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斜め上のカノジョ

作者: 久尾涼
掲載日:2026/07/14



僕の彼女はたまに突拍子もない行動をする。


ある時は悪戯で珈琲に塩を入れて、吹き出す僕を笑い。

あれはとんでもない味だった…。


ある時は僕の上に乗って某アニメのやつ!とはしゃいでいた。

その後は飽きたのか、僕の上で寝始めた。


ある時は夢があるよね!と嬉しそうにバカでかいホールケーキを1人1個買ってきた。

…しばらく2人ともケーキを食べたくなくなった。


そんな行動ばかりする彼女は変なところで臆病だった。

それに、嘘を付くのが凄まじく下手だった。


何か悪戯をする度にチラチラとこちらを見てくるし。

我儘を言った後には、少し不安そうにしている。

嘘を付くときは、何を見てるの?と問いたくなるくらい目が泳ぐ。


僕の彼女はそんな人だ。


そんな彼女がいきなり爆弾を落とした。



****


土曜日の昼、お昼は何を食べようかと話していた筈だった。

そんな何でもない時間の事だった。



「ねぇ、みーくん!私女としての魅力ないのかな?!」



いきなり何を言うのか。

そもそも、貴女は僕の彼女でしょうが。


咄嗟に色々考えたが、僕は絞り出すように尋ねた。

「え…っと、どうして?」


僕の反応に不満なのか、頬を膨らませて唸る彼女。

彼女の右手が左手の甲をつねっている。

何かしら不安があるらしい…が。


「急にどうしたの?」

僕が再度尋ねると、彼女は目を泳がす。


「えー、うーん…なんとなく?」

分かりやすすぎる嘘に、笑ってしまう。

そして、笑われて腹が立ったのか彼女はキッと僕を睨んだ。


「だってー、みーくん私に手出さないじゃん!」

それは、そうだった。

付き合ってからそれなりに経つけれど、まだそうゆうことはしていない。


「頑張って誘惑してるのに、見向きもしないじゃん」

再び頬を膨らませて拗ねる彼女。

僕はと言えば彼女の発言に驚いていた。


「えっ…ゆ、誘惑?してた…っけ?」

覚えうる限りそんな記憶は無い。

なんなら、彼女の方が興味なさそうだったのだが…。


「あれか!胸?!胸がないのが駄目なんかな」

自分の胸をむにむにと揉みながら彼女が何やら言っている。

目のやり場に困るから切実にやめて欲しい…。


「あっ!」


大きな声を上げた彼女は目をカッと見開いてこちらを見ている。

次はなんだ?


「胸って上手く揉むとでかくなるらしいんだよ!」

両手をグッと握って閃いたと言わんばかりに言い放つ。


「ちょっと、誰かしらに揉んでもらおう!」

いやいやいや、誰かしらって。


「誰かしら?」

冷や汗と共に尋ねる僕に気付かないで彼女が続ける。


「みーくんは私じゃソーユー気にならないじゃん?」

貴女相手以外にそうゆう気になりませんが?

彼女は思い込むと一直線だった。


「いやいや!それは、浮気だからね?!」

思わず大きな声を出す僕に、キョトンとする彼女。

少し考えた後に、確かに?と頷く。


「仕方ないかなーって思ったけど、私も嫌だしなぁ…」

うんうんと頷く彼女に頭を抱える僕。

何でか、彼女は自身を軽く考えがちだった。

"自分なんて"がとても多い。

だからといって、僕の彼女なのに誰かに触らせる気はないし。



「絶対ダメだからね!」



僕の勢いに少し驚いたような表情を見せる彼女。

そもそも、1番の間違いを訂正していない。


「僕は君を…ちゃんと、女性と思ってるし、そうゆうこともしたい」

頬が熱くなって、口元を手で覆う。



「えぇー…?私相手なのに?」

少しの沈黙の後に返ってきた言葉に脱力する。

なんで!こうも!伝わらないのか!

目の前には、顔に「嘘だぁ」と表れている彼女。


「え、無理しなくて良いよ…?」

とまで続けて言う始末。


僕がいったい何をしたって言うのか。

いや、何もしなくてこうなっているんだが…。


「嘘でも、無理でもないって…なんでそんな風に思うのさ?」

僕の疲れはてたその言葉に、彼女が固くなった。

何度も止めなさいと言っている、左手の甲をつねる癖を発揮しながらモゴモゴと言いよどむ。


「だってさぁ…」

「うん」

「だって、みーくんの歴代彼女皆胸おっきいし、美人じゃん」

「は?え…なんでそんなこと知ってるの?」


僕が彼女に言ったことはない。

そもそも、歴代彼女の話しなんかしたら彼女は大層へそを曲げて、腹を鳴らしながらの晩御飯ボイコットを繰り広げる。


「みーくんの職場の店長が言ってた!」

ふふん、と胸をそらす彼女に再び脱力する。

更にこの場にいない店長を殴りたくなる。


要は、

僕の歴代彼女について聞いた彼女は、自分の容姿が歴代彼女達とは違う、だから自分には興味がなくて手を出さない、と変換していったらしい。


小学生や中学生みたいな思考回路だが、多分彼女は真面目にそう考えたのだろう。


「いやいや、関係ないから」

首を振りながら僕が訂正するも、彼女は信じない。

過去に何があったか分からないが、こうゆう時の彼女は驚くほど頑固だ。


「どうしたら信じてくれるの?」

声を荒げないように気にしながら言うと、少し彼女の目が揺れた。


「なんで私に手ださないの?」

じりじりと彼女の足が後退しそうになり、戻りを繰り返す。

警戒する猫みたいな彼女に少し笑ってしまう。


「大事にしたくて」

そう、彼女に手を出さないのなんてそれだけだ。

彼女はそうゆう雰囲気になると少し固まる。

てっきり、彼女の方がそうゆう事が苦手なのだと思っていた。


「君がそうゆうの苦手なんだと思ってて」

「うぅ…苦手じゃないよ?」


固まっていた自覚はあったらしい彼女が、ばつの悪い表情で歯切れ悪く言いにくそうに呟く。

「…笑わない?」


何を笑うんだか。

頷いた僕に彼女は固まる理由を告げる。


「…してる時、前の彼女とかの名前呼ばれたらやだなーって」


思って、と小さく付け足した彼女を抱き締めた。

腕のなかであわあわともがく彼女をそのままに僕は言った。


「あぁぁー…もう、僕はどれだけ信用がないのさ」

「信用してなくはない…けど」

彼女が悪戯がばれた時のように心地悪そうに言う。


「どうしても、自信がないんだよ」


小さな喧嘩や言い合いはあれど、彼女と今まで付き合ってきて。

彼女が僕を好きでいてくれるのも分かっているけど。


「僕がどれだけ君を想っているのか、伝われば良いのに」

ぎゅっと抱き締めた彼女が僕の背に手をまわす。


「ごめんね」

「ありがとうの方がいいなぁ」

「うぐっ…ありがとう」


何とも気まずそうな彼女に僕は笑った。

「それで?昼ご飯は何にする?」


キョトンとした顔をしてから、思案顔。

嬉しそうな顔で口を開く。


「みーくんの作った麻婆豆腐!」


ここにきて、麻婆豆腐。

割と真面目な雰囲気で、なんなら今日は…となりそうな中。


「いいよ、作ろうか」

ご機嫌な様子で彼女が腕からすり抜ける。

どこまでも斜め上な彼女。



そんな彼女が僕は好きだ。





最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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