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Smile Japan

寄り添う人々

作者: 大橋 秀人

独りぼっちになってしまった少年は、小高い丘の頂上で夜空を見上げていた。


ひどく冷たい風が首筋に巻き付き、彼は一つ身震いをする。


周りには灯り一つない。


でもなにも見えないわけじゃない。


夜空を漂う月が、少年の周りを優しく照らしていた。


星たちも浮かんでいる。


一筋、流れ星―――とても長い線を描き、それは彼の足元へ落ちてきた。


白く、優しく発光する星が、一つ、また一つと落ちてくる。


少年が再び空を見上げると、何百何千何万、何億もの星が、今、まさに振り落ちてきている最中だった。


大小さまざまな星たちが、さまざまな光り方で彼を過ぎ去っていく。


星屑が彼の頬に零れ、額を濡らし、全身を包んでゆく。


あたり一面が星に満たされ、少年はいつしか光の海に身を委ねていた。


大地と空の境目がなくなり、浮いているのか沈んでいるのか、立っているのか寝ているのかすら分からなくなる。


ただ、意外に不安は起きなかった。


そればかりか、心の奥底に眠っていた暖かな気持ちが湧いてくるのを感じた。


なんとも言えない気分だ。


いつ以来だろう、こんなに安らいだ気持ちになれたのは。


少年は光のベッドに身を委ねる。


やがてそばに誰かがいることに気付く。


その人物は光の中から浮き出して、にっこりと少年にほほえみかける。


誰かに似ているが、誰に似ているのかはわからない。


その人の正体を突き止める前に、また同じような人物が光の中から浮き出してくる。


一人、また一人と。


おじいちゃん、女の子、青年、赤ちゃん。


そのだれもが微笑んで、少年に寄り添っていた。


そうか、この人たちはきっと…。


薄れゆく意識の中、少年はそれら全ての元である何かを発見し、納得したように目を閉じたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 幻想的なお話でした。 象徴的に表現されているものたちが何を表しているのかは、人によって違うのでしょうね。 けれど夢や希望といった、前向きな印象を受けました。 素敵な時間をありがとうござ…
2011/03/28 02:38 退会済み
管理
[一言] とても幻想的な世界観で描かれたいい作品ですね。 でも、本質的な部分はけっこう切ないですね。 どうしてでしょう? なんとなく涙がこみ上げてきます。
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