昼食
二日続けて夢を見た美咲は会社で憧れの香川先輩にも……そして、想いを寄せている先輩にも会いたくなかった。
何故だか、いつも二人は夢の中で恋人なのだ。
それが胸が苦しい原因だった。
最初から見向きもされていない美咲にとって叶うことが無い片思い。
そう分かっていても心は傷ついた。
お昼休みに社内食堂で食べていたら、「ここ、座っていいかな?」という声がした。
美咲の胸が高鳴った。
美咲は⦅落ち着かないと!⦆と自分に言い聞かせた。
「……ど……うぞ。」⦅ひぇ~~~っ、声が裏返って……恥ずい。⦆
「あれっ? いつもより小食?」
「えっ?」⦅嫌だぁ―――っ、見られて……隠れたいよぉ……。⦆
「いつもは、もっと食べてるよね。」
「………そ……それは……あの……ですね。」⦅恥ずい……。⦆
「うん、何?」
「あの……ですね。
この……ですね、身体を……ですね。
えっとぉ……維持するには……ですね。
食べないといけないんです。」
「ぷっ………維持?」
「はい……そうです。」⦅笑われた……先輩に笑われた……。⦆
「くっ……くくくっ……。」
「……あのですね、えっとぉ………。」⦅まだ笑われてる……。⦆
「……くくくっ………うん、何?」
「骨もあるんですよね。」⦅ええい! もうなんでもいいや。⦆
「あるね。」
「私、多いんです。」
「骨?」
「はい、それで……ですね。
骨とか身体を維持するために……ですね。
食べるんです。」
「そっかぁ……あのさ、身長、何センチ?」
「え……………。」⦅やだ! 聞かないで!⦆
「俺より高いのかなぁ?」
「……先輩は……何センチですか?」⦅もぉ、言うしかないのか?⦆
「俺? 俺は175cm。」
「……………。」⦅先輩の身長GET!……って場合かっ!⦆
「どうした? 急に大人しくなって……うん?」
「……178cm……です。」
「急に声が小さくなったね。
そっか……俺よりも3センチ高いんだ。」
「……………。」⦅3センチも! 高かったんだ。⦆
「いっぱい食べてる時、本当に美味しそうに食べてるよ。
美味しそうに食べてる姿は、いいな。」
「お………美味しいですから……。」
「それに、手を合わせて頂きます、するんだな。」
「家が……そうなので……。」
「浄土真宗の教えなんだよな。それ……。
違ったかな?」
「分かりませんけど、うちは浄土真宗です。」
「命に感謝って意味だろ?」
「はい。」
「いいよな。」
「…………御馳走様でした。
……あの……お先に失礼します。」
「あれっ? もう終わり?
まだ、残ってるよ。」
「……あ……急いでるので……。」
「そっか……。」
「お先です。」
「うん。」
⦅胸のドキドキが止まらない! どうしよう……。⦆と美咲は思った。
先輩と話せたことが嬉しかった。




