春の寿ぎ
会社の皆と夜桜を見に行って3日後。
香川が間もなく結婚すると植松から美咲は聞いた。
「ほんとですか……。」
「ほんとよ。大学からのお付き合いだったらしいのよ。
4月20日に結婚式だって!
知らなかったなぁ~。」
「……………先輩……。」⦅嘘よね……先輩……が相手じゃないなんて……。⦆
「何?」
「あ……なんでもありません。
………どんな方なんでしょう……香川先輩のお相手……。」
「そうよね。
あの才色兼備の香川さんの心を射止めた男性!
気になるわぁ~。」
「そうですね。」
美咲はその日、幾度も香川の姿を見た。
「おめでとう。」と言われて頬を染めている香川の姿を見て、美咲はやっと「香川先輩、結婚するんだ。」と呟いた。
香川から声を掛けられた美咲が「おめでとうございます。」と言うと、香川は「美咲ちゃんと仲良く出来て直ぐに結婚して退職するとは、私自身が思わなかったのよ。」と言った。
そして「大学から付き合っていた彼が海外へ赴任することが決まり、彼からプロポーズされた。」と話した。
「付いて来てくれ!って言われないんじゃないかと不安だったの。
でも、一緒に!って言ってくれたのよ。
退職するけど、向こうで何か学び直したいと思ってるの。」
「そうなんですか……。」
「どうしたの? 美咲ちゃん。」
「辞めるんですね……香川先輩……。」
「美咲ちゃん?」
「辞めて……もう会えないんですね……。」
「美咲ちゃん……もう……泣かないでよ。」
何故、泣いているのか美咲自身も分からないくらい急に涙が溢れ出てしまった。
香川がハンカチで優しく涙を拭きとった。
そして、宥めるように背中を撫でた。
泣き止むまで撫でてくれた香川のことが「やっぱり大好きな憧れの先輩」だと美咲は思った。
香川の退職の日、美咲は一番後ろで去って行く姿を見つめた。
去って行くその姿を美しいと美咲は思った。
幸せでキラキラ煌めいている香川は一番美しかった。
「香川先輩……お幸せに……。」
そう呟いていた。




