雛祭り
同期が皆、19歳になった三月。
美咲は、まだ18歳だ。
葛西が「子どもの頃に雛祭りをどう過ごしていたか。」職場の女子社員たちに聞いている。
「うちは団地だから雛人形が無くて……。
置き場所を取るので買って貰えなかったんです。
それで、今、一人暮らしするようになって買っちゃいました。」
「お雛様を?」
「ええ、憧れだったんです。
小さなガラスケースに入ったお内裏様とお雛様。」
「そうなんだ。」
「だから、うちはお雛祭りを祝わない家だったんですよ。」
「そっか……。」
「羨ましかったです。」
「そうよね。」
「美咲ちゃんは?」
「うちは姉の時に買ったお雛様があります。」
「じゃあ、お雛祭り、何かして貰った?」
「チラシ寿司を食べて、あられを食べました。」
「食べるだけ?」
「菱餅も食べましたよ。」
「食べるお祝いなのね。」
「そうですね。今日も母が作って待ってくれてます。」
「いいなぁ~~、私もチラシ寿司食べたいなぁ……。」
「川崎君と食べるんでしょう?」
「作ったのを買って食べます……母のチラシ寿司……食べたかった。」
「あ!」
「何?」
「ケーキもありました!」
「は………羨ま……。」
「川崎君とケーキも食べたら?」
「そうします……ぐすん……。
葛西さんはお子さんの為に作られるんですか?」
「夫が作ってくれるのよ。」
「ご主人様が?」
「うちは私より上手な夫が基本的に食事係なの。
でも、夫より私が早く帰る時は私が作る。」
「臨機応変なんですね。」
「そうでないと、共働きは無理よ。」
「メモメモ……。」
「川崎君にも言っておくわ。」
「お願いします。葛西先輩!」
話していたら、後ろから目の前に「あられの袋」が出てきた。
振り返ると、あの先輩だった。
「どうぞ。」
「ありがとう! って、これって……もしかしたらホワイトデー?
ホワイトデーじゃないけど?」
「葛西さん、これで全員分のお返しで良いんですか?」
「否……それは……ねっ。」
「これは、雛祭りの為のあられ。
皆さんでどうぞ。」
「もう、イケメンなんだから……。」
「ありがとうございます。
………美咲ちゃんにピッタリかな?」
「…………!」
そう言って、美咲に笑みを見せて自分の席に座った。
美咲は子どもと思われている現実を知った。




