【紹介】意外と挑戦的な作品 『セトウツミ』/此元和津也
初回なので、まずは直近で読んだものを。
初めまして、[ヲタクたれ]です。
皆さんは、漫画などの創作において、何が最も大切だと思いますか?
シナリオ・作画・台詞回しでの表現など、たくさんの要素がありますが、私はキャラクター性だと思います。
関係性が深まっていったり、細かな心情描写があってこそ、没入感のある作品になると思うからです。
…が、案外そうではないかも?
そう思うきっかけとなった『セトウツミ』という漫画を紹介しようと思います。
この漫画は、瀬戸と内海という二人の男子高校生が、河原で駄弁って暇つぶしをする、ただそれだけの漫画です。
…はい、もうこれ以上あらすじはありません。
本当に、これだけです。
「暇つぶしをするだけ」ということは、それ以上のイベントは特に発生しないということ。
そして暇つぶしがただ続いていくので、ドラマチックな心情の起伏もありません。
とんでもないことなのですが、私はこの作品が好きです。
なぜなら、二人の会話がとにかく面白いからです。
お互いに適当な出来事を持ってきて話す。
まるでコントを見ているかのようなテンポのいい掛け合いが続き、気づけば自然とニヤニヤしてしまう。
この漫画は、ギャグとユーモアだけで読者を惹きつけてきます。
ですが冷静になって振り返ると、この漫画はかなり異質です。
舞台はほぼ河原で固定。
キャラクターの行動も、毎話大差がない。
感情の変化すら、はっきりとは描かれません。
逆で考えると、この作品は「会話の内容」しか変わっていないのです。
…いや怖!?
だって考えてみてくださいよ。
絵と台詞という多くの情報を扱える「漫画」という媒体で、会話劇だけで勝負する。
ヒューマンドラマにするわけでもなく、ただ言葉のユーモア一本で読ませる。
そんなこと、普通はやろうと思わないはずです。
しかも漫画は、コントと違って観客の反応がその場で分かりません。
ウケなかったネタを引っ込めることもできない。
作者は、自分の話術だけを信じて描き続けてるしかないのです。
…正気か?
要するにこの作者は、自分の話術以外での漫画的表現を一切使わず、ただ瀬戸と内海が喋るだけの漫画で勝負しにきてるのです。
しかも自ら。
…まじで正気か?
私も読み終わった後にことの重大さに気づきました。
作者はあまりにも図太すぎます。
ですが、その無謀さこそが、この作品の面白さなのだと思います。
漫画的な表現をほとんど捨てて、なお面白い。
だからこそ、作者のセンスが際立つのです。
そういう意味で『セトウツミ』は、ヒューマンドラマでも、日常漫画でもない、何か別のジャンルの作品なのかもしれませんね。
というわけで、「キャラクター性がすべてじゃないかもしれない」と思わせてくれる作品、『セトウツミ』。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
『セトウツミ』/此元和津也
別冊少年チャンピオン
完結8巻




