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方城時雨の奇妙でイカれた学園生活  作者: 水面出
序章 -始まるは、日常-
16/46

ep13 部活とポーカー

更新遅れてすいません!第13話です!

「それじゃ、部の詳細を説明するわね♪」


この人の部活勧誘という名の不法侵入があってから滞りなくつぎの日になり、朝食の時間。俺と出雲と杏奈が座っているところに、いきなり現れて話し始めた。


「楽園部の活動内容は昨日話した通り。活動場所は4階の第3資料室。使われてなかったから部室にさせてもらったわ」


「許可は取ってるんすか?」


「取ってないわ♪」


おい・・・それでいいのか?


・・・良さそうだな・・・この学園なら・・・


「部員は何人いるのよ?」


「私とあなたたちを含めて5人よ」


「5人て・・・俺らの他に1人しかいないんすか!?」


「ええ、私の友達♪」


少な過ぎるだろ!?そんな少人数でやっていけんのかよ!?


「活動日はいつですかー?」


「毎日♪」


・・・もう俺はツッコまねえぞ。この人の発言にいちいちツッコんでたらこっちが参っちまうよ。

クールにいこうクールに。


「つまり、今日もあるってことっすね?」


「その通り♪さすが時雨君、ものわかりがいいわね♪」


そりゃどうも。俺もあなたのその自己中心的さには怒りも呆れも通り越して感心の気持ちを覚えますよ。


「まあそういうことだから、今日の放課後に来てね♪」


そう言って稲波瀬先輩は去っていった。

出来ればもう二度と来ないで欲しい。


「なんか・・・すごい人だよね・・・」


「世界は自分を中心に回ってる、って思ってそうね・・・」


激しく同感だ二人とも。あの人なら本当にそう思っているに違いない。


そんなことを思っていると、予鈴がなり始めた。


「やばっ・・・!」


「急がなきゃ!」


俺たちは急いで片付けて教室へと向かった。






そして放課後。


『・・・』


今俺たちは4階の第3資料室の前にいるんだが・・・ボロボロだぞ・・・。


ドアが歪んでるし・・・所々傷がついてるし・・・汚えし・・・何より全く人の気配がしない・・・


しかも4階のこの辺りは明かりが少ないし弱いから、全体的に薄暗い。


まさに何かが出そうな雰囲気だ・・・


「ち、ちょっと・・・本当にここで合ってるの・・・?」


「間違いない・・・筈だ・・・」


4階の第3資料室と言ったらここしかない。


「お化け出てきそう・・・」


「ちょ・・・やめてよ出雲・・・!」


なんだ、杏奈の奴震えてるじゃねえか。そういう話は苦手なのか。かわいいところあるじゃねえか。



「とりあえず・・・入ってみる?」


「そうするか」


俺たちは第3資料室のドアを開けた・・・と思ったら、


「ぐ・・・開か・・・ねえ・・・!」


扉が歪んでるからか・・・!?全然・・・開く気配がしねえ・・・!


「こんのぉ・・・!」


「頑張って時雨!」


「早く開けなさいよ!」


お前ら・・・んなこと言うんなら、少しは手伝え・・・!


「ぬあああ・・・!」


「あの・・・」


『・・・!?』


なんだ!?いきなり後ろから声がしたぞ!?

・・・って人か・・・。一瞬本当に出たかと思っちまったよ・・・


「そのドア・・・鍵開いてませんよ?」


・・・早く言ってくれよ・・・




第3資料室内


「さっきは驚かせてごめんなさい」


「いえ、気にしないでいいっす」


この人が稲波瀬先輩が言ってたもう1人の部員か・・・

普通の人に見えるが、油断しちゃ駄目だ。この学園はどんな人がいるか分かったもんじゃねえ。


「君たちがミナの言ってた新入部員ですね」


あ、稲波瀬先輩「ミナ」って呼ばれてるんだ。ちょっとかわいいな。


「私はミナの親友でこの部活の副部長。2年2組の沙良さら こよみと言います。よろしくお願いします」


騙されちゃ駄目だ・・・こういう礼儀正しい人ほど内心なに考えてるか分かんねえんだ。


「こちらこそよろしくお願いしまーす!」


出雲が挨拶しかえした。元気がいいようで何よりだ。


「出来れば君たちの名前も教えてもらえますか?」


そんくらいならいいか。


「方城 時雨です。一応1年1組の学級代表やってます」


「天崎 出雲です!時雨の幼馴染み!」


「標部 杏奈。標部財閥の令嬢」


名前の後にミニ情報言うのはお決まりなのか?

まあどうでもいいけど。


「時雨君に出雲ちゃんに杏奈ちゃんですね」

そして名前を反芻する。これもお決まりのパターンだよな。

お決まりってのはやりやすいけど、何回もやると飽きられるぞ。まあ俺はお決まりベタベタな展開は嫌いじゃないけどな。


そんなことを考えてると部室(こう呼んでいいのだろうか?)のドアが勢いよく開いた。

誰が来たかは・・・安易に予測できる。


「どう、やってる?」


俺をこの部活(部活と呼んでいいのかも分からないが)に誘って(というよりは強制)くれた稲波瀬先輩その人だ。


「ミナ、遅いですよ」


「ごめんごめん。ちょっとシャワー浴びてたから」


確かに少し髪が湿ってる感が・・・あれ?つまりそれってちゃんと乾かせてないってことだよな。髪はしっかり乾かさないと駄目だと思うぞ。

というか何で部活に出るのにシャワー浴びる必要があるんだ?別に汗掻いた後って訳でもないだろうし。


まあそんなこと考えても全く意味はないけどな。


「よし!じゃあ部活を始めるわよ!」


そう言って稲波瀬先輩がなんか持ってきた。・・・トランプ・・・?


「今日の楽園部の活動はトランプよ!」


「勝手に決めるんすか?」


「だって私が部長だもん!私が好きなようにやるのは当然なことなのよ!」


・・・なんとなくこの部活の本当の意味が分かってきた。自分の好きなようにできるから楽園部というか名前って言ってたが、「自分」ってのは各々個人のことじゃなくて稲波瀬先輩のことだと思う。つまりこの部活は稲波瀬先輩の自由にできる。「楽園」というのは稲波瀬先輩だけにとって、ってことか。俺らにとっては楽園でもなんでもねえじゃねえか。入んなきゃ良かったぜ・・・


「私トランプ好きなんですよー!何やるんですか?」


「ポーカーよ!」


「ふふ、ポーカーならあたしも得意よ!先輩には悪いけど、負かしてあげるわ!」


どういうことだよ。出雲も杏奈もやる気満々じゃねえか。これじゃ断れねえ。


「時雨君はポーカーは得意ですか?」


ポーカー?俺にポーカーが得意かだって?俺を誰だと思ってるんだ。ゲームと名のつくものならなんでもござれだ。カードゲームだって例外じゃねえ。


「得意ですよ。めちゃくちゃ。だから負けた時の言い訳考えておいたほうがいいですよ」


軽く挑発の意を込めて返す。


「あらあら・・・言うわね~・・・」


「楽しみです」


なんか先輩二人の顔が怖くなってきたのは俺の気のせいか?だけどこれくらい言っとかねえと相手の精神は揺さぶれねえからな。ゲーム開始前から戦いは始まってんだ。これくらいはしとかねえと。



「それじゃあ・・・ゲーム開始よ!」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇


結果


稲波瀬水無月の1人勝ち



「時雨君、言い訳考えた?」


稲波瀬先輩の勝ち誇った顔がウザったい・・・


まさかここまでとは・・・何もんだよ・・・


初っぱなから「ロイヤルストレートフラッシュ」を出すとか、どんな強運の持ち主だ。見たことねえ。


その後もどんどん強い役が揃うし、最早運が良いという言葉では表せねえと思う。


だけど負けは負けだ。そんなことをグダグダ言ってちゃゲーマーの名が廃る。


「負けました。俺の完敗っすよ」


「潔いわね♪じゃ♪」


その瞬間俺の手が後ろで縛られた。


「へ?」


何がどうなってるんだ?いきなり手の自由が聞かなくなって・・・あ・・・足も縛られた。


「何やってんすか?」


縛ったのは言うまでもないが稲波瀬先輩だ。この人は何をやろうとしてるんだ。この学園入ってからおかしなことばかりだからこんな事されてもすごく冷静になれるようになってきたな。嬉しいんだか悲しいんだか・・・


「何って、君の手足を縛ってるのよ♪」


分かるわボケ。


「い、稲波瀬先輩!何やってるんですか!?」


「そうよ!ていうかそのロープどこから取り出したの!?」


おお、出雲に杏奈。今度は止めてくれるか。助けてくれ。


「ミナは常に懐に縄を忍ばせてるんですよ」


そして説明ありがとう沙良先輩。だけど出来れば縄を忍ばせてる理由も言って欲しかった。


「良い忘れてたわね。ゲームで一番になった人は好きな人に好きなことができるの♪」


あ~、なるほど。だから俺は縛られた訳か。まあゲームで負けた罰ゲームみたいなもんか。


「それで、俺に何をするんすか?」


「ちょっとお願いがあるだけよ♪」


お願いがあるだけでは人の手足を縛る理由にはならないと思いますよ先輩。


「その、お願いとは?」


「私の奴隷になって♪」


「断固拒否で」


「もう、冷たいわね~」


冷たいもくそもあるか。奴隷になれと言われて「はいなります」って言う奴がいると思ってんのか。


「じゃあ別のお願いにするわ」


おおそうしてくださいよ。ていうかさっきから出雲と杏奈が何か考えてるんだけど・・・


「(ゲームに一番になったら好きことができる・・・つまり・・・時雨に・・・。よし!次の部活は頑張って一番になろう!)」


「(良いことを聞いたわ・・・これで時雨に・・・。絶対一番になってやるわ!)」


お二人ともなにか決意したようで。決意することは良いことだ。内容にもよるけど。


「う~ん

・・・何がいいかなぁ・・・」


「どうでもいいからこの縄ほどいてくださいよ」


「だめよ。そしたら時雨君逃げちゃうじゃない」


否定できない・・・


「あ!こういうのはどう?私が時雨君の奴隷になる♪」


「却下」


何を言うと思ったら・・・。奴隷にさせるのがダメでも奴隷になるのは良いと思ったのか?

この人の思考回路はどうなってるんだ。


「それくらいいいじゃない。ねえご主人様♪」


「許可してませんのでその呼び方はやめてください」


「そんなこと言って、本当は嬉しいんじゃないの~?」


「嬉しいですよ」


「・・・」


あれ?何で皆黙るんだ?俺何かおかしいこと言ったか?


「それ本当?」


自分から言ってきたのに・・・


「本当ですよ?稲波瀬先輩みたいな美人に言われたら普通は良い気分がするでしょう?」


事実だ。稲波瀬先輩は性格はどうしようもないが見た目は普通に・・・いや、かなり美人なんだ。そんな人に「ご主人様」とか言われたら嬉しいのが普通だろ。


『・・・』


なんか出雲と杏奈がこちらをものすごい睨んでるんだけど。俺何か悪いことしたか?


「・・・///」


そして稲波瀬先輩が赤くなってるような気がするのは俺の気のせいか?


「どうしたんすか」


「え・・・いや・・・あの・・・」


「ミナはそういうことを面と向かって言われたことがないから照れてるんですよ」


ああ、意外だ。


「暦、そういうことは言わない方が良いと思うわよ?」


「ごめんなさいミナ」


沙良先輩絶対謝る気ねえな。反省の色が感じられねえもん。


「・・・今日はもう終わりにしましょ」


「もうっすか」


「気分が乗らないの」


自分勝手だな本当に。始まりも終わりもこの人の自由か。


「じゃ、次の部活日はまた連絡するから。またね♪」


そう言って稲波瀬先輩は部室から出ていった。


「じゃあ私も失礼しますね」


続いて沙良先輩も。


残ったのは俺たち三人。


「・・・あんたってさ、誰にでもああいうことが言える訳?」


「ああいうこと?」


ああいうことってどういうことしょうか。


「意識せずにってことね・・・」


だからなんのことだ。


「だから時雨は手強いんだよ・・・」


「そうみたいね・・・」


さっきから何を話しているんだよこの二人は。俺の何が手強いんだ。


『はあ・・・』


そしてなぜユニゾンため息なんだ。



「帰ろっか・・・」


「そうね・・・」


そして二人は帰っていった。




「・・・」








「なんか色々さみしい感じがするのは気のせいなんだろうか・・・」








そう言った俺の声も一人きりの部屋には虚しく響いた・・・






以前ここに掲載していた標部杏奈の人物紹介はキャラ図鑑の方へ移動させていただきました。


それでは次回予告です。


〈次回予告〉

近づいてきたのは高校一つ目の大イベント。正直楽しみだ。



次回 体育祭の選手決めと何かがちがう両手に花



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