたい使い魔や式神は?
〈出雲〉「私?う~ん・・・。どうせなら可愛いのがいいなあ・・・。あっ、猫!」
猫、ですか?
〈出雲〉「うん!猫型の式神がいい!」
何故?
〈出雲〉「まず可愛いし。ほら、猫って妖怪とかにあるように、不思議な力を持ってそうじゃない?だから式神にはぴったりかなって!」
〈水無月〉「確かに、猫つながりの妖怪って多いわね」
〈杏奈〉「いいんじゃないかと思うわ」
わたしも同感です。中々のセンスですね。
〈出雲〉「えへへ」
〈時雨〉「俺と全く扱いが違う」
気のせいですよ。
では次、杏奈。
あなたはどうですか?
〈杏奈〉「空飛べて、ある程度大きさがある奴なら何でもいいわ」
ほほう。それは何故?
〈杏奈〉「それは・・・」
〈暦〉「杏奈ちゃん、使い魔に乗って空を飛びたいんじゃないですか?」
〈杏奈〉「う・・・」
〈翠〉「図星みたいですねェ」
〈杏奈〉「そ、そうよ!空飛んでみたいの!文句ある!?」
いえいえ、ありませんよ。夢があっていいと思います。
ねえ時雨?
〈時雨〉「俺にふるか・・・。まあ、いいと思うぞ?」
〈杏奈〉「そ、そう?」
〈時雨〉「ああ。可愛らしい願いだと思う」
〈杏奈〉「そ、そうかぁ・・・。えへへ・・・///」
あ~・・・、見ててなんかムカムカしてきますね。こいつら。
〈出雲〉「奇遇だね作者さん。私もだよ・・・」
〈暦〉「ミナもですよね?」
〈水無月〉「知らないわよ!」
〈翠〉「いやァ、やっぱりおもしろいですねェ。萌えたっぷりでキュンキュンしますよォ」
〈時雨〉「なに言ってるんだこの人たちは・・・。作者、さっさと次へ進めろ」
はいはい。
んじゃ、稲波瀬先輩お願いします。
〈水無月〉「私はそうね・・・。やっぱり強いのがいいかしら。鎧武者の式神とか」
why?
〈水無月〉「私を守ってくれるじゃない。ボディーガードが欲しかったのよ私」
〈暦〉「別にボディーガードなんかいなくても時雨君が守ってくれるじゃないですか」
〈水無月〉「な、なに言ってるのよ!!それに何で時雨君なのよ!///」
〈翠〉「ありゃ?何やらお顔が赤いですよォ~?」
〈水無月〉「風水さんもからかわないで!!」
〈出雲/杏奈〉「むう~・・・」
〈時雨〉「どうした二人とも。唸ったりして」
あなたはもう黙ってなさい。
〈時雨〉「・・・?」
では、次に沙良先輩。あなたはどんな使い魔や式神が欲しいですか?
〈暦〉「特にこれと言った希望はありませんね」
なにもないんですか?
〈暦〉「敢えて言うなら・・・雑用を喜んでやってくれる便利な人型使い魔さんが欲しいですかね」
なるほど。
〈時雨〉「なるほどじゃねえよ。なに納得してんだ。単に雑用押し付けたいだけだろ」
〈暦〉「失礼ですね時雨君。“使い”魔なんですから、“使って”あげるのは普通のことですよ」
〈時雨〉「使い魔という名称に扱き使うという意味はない」
あははは。まあいいですよ。
では最後、カザミドリ先輩よろしく。
〈翠〉「私はですねェ、時雨君のぱくりですが、可愛い女の子タイプの使い魔がいいですねェ」
〈時雨〉「ちょっと待て!俺のぱくりってなんだよ!そんなこと認めた覚えはねえぞ!」
〈翠〉「気にしない気にしない」
〈時雨〉「気にしろや!」
落ち着きなさい時雨。それで、カザミドリ先輩、その使い魔がいい理由は?
〈翠〉「そんなもん萌えるからに決まってるじゃないですかァ!」
〈全員〉「やっぱり・・・」
カザミドリ先輩の答えに関しては補足はいりませんね。
〈翠〉「え?私だけなんか扱いひどくないですかァ?」
気のせいです。
〈全員〉「そうそう」
〈翠〉「え?え?」
それでは今回はこれにて終了です。
トークテーマをくださったエドワード・ニューゲート様、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
またトークテーマ、感想など、いつでもお待ちしておりますので、よろしくお願いします。
それでは、次回予告です。
〈次回予告〉
人には様々な呼び名がある。
だがそれはそんなに重要視するものなのか?
次回 デジャヴと呼び名