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名残りの雪  作者: yukko
7/33

家族

川崎から聞いた話は、美咲にとって初めて聞く話だった。

帰りに同期で同じ高卒の葵と夕食を食べてから帰宅した。

ウインドショッピングも二人ですると楽しかった。

葵は最近、同じ高卒の男子社員と【いい雰囲気】になっている。

葵は小さくて可愛い女の子だ。

美咲は羨ましいと思っている。

相手の男子社員は葵より大きくて、漫画やドラマに出て来るカップルの身長差なのだ。

⦅お似合いだなぁ~。上手く行って欲しいなぁ~。⦆と美咲は思っている。


「美咲ちゃん、背が高いから……いいなぁ~。」

「え゙っ! どこがいいの!」

「えっ?」

「嫌だよ―――っ! いいことないもん。」

「なんでぇ?」

「だって、男の子から相手にして貰えないよ。

 男の子に見えることもあるもん。」

「え゙ぇ―――っ! 女の子じゃん。

 何処をどう見ても!」

「どこがぁ! 見えないよ。

 私こそ……葵ちゃんが羨ましいよ。」

「えっ? なんで?」

「小さくて女の子らしくて、めっちゃ可愛いじゃん。

 だから、いい感じになってるんでしょ?」

「そ……かなぁ……。」

「そうだよ。

 あ~ぁ、このまま私、一生、誰かと付き合うことなく終わるんだろうな。」

「そんなことないよ! 美咲ちゃん、可愛いもの。」

「葵ちゃん………。」

「なに?」

「惨めになりそう……。」

「ええ―――っ!」

「ってのは、嘘ぴょん。」

「もぉ!」



そんなことを話しながら楽しい時間を過ごして帰宅した。

帰宅してお風呂に入って、ゆっくり湯に浸かっていると、シンデレラは葵のような女の子にこそ似合うと思った。

そして、⦅一番、シンデレラなのは、香川先輩! 先輩しか居ない! 一択だわ。⦆と思った。

美咲の瞳は夢を見るように憧れの香川先輩の姿を想像した。


寝る前に実家に帰って来ていた兄と姉が父とお酒を飲んでいた。

美咲は三人の目の前を通り過ぎてキチンへ行き、冷蔵庫を開けた。

コーヒー牛乳を取り出した所で、兄が言った。


「美咲、お子ちゃまだな。」

「何でよ!」

「コーヒー牛乳……ぷっ……あははは……。」

「お兄ちゃん! バカにしないでよ!」

「ほんとに可愛いわね。美咲は……。」

「お姉ちゃんまで、もぉ!」

「美咲、こっちへ来なさい。」

「なぁに? お父さん。」

「ちょっとだけ飲みなさい。

 舐めるだけだぞ。」

「え………私、未成年だよ。お父さん……。」

「家だからいいじゃないか。

 但し、舐めるだけだぞ。」

「舐めるだけね。」

「ビールに味を少し知ってもいいだろう。

 お前も社会人だ。」

「未成年。」

「さぁ……舐めて味を知っておきなさい。」

「お父さん、酔ってるよね。」

「まぁ、明日は休みなんだから……土曜日、休みだよな。」

「うん。」

「二日酔いでもOKだ。」

「お父さん。」

「飲んでみろよ。美咲。」

「お兄ちゃんも!」

「舐めるだけにしなさいね。美咲。」

「お姉ちゃん……。」


父に勧められて、ほんの少しビールを口に含んだ。


「苦ぁ~~い!」

「苦いか? これが大人の味だぞ。

 これの苦みを美味しいと思えたら、大人だ。」

「いいもん。まだ18だもん。」

「そんなに慌ててコーヒー牛乳を飲まなくても……あはは……。」

「お兄ちゃんの意地悪!」

「美咲、歯を磨いて寝るのよ。」

「だから! 子どもじゃないって……。」

「まぁ、お父さんとお兄ちゃんの玩具になったのね。美咲。」

「お母さん!」

「こんなに大きくなっても末っ子ね。」

「末っ子が何?」

「末っ子だから可愛がられるのよ。」

「そんなことないよ。お母さん、ちゃんと見てた?」

「美咲が可愛いのよ。」

「そそ、可愛いのだ!」

「お兄ちゃん。」

「歯、磨けよ。」

「早く寝なさい。」

「おやすみ。」

「いざっ、夢の世界へ~。」

「お兄ちゃん! 嫌い!」

「おう、愛の言葉だ。」

「大嫌い!」

「愛されてる俺。」

「美咲、おやすみ……ちゃんと寝るのよ。」

「……お姉ちゃん……。」

「うん?」

「おやすみなさい。」

「おやすみ。」


自分の部屋に入って「お兄ちゃん! 酔い過ぎ! だから酔っぱらいは大嫌い!」と声を出して怒った。

腹立ちのままベッドに身を沈めたが、美咲は直ぐに静かな寝息を立てた。

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https://furansugonosekai.com/the-nightingale-and-the-rose/
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