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方城時雨の奇妙でイカれた学園生活  作者: 水面出
序章 -始まるは、日常-
23/46

ep20 お昼と萌え

第20話、始まります。



さて、稲波瀬先輩の活躍、そしてその後の青軍の選手の活躍あってか、青軍も他二軍に得点が追い付いてきた。


現在の得点状況は、


〔紅軍 420点


 白軍 410点


 青軍 400点 〕


以上の通り。

このまま一気に逆転劇といきたいが、その前に・・・


「時雨ー!お昼ご飯食べよ!」


そう出雲の言う通り、昼食だ。






現在時刻、12時30分。


これから約一時間の昼食休憩をとる。


各自食堂で食べたり、親兄弟に弁当を持ってきてもらったり、その辺のファミレスに行ったり。

とにかく午後の部が始まるまでに戻ってくればどんな風に済ませても良い。


流石は放任主義・・・じゃなくて生徒の自由を尊重する光天寺学園だ。


ちなみに俺はどうするかは決めてある・・・ということはなく、全く考えてない。


まあテキトーに食堂で済ませればいいか。


「どこで食べる?」


「食堂でいいだろ」


俺がそう言うと出雲が露骨に不満そうな顔になる。


「それじゃつまんないー。せっかくの体育祭なんだからさー」


「いやお前そんなこと言ってもな・・・弁当なんて無いし、どっか外で食うにしても金がねえし、食堂にするしかねえだろ」


「えー・・・」


えー・・・と言われましても・・・。


そこで、俺はふとあることに気がつく。


「なあ、杏奈はどこにいったんだ?」


いつも大体出雲と一緒にいる杏奈が珍しくいない。

ついさっきまでいたのに。


「え?」


俺のその言葉に出雲は目を丸くし、きょとんとした顔になり、一度後ろを見て再びこちらを向くと、


「いなくなってる!」


おい。


「道理でさっきから声が聞こえない訳だね・・・」


「アホか」


出雲が「一本とられた」というような、微かに悔しそうな笑みを見せたため俺は嘆息しながら言う。


「どこ行ったんだろ?お昼一緒に食べようと思ってたのに・・・」


「なんか用事があったんじゃねえか」


「むー・・・。・・・はっ!?」


出雲が一瞬残念そうな顔をしたが、何かに気づいたような顔になる。


「(杏奈ちゃんがいない・・・つまり・・・久し振りに、時雨と二人っきり!このチャンスを逃す手はないよね・・・!)別にいいんじゃないかな!?杏奈ちゃんがいなくても!」


こいつはまた一体何を考えていたんだろうか。


「いや、せっかくだし・・・杏奈も一緒の方が・・・」


「いいっていいって!!ね!?ね!?」


出雲が若干狂気が混じった声で言う。


と、その時


「・・・ちょっと」


出雲の後ろから聞き慣れた声がした。


出雲はその声を聞いた瞬間ビクッと身体を震わせる。


「少し目を離した隙に・・・なにやってんのよ・・・」



そこには青筋をたててこちらを睨んでいる杏奈が立っていた。

右手には何やら大きめの紙袋を持っている。


「あ・・・いや・・・」


まるで般若のような形相で出雲を睨み付ける杏奈。

出雲は冷や汗をだらだらと流し顔をひきつらせている。


あれは怖い。

こっちまで冷や汗が出てきそうだ。


「抜け駆けは・・・無しって言ったでしょ!?」


「すいませんでしたぁ!!」


杏奈が怒鳴ると同時に出雲が土下座。


実に見事なフォームだ。


ところで・・・何が抜け駆けなんだ?






「全く・・・油断も隙もありゃしないわね」


「ごめんなさい杏奈ちゃん・・・」


杏奈が未だ不機嫌な顔で言うと出雲は頭を下げながら謝る。


「・・・まあいいわ・・・許してあげる」


杏奈の言葉に出雲の顔がぱあっと明るくなる。


「許してくれるのっ!?」


「ええ。ただし、次抜け駆けしたら・・・分かるわね?」


「き、肝に命じときます・・・」


杏奈が一瞬黒い笑みを見せたような・・・


まあいいか。


「ところで、お前なにしてたんだ?」


俺がさっきから気になってたことを訊く。

すると杏奈は何故か得意気な表情になって右手に持っていた紙袋を前に差し出す。


「なんだそれ?」


俺がそう言うと杏奈は得意気な表情のまま、


「お弁当よ!」


元気よく言った。


「弁当?」


「そう!使用人に持ってこさせたの!」


使用人ですか。

お金持ちのお嬢様らしい発言だ。


最近こいつがお嬢様だってことをよく忘れるけど。

だって全然お嬢様らしくねえし。


偏見ではあると思うがお嬢様ってのはもっとお淑やかな感じだと思う。

杏奈の場合お淑やかとは正反対だからな。


「あんた今失礼なこと考えてない?」


いい加減読心術を使うのはやめて欲しい。


「いやなにも」


俺がそう答えると杏奈はジト目で俺を見る。


「あやしいわね・・・」


「気のせいだろ。それより弁当を用意してくれたんじゃないのか?」


「あっ、そうだったわね」


思い出したように言う杏奈。


「ここじゃ食べれないから、どっか別のとこに行きましょう」


「そうだな」


杏奈の言葉に出雲が答える。


「どこで食う?」


「う~ん・・・」


俺の問いに眉を顰めて悩む杏奈。


「食堂は人が多そうだし・・・校庭はうるさいから嫌ね・・・だからと言って校舎内で食べるのは味気ないし・・・」


そんなこと言ってたら食べるとこなんて見つからないと思う。

我が儘ぶりは健在だな。


「あの、それなら良い場所があるよ・・・?」


そこで、今まで黙っていた出雲が遠慮がちに言った。


「ホント?」


「うん!」


元気よく答える出雲。


「どこだ?」


「行けば分かるよ!」


「じゃ、そこ行きましょうか」


たった今悩んでいたとは思えないくらいにあっさりと決めた杏奈。


どこを思い付いたのか分からないが、とりあえず出雲が提案する場所に行くため、俺達は出雲についていった。










「なるほど・・・ここか」


出雲に連れられ俺達が来たのは、屋上。


確かにここなら静かだし人もいない。


しかも日があたっているからいい感じに暖かい。

昼食をとるにはうってつけの場所だと俺は思う。


「(屋上と言えばお弁当を好きな人と一緒に食べる場所の定番・・・ナイスよ出雲!)」


杏奈も満足そうにしてるしな。


「それじゃ、早速」


杏奈がそう言って紙袋の中から大きい重箱を取り出した。

しかも三段の。


「あ、時雨シート敷いといて」


杏奈が同じく紙袋から取り出した折り畳まれたレジャーシートをポイと俺に向かって投げた。


「おう」


俺はそれをキャッチし、折り畳まれているのを広げて屋上のコンクリートの上に敷く。


杏奈はその上に重箱を置いて、蓋を開けた。


「ふわあ~!」


その瞬間出雲が目をキラキラさせてうっとりとした声を上げる。


重箱の中身は色とりどりのおかずがぎっしり詰め込まれていた。


「お~い~し~そ~!」


確かに旨そうだ。


「誰が作ったの!?」


「うちのコックだけど?」


「コック!?」

しれっと言う杏奈に出雲が目を丸くして驚く。


「コック!?コックがいるの!?」


「な、なによ・・・コックなんてどこの家にもいるでしょ?」


「・・・」


杏奈のその言葉に出雲はなんとも言えない表情になる。


いや実際なんとも言えないんだ。

どう表現したらいいのか分からない。

とにかく微妙な表情だ。


それにしても今の発言は杏奈がお嬢様だっていうのを改めて強く感じさせたぞ。


こういう世間知らずなところはお嬢様っぽいな。


「・・・え?違うの?」


出雲の表情から何かを感じ取ったのか、杏奈は本気で不思議そうな顔で訊く。


「違うよ!?」


そんな杏奈に出雲は声を張り上げて言う。


「そうなの・・・信じられないわね・・・」


「それはこっちのセリフだからね!?」


出雲が再び大きな声で杏奈のお嬢様発言にツッコむ。


「杏奈・・・お前の常識は、他の奴の・・・とりあえず俺達の常識とは、違うものだと考えた方がいいぞ・・・」


「うんうん!」


出雲がコクコクと頷いて俺の言葉を肯定する。


対する杏奈は未だに不思議そうな表情をして、


「・・・変なの」


と小さく呟いた。


『(変なのはそっちだって・・・)』


俺は何故か出雲と同じことを思ったような気がした。


「まあ、一応これからはそういう事に気をつけてみるようにするわ」


そうしてくれ。



「さてと、じゃあ食べましょうか」


そう言いつつ杏奈は箸を三本取りだしその内二本を俺と出雲に差し出す。


俺と出雲はそれを受け取り、


「そんじゃ」


三人で声を合わせて、


『いただきま―――』


ガチャリ


―――と言おうとした時、屋上のドアが開いた。


「ありゃ?先客がいる」


緑がかった黒髪をポニーテールにしている女子。


放送委員長の風水翠、通称カザミドリ先輩が片手にコンビニのビニール袋(中にはパンやおにぎりが入っていると思われる)を持ってここに来たのだ。



俺達は突然のことに動きが一瞬止まる。


カザミドリ先輩はきょとんとした顔をしていたが、俺達を見た後、ニヤリと口角を上げ、


「これは邪魔をしてしまいましたかねェ?」


面白いものを見る目でそう言った。


「・・・何を言ってるんですか・・・」


俺は呆れが混じった声で返す。


「流石は話題の一年方城君。女の子を二人も誘って仲良くお昼ご飯ですかァ・・・しかもその内一人は彼の有名な標部財閥の御令嬢とは・・・やりますねェ・・・」


依然としてニヤニヤしているカザミドリ先輩の言葉を聞いて杏奈は少し頬を赤らめる(いつもの通り理由は不明)。


「んな下らないこと言ってないでください。あんたもここに昼食を食べに来たんでしょう」


「そのつもりだったけど・・・お邪魔になるんなら別の場所に行きますよ?」


「別に邪魔じゃないっすけど」


「そう?それなら遠慮なく」


そう言ってカザミドリ先輩は俺の向かいに座った。

出雲と杏奈がほんの少し残念そうな表情をしたのが見えたが、とりあえず気にしないことにする。


「そのお弁当は誰が持ってきたんです?」


カザミドリ先輩が杏奈が持ってきた旨そうな弁当を見ながら言う。


「あ、あたし」


「やっぱりですか、流石は標部財閥の御令嬢。豪勢ですねェ」


「そうかしら?」


「そうですとも」


カザミドリ先輩にそう言われて杏奈は少し得意気な表情になった。


「私もいただいていいですかねェ?」


「一人くらい増えたってどうってことないわ!」


杏奈が今度は自慢気に言う。


と、そこで


「ねえ~・・・早く食べようよ~・・・」


出雲が「お腹が空いた~」という顔で言った。

欲望に忠実な奴だ。

少しは我慢という言葉を知ったらいいと思う。


「そうね。じゃあ今度こそ・・・」


カザミドリ先輩を加え、俺達は両手を合わせる。


この世の全ての食材に感謝を込めて・・・


『いただきます!』










SIDE 小夜


「時雨・・・いない」


私は校庭中を見渡すが時雨の姿はない。


一緒に食堂でご飯を食べようと思っていたのにいつの間にかいなくなってた。


おそらく、杏奈ちゃんと・・・すごくムカつくけど泥棒猫と一緒だと思う。


杏奈ちゃんはいいけど・・・あの泥棒猫め・・・!!

私を差し置いて時雨とお昼なんて・・・許さん・・・!!


中学生までは休みの時とかよく二人で食べてたのに・・・ご飯作ってたのはいつも時雨だったけど。


なんかさっきまで隣にいたカザミドリちゃんも「行きたいところがありますんでェ」とか言ってどっか行っちゃうし・・・。


一人でお昼なんて・・・これじゃいつもと変わらないよ・・・。

せっかく時雨とひさしぶりにお昼食べれると思ったのに・・・。


「はぁ・・・」


私は大きくため息をつく。


「・・・なんか食欲も無くなっちゃった・・・。暇だし・・・風に当たりに屋上にでも行こうかな・・・」


そう呟いて、私は屋上へと向かうため歩き出した。










SIDE 時雨


「お~いし~い~!」


そう言いながら出雲は杏奈が持ってきた弁当を美味しそうに頬張っている。


いや、実際ホントに旨い。流石はプロのコックが作っただけはある。

この学園の食堂の飯も旨いがもしかしたらそれより旨いかもしれない。


「どう?時雨、うちのコックは優秀でしょ?」


杏奈はニコニコと嬉しそうな顔て俺に訊いてくる。


「確かに旨いな」


「ふふっ」


俺がそう言うと杏奈は嬉しそうに小さく笑う。


「確かに、美味しいですねェ、ですが・・・一つ、足りないことが・・・」


「・・・なによ」


カザミドリ先輩の言葉に杏奈はムッとしたら表情になる。


「なんか不満でもあんの?」


「味は申し分ないんですよ・・・けどね・・・」


カザミドリ先輩は真顔になり、




「お弁当と言ったら、女の子の手作りが常識でしょうがァ!!!」




そう豪語した。


「・・・え?」


杏奈は訳が分からないような顔をする。

当たり前だ。


「“恥辱”障害物競争があったので分かってると思いますが・・・私は“萌え”をこよなく愛する身!!ですから私から言えば、“屋上”で“お昼”と言ったら女の子が手作りのお弁当を想いを寄せる男の子と恥じらいながら一緒に食べ、できるなら「あ~ん」もやる!!それが常識なのです!!!それなのに標部さん!!あなたはなんですか!!屋上でお弁当というところまではパーフェクトなのに、コックが作ったって・・・あり得ないでしょうがァ!!あなたがした行動は“萌え”を否定してるに等しいものなんですよォ!!コックなんざくそ食らえだァ!!美味しいからなんだァ!!“萌え”が無きゃその美味しさも無駄になってしまう!!多少うまくいかなくても手作りを持ってくるから意味があるんだろうがァ!!“萌え”が無きゃ弁当なんて意味がないんだよォ!!あなたはそれを分かってんのかァ!!いいかァ!!“萌え”こそ究極!“萌え”こそ至高!“萌え”こそ正義!“萌え”があれば全て許される!“萌え”が全て!!それをバカにする奴は・・・私が許さん!!!分かったかァ!!?」



『・・・』


俺と杏奈は無言でカザミドリ先輩の長々しく限り無く理解し難い話を聞いていた。


出雲は最初から聞いてないようでパクパクと“コックが作ってきた”弁当を食べていた。


「あ・・・すいませんねェ。つい熱くなってしまいました」


目が血走り、気持ち悪い表情になっていたカザミドリ先輩は元のニヤニヤした表情(それでも軽く気持ち悪いが)に戻って言う。


「いやァでもね、ホントにお弁当は手作りの方が良いですって。それに・・・」


カザミドリ先輩は杏奈の耳元に口を近づける。


「手作りを持ってきてくれた方が男の子は喜びますよ?」


おそらくなにか言ったのだろうが聞き取れなかった。


杏奈はというと、


「やっぱりお弁当は手作りが一番よね!」


何を言われた?


と、その時


ガチャリ――


再び屋上の扉が開いて、


「あっ!」


姉さんが入ってきた。


「げっ・・・」


その瞬間に弁当を食べていた出雲があからさまに嫌そうな声を出す。


「時雨~!ここにいたんだ~!」


姉さんは嬉しそうな顔で言うとそのまま俺に抱きついてきた・・・って!


「離れろバカ!」


「え~!せっかく会えたのに~!」


「いいから早く離れろ!じゃねえと・・・」


俺はなんとか姉さんをはがそうてするが、既に遅かった。


「おいコラブラコン・・・」


「・・・あ?」


にらみながらどすの利いた声で言う出雲に同じ様ににらみながら返す姉さん。


会って早々こんなになるとは・・・この二人には平和的に物事を解決するという選択肢は無いのだろうか。


昨日、この二人の仲の悪さを見た杏奈も少し嫌そうな顔をしている。

ただ、カザミドリ先輩だけは興味津々と言った顔で二人を見ていたが。


「気安く時雨に抱きついてんじゃねえよ・・・」


「は?なんでそんなことを泥棒猫なんかに言われなきゃいけないのかな?私は時雨のお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんが弟に抱きついてはいけないなんてルールがどこにあるのかな?」


お姉ちゃんが弟に抱きついていいというルールはあるのかよ。


「あ、ごめんね。言っても分からないよね?泥棒猫が人間の言葉が分からないくらいバカでアホでボケでマヌケで考えることができないポンコツ頭なくそ猫だってこと忘れてた。あはは」


姉さんはどうして出雲と話すとこうも人が変わるんだろうか。

まずなんでこんなにも仲が悪いんだ。

仲が悪くなるようなきっかけなんかあっただろうか。


まあ今はそんなこと考えても仕方がない。今はこの状況をどうにかする方法だけ考えよう。



で、当然の事だが、姉さんの言葉を聞いた出雲は青筋を立ててプルプルと小刻みに体を震わせているし、両手をぎゅぎゅ~っていう効果音がつくくらいに強く握っている。

これはかなり怒り心頭のようだ。

見てるこっちにまで怒りのオーラがびんびん伝わってくる。


正直、気が重い・・・。


「とりあえず泥棒猫は救いようない奴ってことだよ。可哀想だね。同情するよ」


そんな俺の思いとは裏腹に姉さんは出雲を罵倒することをやめない。

対する出雲は・・・


「うううう・・・うるさい!ブラコン!」


涙目になっていた。


「さっきから言いたい放題言いやがって~・・・!!」


「あれ?なにか変かな?私は本当のことを言っただけなのに」


「うるさいうるさいうるさい!!お前の言うことなんてもうどうでもいいんだよ!とにかく!時雨から離れろブラコン!!」


出雲が半ばやけくそ気味に言う。

何故だか出雲が哀れに見えてきた。


それに対し姉さんは真顔で声を強めて言う。


「死んでもいやだ!」


そこまで言わなくてもいいだろう・・・。


「そう・・・なら・・・」


出雲は涙目で姉さんを睨むと、


「死ねこのブラコ―――――ン!!!」


そう叫びながら姉さんに飛びかかる。


姉さんも身構えて、二人が激突・・・と、思いきや


「ちょっと出雲!やめなさいって!」


飛びかかろうとする出雲を杏奈がうしろから取り押さえた。


ナイスだ杏奈。


「離して杏奈ちゃん!このブラコンを殺せないよ!」


「いやホントにそんなことしちゃダメよ!?」


「お前なんかに殺されるか泥棒猫」


「ムッカァ―――――!!」


「小夜さんも火に油を注ぐようなことしないでください!」


杏奈が暴れる出雲をどうにか宥めようてする。


姉さんが出雲を再び罵倒する。


出雲さらにキレる。


杏奈余計に宥めるのが大変になる。


これを見てるとどうしようもない情けない気持ちが湧きあがってくる。


「・・・はあ」


俺はそこで深いため息をつく。


と、そこに、


「いやァ、楽しいですねェ。こういう修羅場萌えもありかもしれませんねェ」


カザミドリ先輩がニヤニヤとした笑いを浮かべながら言ってきた。


「んな呑気なこと言ってる暇があったら少しは止めようとしてくださいよ・・・」


嘆息しながら俺が言うとカザミドリ先輩はニヤニヤしたままの顔で答える。


「止めようすれば止まるんですかァ?」


「・・・」


俺は何も言い返せなかった。



「杏奈ちゃん離してよー!!」


「だから落ち着きなさいって!」


杏奈が必死に抑えているが出雲は腕をぶんぶん振り回して暴れる。


「このブラコンをこの世から消してやるんだからー!」


「逆にお前をこの完全消滅させてあげるよ。お前みたいな単細胞バカにはぴったりだよね」


姉さんのこの言葉がいけなかった。


出雲の怒りは頂点に達し、体を震わせ、


「んだと・・・ゴルアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!」


怒りの声をあげながら自分を抑えていた杏奈を力任せに振りほどいた。


いや、この場合突き飛ばした、と言った方が正しい。


杏奈は突き飛ばされたせいでその場で転ぶ。




俺はその時、ただ転んだだけなら良かった、と思ってしまった。


実際、転ぶというのも決して良くはないものだが。


だが俺がそう思ったのは理由がある。


杏奈が転んだ時、杏奈の右足首が、





一瞬だけ、普通なら曲がらない方向に曲がったのが見えてしまったからだ。




ええ・・・申し訳ありませんが、今回のトークタイムは諸事情のためお休みとさせて頂きます・・・


トークテーマを応募して下さった方、本当に申し訳ありません・・・


次回は必ずやりますので・・・!




それでは次回予告です。




〈次回予告〉


泣くのは・・・償いじゃない


償いをしたいと言うなら・・・



次回 捻挫と代わり




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