斜め上のカノジョ
僕の彼女はたまに突拍子もない行動をする。
ある時は悪戯で珈琲に塩を入れて、吹き出す僕を笑い。
あれはとんでもない味だった…。
ある時は僕の上に乗って某アニメのやつ!とはしゃいでいた。
その後は飽きたのか、僕の上で寝始めた。
ある時は夢があるよね!と嬉しそうにバカでかいホールケーキを1人1個買ってきた。
…しばらく2人ともケーキを食べたくなくなった。
そんな行動ばかりする彼女は変なところで臆病だった。
それに、嘘を付くのが凄まじく下手だった。
何か悪戯をする度にチラチラとこちらを見てくるし。
我儘を言った後には、少し不安そうにしている。
嘘を付くときは、何を見てるの?と問いたくなるくらい目が泳ぐ。
僕の彼女はそんな人だ。
そんな彼女がいきなり爆弾を落とした。
****
土曜日の昼、お昼は何を食べようかと話していた筈だった。
そんな何でもない時間の事だった。
「ねぇ、みーくん!私女としての魅力ないのかな?!」
いきなり何を言うのか。
そもそも、貴女は僕の彼女でしょうが。
咄嗟に色々考えたが、僕は絞り出すように尋ねた。
「え…っと、どうして?」
僕の反応に不満なのか、頬を膨らませて唸る彼女。
彼女の右手が左手の甲をつねっている。
何かしら不安があるらしい…が。
「急にどうしたの?」
僕が再度尋ねると、彼女は目を泳がす。
「えー、うーん…なんとなく?」
分かりやすすぎる嘘に、笑ってしまう。
そして、笑われて腹が立ったのか彼女はキッと僕を睨んだ。
「だってー、みーくん私に手出さないじゃん!」
それは、そうだった。
付き合ってからそれなりに経つけれど、まだそうゆうことはしていない。
「頑張って誘惑してるのに、見向きもしないじゃん」
再び頬を膨らませて拗ねる彼女。
僕はと言えば彼女の発言に驚いていた。
「えっ…ゆ、誘惑?してた…っけ?」
覚えうる限りそんな記憶は無い。
なんなら、彼女の方が興味なさそうだったのだが…。
「あれか!胸?!胸がないのが駄目なんかな」
自分の胸をむにむにと揉みながら彼女が何やら言っている。
目のやり場に困るから切実にやめて欲しい…。
「あっ!」
大きな声を上げた彼女は目をカッと見開いてこちらを見ている。
次はなんだ?
「胸って上手く揉むとでかくなるらしいんだよ!」
両手をグッと握って閃いたと言わんばかりに言い放つ。
「ちょっと、誰かしらに揉んでもらおう!」
いやいやいや、誰かしらって。
「誰かしら?」
冷や汗と共に尋ねる僕に気付かないで彼女が続ける。
「みーくんは私じゃソーユー気にならないじゃん?」
貴女相手以外にそうゆう気になりませんが?
彼女は思い込むと一直線だった。
「いやいや!それは、浮気だからね?!」
思わず大きな声を出す僕に、キョトンとする彼女。
少し考えた後に、確かに?と頷く。
「仕方ないかなーって思ったけど、私も嫌だしなぁ…」
うんうんと頷く彼女に頭を抱える僕。
何でか、彼女は自身を軽く考えがちだった。
"自分なんて"がとても多い。
だからといって、僕の彼女なのに誰かに触らせる気はないし。
「絶対ダメだからね!」
僕の勢いに少し驚いたような表情を見せる彼女。
そもそも、1番の間違いを訂正していない。
「僕は君を…ちゃんと、女性と思ってるし、そうゆうこともしたい」
頬が熱くなって、口元を手で覆う。
「えぇー…?私相手なのに?」
少しの沈黙の後に返ってきた言葉に脱力する。
なんで!こうも!伝わらないのか!
目の前には、顔に「嘘だぁ」と表れている彼女。
「え、無理しなくて良いよ…?」
とまで続けて言う始末。
僕がいったい何をしたって言うのか。
いや、何もしなくてこうなっているんだが…。
「嘘でも、無理でもないって…なんでそんな風に思うのさ?」
僕の疲れはてたその言葉に、彼女が固くなった。
何度も止めなさいと言っている、左手の甲をつねる癖を発揮しながらモゴモゴと言いよどむ。
「だってさぁ…」
「うん」
「だって、みーくんの歴代彼女皆胸おっきいし、美人じゃん」
「は?え…なんでそんなこと知ってるの?」
僕が彼女に言ったことはない。
そもそも、歴代彼女の話しなんかしたら彼女は大層へそを曲げて、腹を鳴らしながらの晩御飯ボイコットを繰り広げる。
「みーくんの職場の店長が言ってた!」
ふふん、と胸をそらす彼女に再び脱力する。
更にこの場にいない店長を殴りたくなる。
要は、
僕の歴代彼女について聞いた彼女は、自分の容姿が歴代彼女達とは違う、だから自分には興味がなくて手を出さない、と変換していったらしい。
小学生や中学生みたいな思考回路だが、多分彼女は真面目にそう考えたのだろう。
「いやいや、関係ないから」
首を振りながら僕が訂正するも、彼女は信じない。
過去に何があったか分からないが、こうゆう時の彼女は驚くほど頑固だ。
「どうしたら信じてくれるの?」
声を荒げないように気にしながら言うと、少し彼女の目が揺れた。
「なんで私に手ださないの?」
じりじりと彼女の足が後退しそうになり、戻りを繰り返す。
警戒する猫みたいな彼女に少し笑ってしまう。
「大事にしたくて」
そう、彼女に手を出さないのなんてそれだけだ。
彼女はそうゆう雰囲気になると少し固まる。
てっきり、彼女の方がそうゆう事が苦手なのだと思っていた。
「君がそうゆうの苦手なんだと思ってて」
「うぅ…苦手じゃないよ?」
固まっていた自覚はあったらしい彼女が、ばつの悪い表情で歯切れ悪く言いにくそうに呟く。
「…笑わない?」
何を笑うんだか。
頷いた僕に彼女は固まる理由を告げる。
「…してる時、前の彼女とかの名前呼ばれたらやだなーって」
思って、と小さく付け足した彼女を抱き締めた。
腕のなかであわあわともがく彼女をそのままに僕は言った。
「あぁぁー…もう、僕はどれだけ信用がないのさ」
「信用してなくはない…けど」
彼女が悪戯がばれた時のように心地悪そうに言う。
「どうしても、自信がないんだよ」
小さな喧嘩や言い合いはあれど、彼女と今まで付き合ってきて。
彼女が僕を好きでいてくれるのも分かっているけど。
「僕がどれだけ君を想っているのか、伝われば良いのに」
ぎゅっと抱き締めた彼女が僕の背に手をまわす。
「ごめんね」
「ありがとうの方がいいなぁ」
「うぐっ…ありがとう」
何とも気まずそうな彼女に僕は笑った。
「それで?昼ご飯は何にする?」
キョトンとした顔をしてから、思案顔。
嬉しそうな顔で口を開く。
「みーくんの作った麻婆豆腐!」
ここにきて、麻婆豆腐。
割と真面目な雰囲気で、なんなら今日は…となりそうな中。
「いいよ、作ろうか」
ご機嫌な様子で彼女が腕からすり抜ける。
どこまでも斜め上な彼女。
そんな彼女が僕は好きだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




