夜桜
ホワイトデーでお菓子を想いを寄せている先輩から貰った。
その時の可愛い缶を美咲は自宅で大切に飾っている。
中のお菓子もそのままで……。
⦅これ、永久保存……。
お菓子は……食べないといけないよね。
どうしよう……食べられない……勿体なくって……。⦆
そう思っている。
会社で姉が妊娠中だと嬉しさの余り話してしまった美咲。
話した後で⦅お姉ちゃんに聞いてなかったのに話しちゃった。どうしよう……。⦆と少し不安になった。
「どうしたの? 美咲ちゃん。」
「あ…………あのですね。」
「うん。」
「植松さん、姉の妊娠のことは内緒にして下さい。」
「う? うん………誰にも言わないよ。」
「ありがとうございます!」
「ねぇ……どうして?」
「えっ? 何がですか?」
「お姉さんのこと、わざわざ内緒って。」
「あ……それはですね。」
「うん、何?」
「実は姉に聞かずに話しちゃったんです。」
「聞かずに……って、会社で話していいか、どうか?」
「はい! 聞いてなかったんです。
だから、話してら駄目っぽいかも…とか思ったりしたんです。」
「そうだよね……分かったよ、誰にも言わない。
美咲ちゃん、あのね。」
「はい。」
「大丈夫だからね。元から誰にも話す気が無いからね。」
「はい! ありがとうございます。」
「それにしても、美咲ちゃんが叔母ちゃまになるんだね。」
「はい! もう楽しみです。
もう直ぐ、産まれるのです。
早く会いたいなぁ……。
お姉ちゃん、めっちゃ美人なんですよ。
あ……お義兄さんもイケメンなんですよね。
だから、めっちゃ可愛い子が生まれるんです。
可愛いだろうな……早く遊べるようになったらいいなぁ~。
いっぱい遊びたいなぁ~。」
「遊んで貰う!の間違いじゃないの?」
「ええ―――っ! 植松さん、酷いです。」
「うふふ………。」
植松に話している時、偶然、あの想いを寄せている先輩が通った。
先輩が声を掛けて来た。
「お二人お揃いで。」
「あらっ? 何か御用で?」
「桜が綺麗だろ。見に行かないか?
夜桜……どう?」
「夜桜、いいわね。」
「植松さんはデートかな?」
「えっ? 今日は……って、何を言わせるの!」
「あはは……分かりやすいな。
今日もデートかな?」
「もう! 意地悪なんだから……。
夜桜に行く予定だったの。」
「そっか……じゃあ……美咲ちゃんは?」
「えっ? 私ですか?」
「美咲ちゃんにデートのお誘いですかぁ?」
「え………ちが……違いますよ! 植松さん、そんな訳ないじゃないですかぁ。」
「えっ?」
「皆と一緒に夜桜!ですよね。」
「あぁ……そうだよ。」
「ねっ! 植松さん。」
仕事を終えて、美咲は夜桜見物に行った。
6人での夜桜見物。
あの香川先輩もメンバーの一人だった。
香川先輩の隣を歩いているのは、美咲が想いを寄せている先輩だった。
そのお似合いの二人の姿を後ろから眺めながら、夜桜の下を通り抜けた。
美しい夜桜を美咲は「綺麗ですね。」と相槌を打つだけで精一杯だった。
しっかり夜桜を愛でることが出来ない夜桜見物だった。
夜桜を堪能した5人と見終わってから店に入った。
居酒屋で美咲一人だけがジュースだった。
「美咲ちゃん、ビールはまだ飲めないからジュースでね。」
「はい。」
⦅いつか、ビールを飲めるようになったら私も恋が出来るのかな?
それとも永遠に……そんな日はやって来ないのかな?
もっと小さく生まれたかったなぁ……。
可愛いと思って貰えるような身体に生まれたかったなぁ……。⦆
そんな風に思いながら談笑に入ることも出来ず、ただ笑顔で居た。




