ep8 犯人と拳
〈時雨〉「時雨だ。今回は作者の水面が不在だから俺が進行役をやらせてもらう。とりあえず、第8話だ」
第三者視点
「~~♪」
相島 宏太は廊下を歩いていた。
「あ、あの!」
「ん?」
いきなり呼ばれたのでその方向を向く相島。
「確か君は・・・1組の天崎さんだったかい?」
「うん・・・あの・・・その・・・き・・・キレイな指輪だね・・・!」
「ああこれか。ほら、もっとよくみていいよ」
「ありがとう・・・」
相島は天崎 出雲に自分がはめてる薔薇の指輪を見せた。
「俺に何か伝えたいことがあるんじゃないか?」
「あ・・・・あの・・・放課後・・・体育館裏に来てくれない・・・?」
「ああ、いいよ」
「じゃあ・・・待ってるから・・・」
そう言うと天崎 出雲は去っていった。
「ふっ・・・俺も罪な男だ・・・」
SIDE 時雨
「時雨、言ってきたよ!」
「おう、サンキュ」
見事な演技だったよ・・・
「もう・・・好きでもない奴にあんなこと言うなんて・・・」
「悪い悪い、礼はちゃんとするからよ。それで・・・どうだった?」
「うん・・・時雨の言った通り、尖ってる部分が少し欠けてた。それに傷との幅も同じだったよ」
やっぱしか・・・
「これであいつが犯人なのね・・・!」
「いや、まだ決めつけるのは早い」
「・・・じゃあどうすんのよ・・・?」
「俺が最後の確認に行ってくる」
「確認って・・・?」
「まあ見てなって・・・」
いっちょかまかけてやるか。
俺はさりげなく相島に近寄った。
「なあ、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「友達の髪飾りを探してるんだけど・・・見なかったか・・・?」
「いや、知らないな」
・・・一つ・・・
「そうか・・・どうすっかな・・・壊れたりしたら・・・」
「まあガラスは割れやすいからな」
「そうなんだよ・・・」
・・・決まりだ
「他の奴にあたるか・・・悪いな」
「ああ、早く見つかるといいな」
俺は相島から離れ、出雲と標部のところへ戻った。
「なにが確認よ!ただ話してただけじゃない!」
「あいつで決まりだ」
『え・・・!?』
ユニゾンで驚くなよ・・・
「どうして分かったの!?」
「教えなさいよ!」
「分かった分かった、話すから静かにしろ」
―――――――――
「あ~なるほど~・・・」
「そういうことね・・・」
説明終了と。
「あいつ・・・絶対許さない・・・!」
「うんうん!」
「許す許さないはとりあえず後でだ。もう午後の授業だ」
授業中
そして終了
「ふう・・・終わった・・・」
「時雨、放課後だよ!」
出雲がきた。
「早く行くわよ!」
標部も。
そうあせるな・・・
「言われなくても分かってるっての」
さあ、犯人暴きの時間だ・・・!!
体育館裏
「や、待ったか?」
「いえ、全然!」
出雲に呼ばれた通り、体育館裏に来た相島。
「さあ話はなにかな?」
「実は話があるのは私じゃないの!」
「え・・・?」
「俺たちだよ」
俺と標部は隠れていた陰から出てきた。
「な・・・!?」
びびってやがるよ。
「単刀直入に言うぞ・・・標部の髪飾りを何故盗んだ・・・?」
「・・・!?」
動揺してんな・・・情けねえ・・・
「・・・何のことだ・・・」
「すっとぼけてんじゃないわよ!!あんたが盗んだってことは分かってんだからね!!!」
迫力あるな標部。
「はっ・・・髪飾りだかなんだか知らんが、俺が盗んだっていう証拠はあるのか?」
証拠・・・な・・・
「ああ、あるぜ」
「っ・・・!」
「第一に、お前が今はめている指輪だ」
「何・・・!?」
さあ・・・いくぜ・・・!
「標部が髪飾りを置いたテーブルの脚に傷がついていた」
「それが・・・どうした・・・!」
「食堂のテーブルの脚は鉄で出来てんだ。簡単に傷がつくもんじゃねえ。なにか硬くて尖ってるもので引っ掻くとかしねえと・・・そう・・・ちょうどその指輪みたいにな」
「・・・!?」
「薔薇を象った指輪だっけか?それなら花びらのとことか、さぞかし尖ってるだろうなあ・・・」
「・・・俺がこの指輪でテーブルの脚を引っ掻いた確証はどこにもない・・・!」
粘るねえ・・・
「そのテーブルの近くに・・・赤い欠片が見つかったんだよ・・・よくみて見ろ、その指輪」
「・・・!・・・欠け・・・てる・・・」
「これで、テーブルの脚に傷をつけたのはお前だ。おそらく・・・盗むとき、何かの拍子に引っかけたんだろ」
「ぐ・・・!」
大分焦ってんなあ・・・
「確かに、その傷をつけたのは俺かもな・・・。だが・・・偶然どこかでついたかもしれないんだ・・・。だからそれが盗んだ理由にはならない・・・!」
・・・へっ・・・
「確かにそうだな。これだけで決めるのは少し無理がある・・・。だけど・・・さらに決定的証拠がある」
「なんだと!?」
「俺が髪飾りを探してるって言った時、お前はすぐに『知らない』と言った。普通はもう少し話を深く聞いてやるもんだが・・・お前は髪飾りの件に触れたくなかったから・・・すぐに返事を返したんだ」
「・・・!」
図星みたいだな。
「そして・・・次が決定的証拠だ・・・」
そろそろ詰みだな・・・
「俺が壊れたりしたらどうしようかと言った時・・・お前はなんて言った・・・?」
「・・・さあな・・・」
答えたくないか・・・
「なら、自分の声聞いて確かめてみな」
「・・・!?」
俺はポケットから小型の録音機を取りだし、スイッチを入れた。
《どうすっかな・・・壊れたりしたら・・・》
《まあガラスは割れやすいからな》
「・・・・・・!!」
悔しそうな顔してるな。
「俺は『壊れる』と言っただけだ。なんの材質かは言ってねえ。なのに何でお前はガラスだって言ったんだ?」
「ぐ・・・!!」
「簡単なことだ・・・髪飾りを盗んだ奴しか知り得ないことを知っている・・・。つまりお前が髪飾りを盗んだ張本人なんだよ・・・!!」
「・・・」
「もう言い逃れはできねえぞ」
「・・・く・・・」
・・・?
「くくく・・・」
笑ってる・・・!?
「へっ・・・とんだ名探偵がいたもんだ・・・。そうだ・・・その女の髪飾りは俺が盗んだ・・・」
開き直りか・・・
って・・・!
標部が前に歩み出た・・・
「よくもあたしの髪飾りを盗んだわね!」
おい、あまり刺激しない方が・・・
「うるさい!元はと言えばお前が悪いんだ・・・!」
なに・・・?
「あたしがあんたになにをやったって言うのよ!」
「お前は・・・この俺にバカと言ったんだ・・・!」
・・・・・・は?
「・・・なによそれ・・・」
「とぼけるな!この前のうちのグループのパーティーで・・・―――――
『やあやあこれは、標財閥のお嬢様じゃないか。一緒にお茶でもどうだ?』
『いやよ』
『・・・俺の誘いを断るのか・・・?』
『はあ!?なに自惚れてんの!?バカじゃない!?』
『なに・・・!?』
『あんたの誘いなんか嬉しくもなんともないんだけど!ていうか気安く話しかけないで!!』
『ぐう・・・!』
―――――親にも言われたことがない言葉を・・・お前は言ったんだ!あんな屈辱を受けたのは初めてだ・・・!」
バカかこいつ・・・
「そんなことで・・・あたしの髪飾りを盗んだの!?」
「そんなことだと・・・!?この・・・!」
嫌な予感が・・・
「やっぱりあんたバカじゃないの!!?」
「黙れ・・・!」
「そんなくだらないことで・・・あたしの宝物を・・・!」
「宝物・・・?ほう・・・これはそんなに大切なものなのか・・・」
「っ!!」
な・・・今この場に持ってきてやがったのか・・・!
「返しなさいよ!!」
標部は取り返そうと手を伸ばすが、相島はそれを掴んだ。
「ちょっ・・・離しなさい・・・!」
「宝物か・・・じゃあ・・・これを壊したら・・・お前はどういう反応をするんだろうな?」
「っ!?」
・・・何だと・・・?
「なにしようとしてるのよ・・・!」
「叩きつけて壊してやる!!」
「な・・・!や、やめなさいこのバカ・・・!」
・・・・・・
「時雨!どうしよう・・・!!!」
・・・・・・
「時雨・・・?」
・・・・・・クズが・・・・・・!!!
「俺が受けた屈辱を・・・」
相島は髪飾りを持った手を振りかぶった。
標部は手を掴まれているためそれを止められない。
「思いしれ!!」
相島は髪飾りを地面に叩きつけようとした。
「いやぁ!!やめて・・・!!!」
その時・・・
ガシッ・・・!
「な・・・!?」
相島は腕を掴まれた。
「いい加減にしろ・・・・このクズ野郎が・・・!!!」
間一髪のところで、時雨が止めていたのだ。
「くだらなねえ理由で・・・人の宝物を盗んで・・・終いにはそれを壊そうとしやがって・・・!」
俺は相島の腕を掴んでる手に力を入れた。
「い・・・が・・・!!」
相島は痛みに苦悶の声を出す。
「標部・・・離れてろ・・・」
「え・・・あ・・・・うん・・・」
掴まれていた手が解放された標部は時雨の言われた通りにした。
「お前・・・俺に手を出したら・・・ぐ・・・、俺の親父が黙ってねえぞ・・・!」
お前の親父だあ・・・?
「知るか・・・!てめえみてえなクズは・・・俺が・・・
ぶん殴ってやるよ・・・!」
俺は右拳に力を入れた。
「おい・・・まさか本当に・・・!やめろ・・・!!」
「歯ぁ食いしばれ!!!」
「やめ・・・!」
ドゴォッ!!!!
時雨の右拳は正確に・・・
相島の顔面をとらえた
以前ここに掲載していた空巻菜奈の人物紹介はキャラ図鑑の方へ移動させていただきました。
それでは次回予告です。
〈次回予告〉
髪飾りが戻って良かったぜ。
それに標部の奴・・・
次回 笑顔と初恋
やっぱ笑顔って大事だよな