第13章:復讐と空虚な心
証拠を手に入れた篤は、迷うことなく行動に移した。
彼はまず、神崎の妻のSNSアカウントを探し当て、匿名でメッセージを送った。
『ご主人が、会社の部下と不倫していることをご存知ですか? 決定的な証拠があります。あなたの人生とご主人の地位を守りたいなら、連絡ください』
翌日、篤は神崎の妻と、会社の内部告発窓口に、証拠の画像と動画、そして神崎が夏希に送った支配的なメッセージの履歴を匿名で送付した。
メッセージには、神崎が夏希の「過去の秘密」を知り、それを利用して関係を強要していたことを匂わせる内容も添えられていた。
社内は即座に混乱に陥った。
神崎の完璧なキャリアと家庭人としてのイメージは、一夜にして崩壊した。
彼の妻は、神崎を追求し、社内調査が開始されたことで、ようやく夏希は事態が急変したことに気づいた。
神崎はまるで別人のように動揺し、夏希に対し、上司と部下としての会話をする余裕も失っていた。
「夏希…どういうことだ。誰が、こんな…まさか、あの弟か?」
神崎は青ざめた顔で夏希を問い詰めた。夏希は、篤が動いたことを悟ったが、口を割らなかった。
彼女は、神崎の支配が崩れる瞬間を、冷めた瞳で見つめていた。
彼の偽善の支配は、篤の剥き出しの独占欲の前では、いとも簡単に崩れ去ったのだ。
数日後、神崎は女性部下との不適切な関係、そして既婚者であることを隠しての不貞行為を理由に、会社から懲戒解雇された。
彼のキャリアは完全に潰え、妻との関係も破綻した。
神崎が失脚した夜、夏希は一人、アパートの部屋で、自分の解放を待っていた。
自由になったはずなのに、彼女の心は空虚で、むしろ不安に包まれていた。




