第14章:奪還者としての再臨
神崎が失脚した日の夜、夏希のアパートのドアを叩く音があった。
夏希は、反射的にカーテンを閉め、息を潜めた。
この時間、この場所で、自分を訪ねてくる人間は、世界にただ一人しかいないことを知っていた。
「姉ちゃん。開けてよ。俺だよ」
篤の低い声が、静かな部屋に響く。
それは、解放された安堵を打ち消す、新しい支配の予感だった。
夏希は抵抗したが、篤の持つ合鍵が虚しくも鍵を回す音を立て、ドアが開いた。
そこに立っていた篤の顔は、勝利と、張り詰めた欲望に満ちていた。
「どうしたの、姉ちゃん。俺が神崎を消したんだよ?感謝して欲しいな」
篤は、部屋に入るとすぐにドアを閉め、壁に寄りかかって夏希を見下ろした。
その瞳は、獲物を追い詰めた獣のように輝いていた。
「……どうして、そんなことをしたの」
夏希の声は震えていた。
神崎の支配は甘美だったが、篤の支配はいつも強引で、有無を言わせないものだった。
篤は、声を荒らげ、夏希の腕を掴んで引き寄せた。
「俺の姉ちゃんを、あんな偽善者に触らせておけるわけがないだろ!」
篤の怒りは、夏希を取り戻したという満足感と混ざり合い、熱狂的なものになっていた。
彼は夏希の体から、神崎の痕跡を完全に消し去る必要があった。
「姉ちゃん、少し、羽目を外しすぎたようだね」
篤は、夏希の顔を両手で挟み込み、強引に唇を奪った。
それは、問答無用の奪還のキスだった。
神崎のキスが洗練された支配であるなら、篤のキスは、野蛮で、全てを飲み込む独占欲そのものだった。
夏希は抵抗しようとしたが、篤の力は強すぎた。
彼の舌が侵入し、口内の全てを支配する。
その味は、幼い頃から慣れ親しんだ、身内ゆえの甘美な暴力の味だった。
「んっ…」
抵抗は、すぐに陶酔へと変わった。
篤の支配は、夏希にとって、最も古い記憶に刻まれた「安心」の形だった。
神崎の支配は、彼女を「誰か」にしてくれたが、篤の支配は、彼女を「篤の姉」という最も単純な、そして最も受け入れやすい存在に戻してくれる。
「わかっただろ?姉ちゃんは、俺のそばにいるべきなんだよ」
篤は、夏希の唇から離れると、耳元で囁いた。
彼の息は荒く、彼の体温が夏希の肌に焼きつくように感じられた。
彼は、夏希のルームウェアを素早く捲り上げ、その白い肌を露わにした。
篤の指が、夏希の柔らかな腹部を這い上がり、膨らみを強く掴んだ。
痛みが走るほどの力で、まるで神崎の残した甘い記憶を抉り取るように。
「ここにも、あいつの匂いが染みついてる……許せない」
篤の声は低く、嫉妬と執着が絡み合っていた。
彼は夏希の首筋に歯を立て、強く吸い上げた。
赤い痕が次々と刻まれ、神崎のキス痕を上書きしていく。
夏希は背中を反らせ、篤の肩に爪を立てた。
痛みと快楽が混じり、頭がぼうっとする。
彼の手はさらに下へ滑り、ルームウェアの裾を乱暴に引き下げ、太ももの内側を割り開いた。
「姉ちゃん、もう俺以外、感じちゃダメだよ」
篤の指が敏感な部分に触れた瞬間、夏希の身体に強い電流が走った。
抵抗する気力は、すでに溶け始めていた。
篤は満足げに笑い、夏希を抱き上げてベッドへ運んだ。
彼女を横たわらせ、自分の体で覆い被さる。
「今夜は、姉ちゃんを俺のものに、徹底的に戻すからね」
篤の瞳は狂おしいほどの独占欲で燃えていた。
夏希はただ、彼の熱に飲み込まれていくしかなかった。
その熱さが、夏希の心の空虚を一気に埋め尽くしていく。
彼女は、この禁断の支配から、もう二度と逃れられないことを知っていた。




