第12章:繰り返される逢瀬
夏希が神崎の甘美な支配に完全に絡め取られていく中、篤の嫉妬と怒りは、もはや限界に達していた。
あの夜、神崎の理知的な脅しによって、一時的に撤退を余儀なくされた篤だが、夏希の部屋から帰宅した彼の心は、「姉ちゃんを取り戻す」というただ一つの狂気的な使命感に燃え上がっていた。
「あいつ…姉ちゃんを、汚しやがって…」
篤は、神崎の支配が肉体的な快楽を伴うものへと移行したことを、夏希の様子と、彼女の部屋に残る微かな神崎の匂いから察知していた。
それは篤にとって、自分の「最高の支配」を奪われることと同義だった。
篤は、神崎隼人の私生活を徹底的に調べ始めた。
彼は、神崎が理知的で完璧な外面とは裏腹に、既婚者であり、厳格な家庭を持つことを突き止めた。
「妻帯者でありながら、部下を誘惑し、支配下に置く…これこそ、あの男の偽善の核だ」
篤は、神崎と夏希の不貞行為の確固たる証拠を押さえることこそが、神崎の支配を打ち破り、夏希を「救い出す」唯一の方法だと確信した。
神崎は、夏希を完全に自分のものとして扱い、夏希の住むアパートでの逢瀬を繰り返していた。
夏希は、神崎の洗練された指使いと支配的な言葉に溺れ、篤の存在さえ忘れてしまいそうになっていた。
「夏希、君の体は本当に正直だ。こんなに僕を求めているじゃないか。君の全ては、僕の愛の証だよ」
神崎の囁きは、夏希の精神的な弱さを突く麻薬だった。
彼女は、神崎の支配によって、過去の屈辱が、「誰かに深く愛されている」という歪んだ感覚にすり替わるのを感じていた。
ある日の夜、篤は夏希のアパートの部屋の窓が見えるマンションの屋上で張り込み、神崎と夏希の様子を伺っていた。
夏希は洗濯物を取り込むため、カーテンをずらして窓を開けた。
そのお陰で、部屋の中の様子が見えるようになった。
篤はすぐさまカメラを構えた。
すると、二人は警戒心もなく、親密に抱き合い、そのままベッドへと倒れ込んだ。
神崎は、ためらいなく夏希の薄いルームウェアを剥ぎ取り、その白い肌を貪るように見つめた。
「やはり、君の体は僕のものになるためにある。君の抵抗は、僕の支配をより甘美なものにするスパイスだ」と、神崎は耳元で囁いた。
彼の指が夏希の敏感な場所に触れると、彼女は抵抗を忘れたかのように、陶酔した息を漏らした。
「神崎さん…駄目…見ないで…」
夏希は弱々しく呻くが、その声には拒絶よりもむしろ、許しを請う響きがあった。
神崎はその微かな抵抗を嘲笑うかのように、彼女の体をさらに強く拘束した。
その肉体的な密着は、二人の間に存在する歪んだ支配関係を、最も原始的な形で具現化していた。
篤は、ファインダー越しに、愛憎が入り混じる二人の姿を、無言で、しかし確かな怒りと絶望を込めて記録し続けた。




