寄り添う人々
独りぼっちになってしまった少年は、小高い丘の頂上で夜空を見上げていた。
ひどく冷たい風が首筋に巻き付き、彼は一つ身震いをする。
周りには灯り一つない。
でもなにも見えないわけじゃない。
夜空を漂う月が、少年の周りを優しく照らしていた。
星たちも浮かんでいる。
一筋、流れ星―――とても長い線を描き、それは彼の足元へ落ちてきた。
白く、優しく発光する星が、一つ、また一つと落ちてくる。
少年が再び空を見上げると、何百何千何万、何億もの星が、今、まさに振り落ちてきている最中だった。
大小さまざまな星たちが、さまざまな光り方で彼を過ぎ去っていく。
星屑が彼の頬に零れ、額を濡らし、全身を包んでゆく。
あたり一面が星に満たされ、少年はいつしか光の海に身を委ねていた。
大地と空の境目がなくなり、浮いているのか沈んでいるのか、立っているのか寝ているのかすら分からなくなる。
ただ、意外に不安は起きなかった。
そればかりか、心の奥底に眠っていた暖かな気持ちが湧いてくるのを感じた。
なんとも言えない気分だ。
いつ以来だろう、こんなに安らいだ気持ちになれたのは。
少年は光のベッドに身を委ねる。
やがてそばに誰かがいることに気付く。
その人物は光の中から浮き出して、にっこりと少年にほほえみかける。
誰かに似ているが、誰に似ているのかはわからない。
その人の正体を突き止める前に、また同じような人物が光の中から浮き出してくる。
一人、また一人と。
おじいちゃん、女の子、青年、赤ちゃん。
そのだれもが微笑んで、少年に寄り添っていた。
そうか、この人たちはきっと…。
薄れゆく意識の中、少年はそれら全ての元である何かを発見し、納得したように目を閉じたのであった。